「香」

「あなた、いつもいい香りがします」

「おぉ、何だ家畜。香がわかるようになったか」

「わかりますよ、失礼ですね」

「これはな、毎日女給に香を焚きしめさせておるのよ」

「……着物にお香は珍しくないですけど、洋服にお香は珍しいですねぇ」


 ほのほの笑っていれば、不意に彼女が私の服の匂いを嗅ぐ。


「貴様も香をつめているのではないのか?」

「私は柔軟剤の香りです」

「妾も使うてやっても良いぞ? 疾く献上せよ」


 気に入ったらしい。

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