第10話 映研部部室の居心地は案外いい。


 部室棟の二階と校舎の二階をつなぐだだっ広い外廊下は、花粉に強い生徒たちの昼食スポットになっていた。小早川と並んで歩くのは、一緒に部活をやってる、ってほどじゃないにしても注目を浴びてしまうと避けたかったが、心配しなくても、僕より長い足で大きなスライドを描きキビキビと歩く小早川に、純日本人体系の僕は、普通に歩いて距離を開けられる結果となった。後ろから小早川に様々な視線が向けられているのを見て、あれだけの感情を受けながら平然としていられる小早川は、やっぱりすごいなと感嘆した。


 映研部の部室は、部室棟二階の隅っこにあった。ありがたいことに、昼休みの部室棟は閑散としていた。人影がないことを十分に確認すると、僕は小早川に追いつき、部室の鍵を開けてささっと中に入ると、その埃っぽさに思わず大きなくしゃみをしてしまった。慌てて小早川に謝ってから、電気をつける。かんかんかんと古臭い音とともに、部室を照らされた。


 まず、入ってすぐに僕たちを邪魔するのが、洒落たバーにでも置いてありそうなほっそりと背の高い丸椅子と、その上のプロジェクターだ。そして、そのレンズが向かう先には、白布のスクリーンが三本足で自立していて、さらにその三本足の下にはDVDケースが積み上げられていた。『ゴットファーザー』の1、2、3、に『レオン』『小さな悪の華』『プリティ・ベイビー』そして『ロリータ』......どうやらこの狭い部室での風間先生との活動は、青少年の性癖を捻じ曲げるだけの魅力があるらしい。


 そして、その間に黒革の古い二人がけのソファーがあるのだが、横に入れられるだけの幅がこの部室にはないようで、縦になっている。これじゃあ映画を見るときは上体をひねって見ないといけないな。ゴッドファーザーの一気見でもしたら『健康は何よりも大切だよ。成功よりも、金よりも、権力よりもさ』という名言の意味がわかるくらいには、体が痛くなるだろう。


 僕はとりあえずカーテンと窓を開け放ち換気をする。それから、部室棟廊下にあるロッカーから掃除道具を持ってきて、小早川に渡す。小早川とは班が一緒なので掃除も一緒になるのだが、こうやって二人きりでの掃除は初めてだ。緊張から逃れるため深呼吸すると、再び大きなくしゃみをしてしまい謝るはめになった。


 一通り掃除を終わらせると、一応深呼吸くらいはできる環境になった。それでもあまり弁当を食べたい環境ではなかったが、小早川は気にならないのか、ソファに腰掛け弁当を膝の上においた。まあ、ここだと体育館裏のベンチと違って人目を気にしないでいいか助かる。


 僕も、小早川の隣に、めいいっぱい距離を置いて座る。が、それでも距離は体育館裏のベンチと同じくらいかそれ以下で、プラスせっまい密室で二人きりはヤバイ。やっぱ人目がないのも考えものだな。


 しかし、そんな状況にも、小早川は一切の動揺を示していない。開け放たれた窓から風が吹き込みそのサラサラの黒髪がなびいて、危うく僕に触れそうになった。これ以上の長居はよろしくないと、僕はポケットから入部届の未提出者リストを取り出した。


「あ、これ、風間先生から」


 小早川は受け取って、そのA4用紙を開いて、上から下に視線を滑らせていく。その視線が一番下に行ってからしばらくして、小早川は僕の方を見た。


「緒方さんは、どなたがいいと思いますか」


 早速来た。僕は手のひらにある緊張に効くツボをこっそり押す。そして、小早川の眉間を見ながら言った。


「俺は、剣持くんはいいんじゃないかと思うけど」


 そういうと、小早川の眉がピクリと跳ねた。見なかったフリをして続ける。


「剣持くんは、今の所教室でいつも一人でいるから、一人が好きなんじゃないかな......それに、自分の席のせいで嫌な目にもあってたから、剣持くんにとっても、いい話ではあると思うん、だけど」


「......そうですか」


 小早川の反応は芳しくない。まあ、これは予想していたことだ。本来だったら、小早川と同じぼっちの剣持は、僕より先に誘われていてしかるべき存在のはずだ。それなのに、小早川は剣持の名前さえ出さなかった。何かあったんだろうか。


 しかし、昨日の失敗もあるので、小早川が喋り出すのを待つ。小早川は視線を手元に落としながら、理由を語り始めた。


「剣持さんは確かに今一人でいますが、それは、ご本人が選んだことなのでしょうか......私は、剣持さんが、高校生になって友人作りに失敗し、結果として一人になってしまっているのではと考えています。もしそうなら、剣持さんは友人を求める気持ちが強くなっているのではないでしょうか。約束といってもなんの強制力もないものですから、そういう方を入れるのは危険ではないかと、私は思います」


「......うーん、なるほど」


 確かに、剣持が友達を心の中で求めているという可能性は大いにある、というか、まあ一般的には求めてるんじゃなかろうか。少なくとも僕は、友達をあえて作らない人間なんて、小早川と......東堂の二人しか見たことがない。


 だが、強制力がないというのはどうだろう。人と関わり合わないことを目的とした集団ってなったら、普通に強制力あると思うんだけどな。集団に合わせるという概念のない小早川には、わからない話かもしれないが。


 それとも、友達を求めてる人間って、小早川の中ではそんなにも信用ができないもんなんだろうか。だったら僕なんて、もう最悪だよな。


 そんな僕みたいなやつがm集団の中で愛想笑いしていたら、人間関係にうんざりしてそうだからOKで、友達を作りたいという欲や孤独への恐怖に今の所耐え忍んでいる剣持が、その反動の可能性があるから駄目というのは、なんというか、理不尽? な感じがしないでもない。し、正直、剣持みたいな優良物件を拒否されると、これからの部員集めは非常に厳しいものになる。少し、粘ってみようか。


「あ、でも、俺、中学剣持と一緒で、全然仲は良くなかったんだけど、剣持、その時もぼっ......一人でいることが多かったよ。単純に一人が好きなのかも」


 別に、嘘はついていないはずだ。僕が見た限り、剣持は一人でいることが多かった。東堂と喋ってた時もあったけど、僕が見たのはその一度だけ。友達というわけではなかったみたいだし。


「そうなんですか......」


 小早川の表情が少し和らいだ気がした。一瞬畳み掛けようかとも思ったが、どうせ僕がやったところで失敗するので、口を噤んで小早川の判断を待った。


 すると、再び手元に視線を落とし、薄くため息をついた小早川が、再び僕に視線をやる。


「緒方さんは、剣持さんが映研部に入っても、大丈夫だと思いますか?」


「............」


 うわぁ、これ、僕がここで大丈夫って言ったら、剣持を誘う流れだよな。つまり、剣持が何か間違いを犯したら、その責任は僕に降りかかるということだ。


 ......あの日剣持の目が輝いていた、なんていうのはあくまで僕の主観だし、輝いていたからなんだって話だ。それに、もし剣持が狼だったとして、約束という口枷がある。だいたい、僕なんかよりは、剣持の方が絶対マシのはずだ。


「うん、大丈夫だと思う」


 僕がそういうと、小早川は即座に頷いた。


「わかりました。それでは、剣持さんを誘うことにしましょう」


「......うん、了解」


 うん、これでいいはずだ。あとは、剣持が映研部に入部を決めたら、辞めることを伝えよう......いや、先ほどと状況が違う。この部室に来る予定の風間先生は、まず間違いなく映画製作のことを小早川に伝え、なんならその場でぱぱっと映画製作の役割を決めてしまうかもしれない。ならば、今辞めることを伝えた方が......いや、正直、映画制作をすると決まったら、貢献してから辞めるべきという方に、気持ちはすでに傾いている。


 先ほどは僕なんかが脚本をやったって、と思ったが、よく考えたら経験者もロクにいない状況でオリジナル脚本を書かないといけない状況、過去文芸部だった僕は、それなりに貴重な戦力のはずだ。普通の人は、ただ物語を考えるってだけでも相当苦労するらしいし、クオリティが求められてないんだったら、一週間くらいで出来上がっちゃうんじゃなかろうか。小早川に自分が書いた脚本を見られるのはそりゃ恥ずかしいけど、特に何も起きない無難な話にしてしまえばいいし。


 なんてことをグダグダ考えているうちに、隣の小早川が、巾着袋の中から弁当を取り出した。ああ、タイミングを逃してしまったか。それなら仕方ない、うん、とりあえず辞めるって言うのは延期だ。ていうかどうしよう。出て行った方がいいよな。


 すると、古い木製の扉がぎぎぎと音を立てて開いた。あっ、鍵をかけていなかった、こんなところを見られたら最悪だ、と全身が粟立ったが、両手にパンを抱えて頬を膨らませている風間先生の姿を見て、無事ツルツルに戻った。ロリは美肌効果があるようだ。そのうちモデルがインスタにLOとのツーショットをあげる時代が来るかもしれない。地獄か。


 風間先生はというと、手に持った食べかけのパンを口の中に放り込んで、そのまま口を開いた。


「お、綺麗になったふぁ〜。良いふぉい」


 どうせ掃除が終わる頃を見計らって来たんだろう。僕と違って非常にタイミングがよろしいようで、羨ましい。


 しかし、それでも助かった。あとは全部風間先生に任せるのがいい......それに、風間先生が武藤先生の嫌がらせことを伝えたら、小早川はこの話をなかったことにするかもしれないし。


 風間先生は、プロジェクターを人差し指でつーっとなぞって埃が無いことを確認してから、僕たちの方に視線をやると、ニヤリ......というより、ニチャァという擬音が似合う笑みを浮かべた。


「これはこれは、随分と仲良くされてるようですね。頼むから、ここをホテル代わりには使わないでくれよぉ〜。うちの体育教師なんかに見つかったら完全寝取られコースだぞ」


 ああ、無理無理、絶対任せない。最低。なんだこいつ。嫌い。僕相手には全然いいけど、小早川相手には絶対駄目だろそれ。何でそんなこともわかんないかな。マジで嫌いだわ。ほんと嫌。はぁ? マジで嫌。


 もちろん、小早川の方を伺うなんて真似してしまったらセクハラに加担した感じになってしまうので無理だが、隣から「はぁ......?」という、セクハラされた割りには不快感を感じない声が聞こえた。どうやら風間先生の糞しょうもない下ネタは、小早川には理解不能だったらしい。ああ、助かった。


 それでも当分許せそうにない風間先生は、明らかにスペースのある僕と小早川の間ではなく、僕とソファの肘掛の間に体をねじ込んで無理やり座ろうとする。マジで突き飛ばしてやろうかと思ったが、当然そんなことはできなくて、僕は仕方なく風間先生が座れるスペースを作る。小さい体のくせにスペースを取りたがる風間先生に押しやられ、僕と小早川との距離は、肩が触れ合うほどになっていた。か細い感触に加え、ふわりとシャンプーの香りがして、僕は風間先生のことが本気で嫌いになった。


 だが、もちろん不平不満なんて言えないので、せめてもと非難の視線を送るが、風間先生には全く効いていないらしい。焼きそばパンの包み紙を剥がしながら「うーん」と唸った。そして、何気無い様子で僕に言う。


「なぁ、これ、どう思う?」


「......何がですか?」


 怒りに声が震えそうになるのを何とか抑えながら聞き返す。風間先生はパクパクパクパクと四口ほどで焼きそばパンを平らげてから、僕に視線を返す。


「いや、この部室、全然パンパンじゃなくないか? 前の三年がいたときなんか、男が五人すし詰めで、あたしも身の危険を感じざるおえなかったもんだが」

 

 そうして、風間先生は自分の平らな体を両手で抱きしめる。いやこの人、本っ当に下ネタ好きだな。まぁ、これに関しては、あのDVDのラインナップを見る限り、少なくとも一人はロリコンがいたようなので、マジで危険だったんだろうけど。


「ここにあと一人だろ? なんか、まだいけそうじゃないか?」


 風間先生が聞いてくる。そう、僕の懸念の一つがそれだ。ていうか羽ヶ崎には五人が限界とちゃんと伝えていたみたいだし、この先生、マジで悪い人なのかもしれない。


「如月なんか、実際に何人入れるか検証してきそう。いかにもデータで戦うタイプの敵みたいな見た目してるし」


「......三人いれば大丈夫と言ったのは、風間先生だったと思いますが」


 小早川がここで口を開いた。その美しいソプラノが、今までより明らかにはっきりと鮮明で、なんなら吐息まで首元にかかり、僕は体をぎゅっと硬くせざる終えなかった。


「いや、盲点だったんだよ盲点。ま、万が一そんなことで文句つけられたらあたしもそりゃ戦う覚悟よ。でもまあ、五人揃ったら同好会から部に昇格だから、その分部費も貰えるし、まぁないと思うが、ここを欲しがる部活なんか現れたら、同好会っていう立場じゃ太刀打ちできないしなぁ。もちろん無理する必要はないが、頭の片隅にはおいといてくれ」


 風間先生はまるで準備していたかのようにつらつらと喋り、妙に生暖かい視線を僕たちに送る。いや、なんかいい先生ぶってるけど、いい先生はセクハラも不正もしないからな。


 しかし、小早川には響いてしまったのか「......検討します」と、風間先生の言葉を受け入れてしまった。ああ、参る。これで、部員が少なくなること自体が悪いことになって、さらに辞めづらくなってしまった


 いや、悪いこと位ばかりじゃない。僕は小早川の方に視線をやりかけて、この距離で見つめ合うことになったら、小早川が”ゴルゴンの首”部に引き抜かれてしまうくらいに固まってしまうことに気づきやめとく。なんだよ”ゴルゴンの首”部って。なんで映研部を差し置いて五人以上集まってるんだよ。


「そ、それじゃあ、部員になってくれそうな人がいたら、とりあえず小早川さんに相談してみるよ」


 ほんの少しだけ顔を小早川の方に向け、視線は窓の外を見ながら言う。「......はい、よろしくお願いします」と小早川が返す。よし、これで四人目の部員を迎えてから辞めると言う選択肢が、一応のところできた......いや、馬鹿か僕は。選択肢ができてしまった、の方が正しい。やる気満々みたいでさらに辞めにくくもなってるし。何やってんだよマジで。


「まっ、そういう心配も三人目の部員が見つからん限りは何の意味ないけどなー。どうだ? 目星はついたか?」


 コロッケパンの包み紙を開きながら、風間先生が聞いてくる。これ以上小早川の声を至近距離で聞くのは困るので、僕が先に答える。


「あっ、はい。剣持くんがいいんじゃないかと」


「お、いいじゃないか。あいつ、国語の成績いいしな......よし、そうと決まったら、今日から活動だ。早速映画制作にとっかかるぞ。嫌いなものから先に食べるタイプなんだ、あたしは」


 映研部の顧問とは思えないようなことを言い出す風間先生。小早川が「......文化祭まで時間があると思いますが」と返すと「いや、それがな、武藤の野郎が......」と経緯を説明し始める。これは僕は邪魔だろうと、「あ、俺は聞いたから」と立ち上がって、やっと両手に花、しかもその片方が綺麗な薔薇状態から抜け出すことができた。心底ホッとする。ちょっと冷静になろう。


 僕は、部室の壁に寄りかかりながら考える。もし小早川が、この話を聞いて辞めなかったとしよう。そうなれば、今日から映画撮影に向けて活動再開すると、今確定したわけだ。本当に脚本をやっていいのか? 少なくともそれが完成するまでは部室に通わないといけないぞ......いや、問題は、それで済むかどうかだ。四人目云々言ってたよな、僕。まさか四人目が見つかるまで残るつもりなのか?


 思わずため息をつきそうになる。どうやら僕は、おかしくなってしまっているようだ。本来だったらこんな危険地帯、恥じも外聞もかなぐり捨てて逃走するのが僕と言うものだ。僕はそう言う糞野郎だから、今のような生き方に落ち着いたんだ。なのに、なんで僕はとっとと辞めない......まさか、辞めたくないなんて思ってるんじゃなかろうな。


 もしそうだとしたら、僕はなんで辞めたくない......今思いついてゾッとしたが、僕が、小早川を好きになってる、なんてことあるんだろうか。いやいや、流石にそれはチョロすぎる。確かに小学生の頃「緒方君って思ったよりはまともだね」と女子に言われてちょっと好きになっちゃった程度にはチョロかったけど、流石にね。いやチョロいとかいうレベルじゃないぞ。捉えようによっては悪口だろそれ。


 僕が、小学生の頃と変わらずチョロかったとしよう。だとしてはっきり言えるのは、小学生の頃と比べ、僕は身の程というものを知っている。僕に人を好きになる余裕なんてないことくらいわかってるはずだし、その相手が小早川だってんならなおさらだ。


 危険な生き方で自身を顧みない小早川なんて、帰ったら結婚することを約束して戦場へと赴いていった兵士くらい、恋する相手としてはリスクが高い。僕まで大いに傷ついてしまう結果が待っている可能性は大だし、そうならなかろうが、危険地帯にいる恋する人が心配で毎日気が気じゃなくなってしまう。そんな感情、とてもじゃないが僕には抱えられないんだ。


「じゃ、今日放課後集合な。剣持が話を受けたら、一緒に連れてきてくれ」


 壁にもたれかかり恋愛論を考えるという、よく考えたら非常に恥ずかしいことをしているうちに、話は終わったようだ。風間先生は残りのパンを抱え込んで、体当たりするようにドアを開け、疾風のように部室を出て行った......え、ここで一緒に食べてくれないの? 結局のところ風間先生は必要な存在というか、必要悪というか、社会人にとってのスト缶みたいな感じだったんだけどな。僕も成人したら絶対溺れる自信がある。


 僕は小早川の様子を伺う。やはり、あまりご機嫌がよろしくないように見える。しかし、風間先生を追っかけて辞表を叩きつけるようなことはなく、なんと「すみません、まさかこのようなことになるとは」と僕に頭を下げてきたのだった。僕はもう慌てて「いやいやいや」と「大丈夫大丈夫」を連呼した。真面目な小早川が謝ること自体は意外ではないが、やっぱりあの小早川に頭を下げられるというのは心臓に悪い。


 ともかく映研部は存続するようだ。頭をあげた小早川は、弁当箱をぱかりと開けた。あれ、昨日よりもお弁当の量が多いような......いや、着眼点ヤバキモ。一番女子から嫌われるやつ。


 僕も風間先生に習って部室を出て行くべきかと思ったが、再び巡ってきたチャンスを逃すべきでないと、恐る恐る、ソファの肘掛に埋もれるように座った。なんならここで「一緒に昼食をとろうとするなんて、あなたは退部です」なんてことを言ってくれたらよかったんだけど、小早川は黙々と弁当をつつくだけだ。


 僕は、やっぱり「辞めたい」という言葉が出てこなくって、そのために振り絞った勇気で「入部が断れない可能性が出てきたから、なるべく目立たないようにした方がいいかもしれない......その、正直に言うと、俺はともかく、小早川さん目当てで入部届け出す人も、いるかもしれないから」と言った。小早川は少し驚いた様子だったが、僕の意見を受け入れてくれて、そこからは静かに弁当を食べた。しかし、これこそがまさしく映研部のあるべき姿なので、特に気まずさは感じなかった......いやいや、だから辞めなきゃ駄目なんだって。

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