第3話

「ん...ここ どこだ...?」


目が覚めたのは見慣れた天井ではなく青空だった。

時刻は大体10時くらいか?

見慣れた天井ならば僕が目を覚ます前に姉に起こされるはずだった。

周りは草が生い茂り、よくここで寝れたなと自分でも感心する。


「...う、あぁ!?」


体を動かそうとした瞬間、謎の激痛が体全体を走り声にならない叫びが出た。

なんだこれは。

この時点では起きたばかりということもあり、襲われたことを一時的に忘れていたのだ。


「まだ動いたらダメですよ。やっと骨がくっついた段階なのでまだ肉は離れたままです。」


忙しない方ですね、と彼女はため息をついた。

体を起こすことが出来ないので姿は見ることが出来ないが、僕はこの声に聞き覚えがあった。


「...ゆ..き.....?」


僕は声を発するのがやっとだった。


「そうですよ。」

「ちょっと待ってくださいね。治療中ですから。」


そして僕は思い出した。

気絶する前のことを、化け物のことを。


「あ...ぁ...!」


「落ち着いてください。」

「今は貴方が出会ったも落ち着いてますし、何もしなければご友人は無事です。」


僕は雪を何も言わずに見つめる。


「分かりました。全てを話しましょう。」

「とりあえず少し眠ってください。お疲れでしょうし。」


そして僕は再び眠った。

化け物と戦った時のように気絶ではなく、なんとも気持ちがよく、落ち着いたように眠った。


次に僕が起きた時は肌寒く次の日の夜になっていた。

少し遠くにある電灯が当たりをぼんやりと照らしている。

あの化け物に出会ったのは太陽が沈み始めた頃で大体午後6時。

そして今はそれから3日ほど経っている。

1度目に目を覚ました時には2日以上眠っていたらしい。

まぁ殺されかけたんだ、しょうがないだろう。


おそるおそる腕を動かす。


「お、もう大丈夫だ、」


「目が覚めましたか。体の具合は?」


「ああ、もう大丈夫だ。」

「それよりも色々と聞きたいことがある。」


はい、分かりました、と雪は紙コップに麦茶を入れ、体を起こした僕に差し出した。


少し話が長くなりますが、まずは私の話からと言って僕の向かい側に座った。


「私の本当の名前は夏清 焼香。」

「職業は陰陽師なんだよ。」


そう言いながらドヤ顔で見てくる。

美人だから許せるものの、これが男ならただただムカつく。


「陰陽師って?」


「現代にも陰陽師っていう職業があるんだけど、もちろん必要だから存在してるの。」


陰陽師とは人間などの生物とは違う、異物を払う者。

現代の異物は「ファルシ」と呼ばれる。

ちなみにファルシというのは「偽物」という意味である。

体の一部になり人に取り付くので偽物である。

まだ不明な点もあるが分かっているのは以下の通り


・下級・中級・上級に別れており、上級は人語を喋ることができる知恵がある。


・何者かに名前を与えられた場合のみ特級に進化する。


・害のないファルシも存在する。


・陰陽師の中には体にファルシを宿してる者もいる。


・基本的に普通の人には見えず、一度見ることが出来た者は見えるようになる


「...てことは桜葉に付いていたファルシは」


「少なくとも上級以上ですね。」


「助けられるのか?」

「その前に今まで僕は見えなかったのになぜ見えるようになったんだ。」


「ちなみに私と会った時のことを覚えてますか?」


桜葉の家に急いでいる途中に雪と出会った。


「あ、あぁ」


「私があなたに『右眼のお兄さん』と声をかけたのはあなたの右眼にもんです。」


え?


「安心してください。」


「下級ですし、あなたに害を与えるつもりはなさそうなので。」


安心できねーよ!


「陰陽師のほとんどは体のどこかをファルシに委ねて代わりに力をもらいます。」


「僕は右眼にファルシを住まわせる代わりにファルシを認識できるってことか?」


「少し違います。右眼に宿っていなくとも、見ることは出来ます。」


「じゃあ僕には他に何か能力がある、ということ?」


「その通りです。」


たとえば、と言いながら雪はたつと手をひらいた。

その手の中には冷気のような、霧のようなものが集まり、結晶となった。


「すげー!」


「私の能力は氷です。代償としてファルシに血液をを与えているので、このような真っ白な肌なんです。」


色々見せてもらった後に、


「そういや、なんで僕がファルシにやられたってことが分かったんだ?いや、そもそも友達を助けに行くのも分かってたのはおかしい。」


「それはですね、ある人から聞いたのです。それとファルシにやられた時私がいたのは渡したあれに簡易的な術を仕込んであったんです。」


それで分かったんですよ、と雪は言う。


「ある人って?」


「それは言えません。それに案外、あなたの身近には沢山の陰陽師がいますよ。」


ふぅむ。まあいい。


「それで、桜葉を助けるにはどうしたらいい?」


「教えてください、でしょ?」


いい性格してるな、まぁ助けて貰って文句も言えないしな。


「...教えてください。」


「え?嫌ですけど?」


「え?」


「え?」

「その前に何も考えてないですし。」


どした、お前の性格は主人公にツンデレしているヒロインのツンの部分を凝縮して二乗したぐらいの攻撃力あるぞ。

もうそれはツンじゃなくてズンだよ!


「ちなみにタイムリミットは1週間です。」

「中級以下だと時間が経つと手強くなりますが、離すことは出来ます。」

「しかし、上級以上になると体全体を乗っ取るので最終的に離せなかった場合殺さなくてはなりません。」


「桜葉を殺させるわけないだろ。」


「3日ほど経っているので残り4日。今日が終わればあと2日です。」


時間がない、どうする。


「焦っても仕方がありません。とりあえず朝まで作戦を立てましょう。」











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非日常で非常識な世界 @mizunazuki

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