続き
遠くからゆっくりとした足音が聞こえる。
僕はちょうど食べ終え、レジの棚へ隠れる。
それをみた彼女はエプロンを結び店外へ出る。
「あら、アリーシェはいつも私が中に入る前に気付いてくれるのね」
そう言いながら店内に案内されるおばあさん。
おばあさんはいつも部屋に花を飾るらしく、よく店に来る。
彼女、アリーシェはニコニコしながら切り花を手際よく集めていく。
それを見たおばあさんは言いにくそうに1つ咳払いをする。
「ごめんなさいね、今日は私のお花じゃないのよ・・・実はね、娘夫婦が孫を連れて私の家に来ることになって、そのお祝いにと思ってね」
それを聞いたアリーシェは、ぱあっと明るく笑った。
「え!本当ですか!良かったですね!これで賑やかになって毎日が楽しみですよね・・・!じゃあこの花達、サービスです!いつも買ってくれてますし、お祝いで!私から!」
バサッと数十本の切り花を束にし、おばあさんにみせ、おばあさんもニッコリと笑う。
その後ろで見ていたボクはおばあさんと目が合う。
ボクはササッと陰に隠れた。
「・・・猫なんて珍しいわね?隠れて飼っているのね?ここらへんじゃあ猫は珍しい生き物だから」
アリーシェは少し驚きながらも、頭をポリポリと罰が悪そうに掻き、『内緒ですよ?』と人差し指を口に当てて言った。
それを聞いたおばあさんはクスクスと笑いながら花束を持ち、空いた手でアリーシェにひらひらと手を振る。
それを見送ったあと、アリーシェは僕の所に小走りでやってくる。
「危なかったね・・・!もう少し表にでてたら君のことバレてたかもしれないね!」
ボクの前でしゃがみ、小声で話す。
そして人差し指で僕の頭を撫でる。
「君は人気者だね。ただの猫ちゃんで、黒くて目の色が左右違うってだけなのに・・・ただそれだけなのに人間の好奇心と欲で皆に追われて」
アリーシェはボクを撫でながら眉をひそめる。
アリーシェだけはボクを見かけても『あっ!』とは言わなかった。
そんな優しさをボクはアリーシャ人差し指、手、腕に身体を擦り付けて応えた。
ガザニアの猫 夢売ばく @yumeuribaku
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