アキバ×ストリート6 FINAL(2)地獄の先にあるもの
そしてついにやってきた決勝戦、カードは「ネス」VS「UK」。今日一番の気合の入った表情を見せるネスと、チーム「腐男女」のナップザックをカメラと観客に向けるUK。決勝の様子はLINE LIVEで生中継されており、すでに1万3,000人以上の視聴者が2人の行く末を見守っていた。
試合の前に、まずは互いにマイクで一言。最初に口を開いたのはUK。彼はアキスト4で準優勝という悔しい結果となっただけでなく、翌年のアキスト5では前日予選の決勝でネスと対決し破れた過去がある。笑みを浮かべながらも「雪辱を果たす」という言葉には重みがあった。対するネスは、UKを「因縁のライバル」と認めつつ、今大会のキャッチコピーである『新時代 到来』に触れ、「新時代は来ない」と断言した。
オーディエンスの盛り上がりは最高潮。MC-Zakltの掛け声とともに、決勝戦がスタートした。
1曲目は『ようこそ実力至上主義の教室へ』のオープニング『カーストルーム』。先行で飛び出したのはネス。特徴的なメロディーをひとつも取りこぼさず、精緻なタットと歌詞ハメで観客・ジャッジを自らの空間に引き込んでいく。
2番の始まりと同時に後攻:UKのムーブが始まる。凛々しい表情とキレのあるワックで皆を魅了しながら、ふとネスの元へと近づいていく。
『差し伸べるから掴んで』
歌詞に合わせてUKが手を伸ばし、ネスが握り返す。
誰もが最高の決勝戦になると確信した瞬間だった。
UKの気迫に満ちたムーブに、観客も迂闊に声を上げることができない。間奏を踊り切り、最後はクールに締めくくった。
2曲目は『炎炎ノ消防隊』のオープニング『インフェルノ』。激しいドラムとギターの爆音が流れると、ネスが静かに頭でリズムを刻み出す。片手タットからスタートし、時にギターに、時に歌詞に合わせながらムーブを繰り広げていく。さらにはロックも織り交ぜながら、自身の実力と可能性を見せつけた。1番の終わりとともに締めると思いきや、進撃は止まらない。すべてを出し尽くさんとばかりに次々に技を繰り出し続け、2番、間奏と、トータル2分半にわたり会場を湧かせ続けた。
UKも静かに動き出す。まるで曲にストーリーが与えられたかのような流れる動きで、ジャッジの瞬きを許さない。激しい濁流のごとく、穏やかなせせらぎのごとく、岩に打ち付ける波のごとく、炎々を鎮め、会場にいる人々を自らの海流に巻き込んでいく。ポセイドンとなったUKがムーブの最後に浮かべていたのは、いつもの爽やかな笑みであった。
そして運命の結果発表。ゲストジャッジ:澁谷梓希が2人の間に立ち、それぞれの手を握る。
ドラムロールの後、澁谷梓希の右手が上がった。
優勝は、ネス。悲願の2連覇達成だ。
2019年12月から、RABとしての活動が決まっているネス。優勝コメントでは来年も再来年も勝ちたいと抱負を語るとともに、仲間となるRABに向かって宣戦布告した。
「自分はこのグループにいながら、皆を超える。かかってこいよ」
熱のこもったコメントに対し、涼宮あつきは「RABの夢である武道館ワンマン公演を達成した暁には、必ず自分たちもA-POPダンスバトルに参戦する」と誓った。
また、総評では「自分たちは場所を用意することしかできない。どうかこのアキストを約束の地にしてほしい。そして、僕ら・彼らの熱量を一人でも多くの人に感じてほしい」と熱弁した。
我々は、ダンサーたちのダンスやアニメへの愛を敬服するとともに、“今というこの瞬間”を目いっぱい生き、“輝きに変えて想いを届ける”ことで、より自らの人生を謳歌できるのではないだろうか。
来年に向けて、敗者も、そして勝者もすでに動き始めている。
次のヒーローは、誰だ。
アキバ×ストリート6 FINAL 会場レポート 及川 輝新 @oikawa01
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