アキバ×ストリート6 FINAL 会場レポート

及川 輝新

アキバ×ストリート6 FINAL(1)新時代を拓く者たち

2019年10月6日、新宿:歌舞伎町。あいにくの天候ではあったが、今年は台風に見舞われることもなく「アキバ×ストリート6 FINAL」が新宿BLAZEで開催された。キャッチコピーは『新時代 到来』。ベテラン勢はもちろん、今回は特にルーキー勢の活躍が期待された。


内容は、各地の予選を勝ち抜いた7名の精鋭と、前大会王者の8名によるフルトーナメント。DJがランダムで流したA-POP(アニソン)に対し、バトラーが即興でダンスを披露する。


ベスト8第一試合は「のびた」VS「ネス」。東京予選の勝者と前チャンピオンという、今大会最速でFINAL出場を決めた2人が早くも激突する。曲は『僕のヒーローアカデミア第2期』の『だってアタシのヒーロー。』。イントロが流れ始めると同時に場内が湧き上がる。


サビと同時に飛び出したのは、のびた。持ち前の力強いロックで、観客の視線を一気に釘付けにする。そのまま2番、間奏、ラストサビまで止まることなく駆け抜けた。曲が2週目に入り、後攻:ネスが出陣。幾何学的かつ緻密なタットでワンコーラス分を披露。最後は得意の歌詞ハメで締めくくり、勝利を手にする。


第二試合は「Nico the NATURAL」VS「SALT」。ストリートでも活躍する正統派B-BOY同士の勝負となる。同ジャンルでのぶつかり合い、お互いなんとしても勝ちたいところだろう。


先行はNico。流れるようにスピーディなフロアから、縦横無尽に宙を駆け巡る。決めどころはしっかり押さえ、実力者としての威厳を見せつけた。対するSALTは短い時間にフロアを中心とした丁寧な技でジャッジを唸らせる。ブレイク対決を制したのはNico。準決勝一戦目はクルー「最後のゴーヤ祭」同士の対決となった。


第三試合を待ち望んでいた観客は多かっただろう。名古屋代表の「HIDE」は、地方予選前から並々ならぬ気合を見せていた。『Gotchaman~In the name of Love』が流れると同時に飛び出し、躍動感のあるポップで会場を湧かす。だが後攻の「M’arc」も負けてはいない。前日予選で数々の強敵を薙ぎ払った、洗練された足技&パワフルなラビットで応戦し、バチバチの対決を見せる。勝者はHIDE。かねてより宣言していた「アキスト6は自分が優勝したら一番面白くなる」との言葉通り、準決勝に期待感を持たせる試合となった。


ベスト8最後のバトルは、「UK」VS「Ko-Key」。A-POPルーキーズダンス大会『エクリエイターズ』覇者であるKo-Key。HIDEとはチームメイトであるとともに、互いを最高のライバルと認め合っており、誰もがFINALでの対決を待ち望んでいた。

曲は『狂乱 Hey Kids!!』。A-POPダンスバトルでは定番の選曲だが、世界最強決定戦のベスト8ともなると、お互い迂闊に先行をとることはできず、どちらも出られないまま1番が終了してしまう。


そのまま2番への突入を許さなかったのは、DJのsyu-Gだ。曲を振り出しに戻し、再び1番Aメロから流し始める。


睨み合いが長期化するかと思われた中、先行を決めたのは大阪代表のKo-Key。予選の決勝では前大会大阪体表の「タヲるん」を破っているだけに、会場の期待も高まる。序盤からフリーズをかっちり決め、テクニカルかつ大胆な技をかますたびに客席、ジャッジともに湧き上がる。そして満を持して登場した後攻:UK。彼のムーブは華やかさに注目が行きがちだが、ロックの曲に対しても、寸分の隙もない完璧な“ショー”を会場中に見せつける。得意の間奏もしっかり決め、ベスト4最後の切符を手にした。



ベスト4からは選曲が2曲となるため、先行へのプレッシャーが一層かかるのは言うまでもない。緊張感の中、流れてきたのは『あたしンち』オープニングの『さらば』。フォーク調の曲に一瞬、会場が和やかな雰囲気に包まれる。『こんにちは ありがとう さよなら また逢いましょう』の歌詞とともに先行をとったのは、ネス。歌詞ハメを織り交ぜつつ、ベスト8とはテイストの異なる手技で、ジャッジを魅了する。後攻のNicoも、スローテンポかつ和やかな曲でありながらB-BOYとしてのカッコよさを見せつけるのも忘れない。特に2曲目では彼に珍しいロングムーブを披露。果敢に技を繰り広げていく。


クルー同士の熾烈な戦い、勝者となったのはネス。2連覇に向け王手をかけた。


ベスト4第二試合でも、HIDEは曲のスタートと同時に先行を奪いとった。『DEAREST DROP』ではUKに劣らぬ蠱惑的なダンスで観客の心を鷲づかみにする。一方のUKも、ベスト8とは打って変わり気合の入った表情と力強い振りで観客を自分の世界へと引き戻す。と思いきや、2曲目ではステージの縁に座り、客席に向けて甘い微笑みとともに投げキッス。このギャップで老若男女のハートを打ち抜き、決勝戦へと駒を進めた。


HIDEは今大会を最後のアキストと決めていたが、悔しさをにじませるとともに「来年も必ずこの舞台に戻ってくる」と笑顔で再挑戦を宣言した。

(なお、5分後にクルーバトルの準決勝で壇上に戻ってきたのは別の話)

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