第2話 偽物

⚠️グロテスクな表現が含まれています。苦手な方はご注意ください。




「へ...?」

僕は、これに気づいた気持ちをどうすればいいか分からなかった、これに気づいてどう感じたのか自分でも分からなかったのだ。

言葉にも気持ちにも表れず、ただ吐いた。

玄関先にいた僕はトイレへ駆け込む暇もなく。

運のいいことにこの時家族は外出中だったので、冷静になった僕は戻したものを片付けた。

その後、制服から私服に着替え、肌寒いのでパーカーを着る。

どうすることも出来ない。

僕にはラノベ主人公のように強くもないし、そんな肝が座った人間ではない。

やばい。

とにかく、桜葉の様子を見に行こう。

確か家庭関係は良くないからか、家族の帰宅が遅いらしい。


僕はガレージからお父さんのお気に入りの自転車を取り出し、上り坂を全速力で駆け上がる。

もしかしたら警察とかに連絡すべきだったのかもしれない。

しかし、そんなことを考える余裕なんてなかった。

いや、連絡しても解決できないだろう、その前に信じてもらえるはずがない。

しばらく経って下り坂になった。

ブレーキをかけずに降りていくと急に目の前に人影が現れた。

ではなくのだ。

確かに太陽が沈みはじめて暗くなってきたから見間違いだったのかもしれない。

もしもそれがの人だったら。

僕の目の前に現れたのは肌が雪のように白く、髪も白髪でとても美しい。

血が通っていないかのように白い。

まだ春になったとはいえ、肌寒いのに彼女は浴衣を着ていた。

はだけた浴衣からは控えめな胸元がちらりと見え、ドキッとする。


「こんにちは。右眼のお兄さん。」


そう僕に微笑みながら語りかけてきた女性は白い息を吐いていた。

なぜ右眼のお兄さんと呼んだのか、僕はこの時点で疑問に思わなければいけなかった。

だがこの時僕はそんな余裕もなく


「どなたですか?」


「そうですねー、では雪と名乗らせて頂きます。」


雪と名乗るということは偽名なのか?


「すみません、急いでいるので失礼します。」


「そんなに焦らなくてもお友達はきっと大丈夫ですよ。」


「え...?」


僕がその言葉の意味を考える暇もなく、その女性は浴衣の袖から何かを取りだし、僕に渡してきた。

取り出したのはどこの国の文字か分からないもので書いてあるお守りのようなものだった。


「命の危機を感じたらこれを使ってください。」

「では、私はこれで失礼しますね。」


「あ、ちょ...と...」


そういった彼女は僕にしゃべらせる隙も与えず、まるで吹雪のように散ってどこかへ行ってしまった。

おかしな人だと思いながらも、貰ったものを上着のポケットにしまい、先を急ぐ。


ちなみに明確な住所は知らなかったが、さすがに腐れ縁なだけあってどこら辺かは分かっていた。

なので片っ端から「桜葉」という文字を探しながら住宅街を走り回っていた。


5分もかからず見つけると僕は迷わずチャイムを鳴らす。


「おい、桜葉!おれだ!開けろ!」


と、思い切りドアを叩く。


ガチャ


「んー?どうしたの、うるさいな」


やはり胸から1本腕が生えている。


「お、おい、その胸から出てる腕...」


「ん?それがどうしたの?」

「あ、あれ...?」


その瞬間、桜葉の目からは血が出て、腕が体の内側に入っていき、今度は口から出てきた。


「おっ、おえぇぇ、た、たすけ...」


「おい!桜葉!」


口から出た元々腕だった丸い塊のようなものが段々の人の形になってゆく。


「んー、よく寝た。」


塊のようなものが桜葉とそっくりな形を模した。


「ありゃ?右眼のファルシってことは陰陽師?」


こいつは一体何を言ってるんだ。


「何を言ってるんだ。そもそもお前は何者なんだよ!」


「何も知らないんだね。なのに私がこの子の体にことが分かったんだね。」


「まぁいいや、死んでよ。」


その時、普通の人間では反応できないほどの速さで近づいてきて、気がつくと僕の左腕を桜葉が口にくわえていた。


「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ、いたい、いたい、いたい。」


僕は叫んだ。叫び声を聞いた人達は絶対不審に思うだろうがそんなこと知ったこっちゃない。


「うるさいな、黙ってよ。」


その後、何かが潰れた音が脳内に流れて僕の記憶は消えた。





















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