5.死闘見守る仲間たち
空で繰り広げられる激闘を、残雪とオオタカ,ハヤブサ,ユーラが固唾を飲んで見守る。
攻防を見守りつつも、オオタカと残雪が言葉を交わす。
「凄まじい攻防ね。よくもまあ、あんな子を見つけて仲間にできたわね」
「ああ。私も半分信じられねェ」
「キャプテンも、ようやくCCMを使ったわ」
「そうだな」
ユーラは一言も発せないまま見守っていたが、やがて残雪に問いかける。
「あの、CCMって何ですか? もしかして残雪さんが習ってるのって...」
「ああ、ユーラは知らなかったな。オオタカ、教えてやってくれ」
残雪はオオタカへと話をつなぐ。オオタカは少し得意げな表情を浮かべ、ユーラの方を向く。
「対セルリアン戦闘機動、通称CCM。私たち鳥フレンズに特化した、セルリアンを排除するための格闘術よ」
「格闘...術...じゃあ、拳法みたいなものですか?」
「ええ。大体合っているわ。でも、少し違うの」
オオタカは初心者への説明のため、一呼吸おいて思考を整える。
「空手、柔道、拳法、世の中には色々な格闘術が有るわ。でも、それらはただ戦うだけじゃない。礼節や文化、美しさも重視しているの。まあ、一種のスポーツってところかしら」
「そうですね。よくお世話になっているタンチョウさんも、礼節が大事と言っていました」
「あの拳法家の子ね。ええ、そういうことよ。でも、CCMは違うの。最小の負担で、より多くの強いセルリアンを排除することのみを追求している。そこに文化も何も無いわ。科学的に、合理的に、ただただ敵を排除する事だけに特化した技術なの」
「そんなの...血の通わないただの凶器じゃないですか」
冷たい光を宿すオオタカの瞳と言葉に、ユーラはたじろぐ。
そんなユーラへ,オオタカに代わってハヤブサが話を続ける.
「そうだ。拳、足、爪の有効な使い方、サンドスターの効率的な出し方、鳥類として生来備わっている特徴、それら全てを、緻密な鍛錬を通して凶器に変えるんだ」
オオタカとハヤブサは,厳しくも意志のこもった視線を投げる。
「私らはどんなに凶悪なセルリアンにも負けてはならない。なら、とこまでも強く、どこまでも凶悪な力を持つ他ない。皆を護るってことは、そういうことだ」
二人の視線は力強かった。
ユーラは一瞬、野生時代に猛禽に狙われる時の戦慄を思い起こさせる程であった。
しかし、その眼光はユーラを狩る為のものでは決してなかった。
「本物の...覚悟ですね。軽はずみな事を言った上怖がって...ごめんなさい」
「分かってくれれば良い。それに、キャプテンもお前と同じ考えだ」
「えっ、どういうことですか?」
「相手の攻撃を受け流し、一撃一撃で確実に相手を破壊する。そんな技をフレンズに向けるのは本来タブーだ。フレンズを大切に思うキャプテンにとってはなおさらだろうな」
ハヤブサのその言葉に、残雪が反応する。
「だが、マヘリには使ったな」
「ああ。それだけマヘリが強かったってことだろう.こんな事はオウギワシ以来だ」
「それで、どっちが勝つと思うんだ?」
「...私らの稽古を受けておいて愚問だな。お前らしくない」
そう言うとハヤブサは、空へ目線をやる。
次の瞬間、物凄い勢いで大きな褐色の影が落下し、大地を抉る。
土煙が収まった後には、苦しそうに膝をついて、息も絶え絶えに俯くマヘリ。
そして遥か上空。
太陽を背に、鋭い眼光を帯びて腕組みしたまま浮遊するハクトウワシの姿。
「マヘリ...!」
「マヘリさん!」
戦いの優劣は明らかだった。
思わず声を上げる残雪とユーラに,オオタカが諭すように語る.
「確かにあの子は強い。でもね,武術を極めたヒトの中には,パワーもスピードも遥か上の熊に勝てる者も居る.CCMを極めるキャプテンにも,同じことが言えるわ」
「成る程な...流石ヒーローさんだ」
残雪は驚きながらも、オオタカに向け不敵な笑みを向ける。
「だが、まだ分かんねェぞ...?」
「…それはもしかして...」
「マヘリも野生解放を使ってねェ」
「それでキャプテンを倒せるとお思いかしら? と,言いたい所だけど…あの子の常識外れの力…悔しいけれど,断言できないわね」
その言葉を最後に4人は、おもむろに睨み合う二人の大型猛禽へ視線を移す。
「あのマヘリとやらが野生解放した時の力は…凄まじいだろうな」とハヤブサ。
「ここから先の戦いは,もう私たちの想定は通用しないでしょうね」とオオタカ。
「マヘリ,そいつは最高の相手だ.悔いを残すんじゃねェぞ」と残雪。
「お願いです…どちらも無事に帰ってきて下さい…」とユーラ。
様々な思いが交錯する中,憧れの英雄と孤高の狂戦士との勝負は、未踏の領域へと踏み込んでゆく.
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