奈良山京

ぜろ

 その日の朝、奈良山ナラヤマミヤコは宿題を片付けるか読みかけの本の続きを読むか、迷っていた。

 休日の朝食は各自で用意というのが基本ルールなので、京は、厚切りの食パンを二枚に切り、チーズと玉子焼きを挟んだホットサンドとまだ開けていなかったオレンジジュース、ヨーグルトとバナナのスライスを用意した。

 テレビをつけて、朝から浮かれ調子のバラエティーじみたニュース番組をけて、CMのない局に回してぼんやりと見流していた。毎朝時計代わりにつけているせいで、朝食とテレビの組み合わせが習慣づいてしまっている。

 どうせお盆にも帰ってーへんのやろな、と、異国の地を駆け回っている母のことを考えた。

 母には年に一度でも会えれば多い方で、父のことは、でてくれた優しい手とか微笑ほほえんでいる口元といった、断片的な記憶しか残っていない。

 だから、両親のことを思うとき、テレビでしか見ない有名人のような感覚になってしまう。

 そんな風にほうけていたものだから、それに気付くまでに間があった。テレビの音量をしぼっていたせいもある。

 画面の向こうで悲鳴が上がり、火柱が上がっていた。

 それが何かを理解するよりも早く、全身が痛みに包まれ、視界が赤く染まった。

 自分が悲鳴を上げていることにすら気付かず、京は、兄に助けられるまでわけもわからずのた打ち回っていた。

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