2.チーム「スカイインパルス」

一行は空を翔け,太陽もその位置を殆ど動かぬ間に,山に囲まれた盆地にたどり着いた.

残雪は迷いなくその盆地の中央へと降り,二人も続く.


「ここが,“スカイインパルス“の特訓場ですか」


到着早々,ユーラが問いかける.


「ああ,そうだ.もうすぐ…来るぞ…」


マヘリは辺りを見回す.

そして何やら周りをきょろきょろと伺っている残雪に問いかける.


「なあ,ハクトウワシとやらは」


しかし残雪は、それに答える余裕はなかった。


「シッ,静かに」

「あ,え?」


真剣な残雪に,戸惑うマヘリ.

次の瞬間,突然目の前の草が弾ける.


「きゃあっ!」

「何じゃあ!?」


ユーラとマヘリは思わず声を上げる.


残雪は何かを避けるように身をかがめていた.

彼女の髪の毛の先端が,わずかに切り裂かれる.


正体不明の影に刹那遅れて,突風が三人をなでる.

やがて風が止んだ時,


近くで拾ったであろう木の枝を構える残雪.


そして着地したままの体制で,鋭い目つきで残雪を見つめるフレンズ.

 突如現れたそのフレンズは,残雪を見据えたままおもむろに立ち上がる.


軍服風の白コートを身にまとい,引き締まった体は高い身体能力を物語っていた.

マヘリと同じ,猛禽のフレンズだった.


「残雪,やっぱり良い勘してるわ.特訓の成果は出てるわね」

「ハッ,そりゃあどうも。おだてても何も出ねェぞ」


現れたフレンズはユーラとマヘリに視線を移す.


「あら,残雪,今日はお仲間も一緒?」

「ああ,そうだ.コイツはインドガンのフレンズのユーラ,こっちのデカいのはS.mahery,猛禽のフレンズで,マヘリって呼んでくれ」


残雪の紹介に,ユーラとマヘリはペコリと頭を下げる.


「よろしくね,ユーラ,マヘリ.私はオオタカのフレンズ.スカイインパルスっていうチームの参謀をやらせて貰ってるわ」


オオタカの自己紹介が終わったところで,二つの翼の影が舞い降りてくる.

一つは,黒い軍服に白髪が映える,異国風の美人ながら屈強そうなフレンズ.


「Oh,残雪! 時間通りね,むしろ待たせちゃったかしら?」


もう一つは,鋭い翼が特徴的な,凛々しくも可愛らしい目をしたフレンズ.


「抜き打ちテストは済んだかオオタカ.もう少しスピード付けても良かったんじゃないか」


二人が地面に降り立ったところで,オオタカが紹介する.


「この白髪のアメリカンな子が,我らスカイインパルスのキャプテン,ハクトウワシ、そしてこの鋭い翼の子がハヤブサよ」

「Hey! 残雪のお友達ネ,ワタシがキャプテンのハクトウワシ。ヨロシク!」

「ハヤブサだ.スピード勝負ならいつでも受けて立つ」


面子が揃ったところで,全員軽い自己紹介を交わす.

スカイインパルスは,ハクトウワシ,オオタカ,ハヤブサで組まれた猛禽のチームで,セルリアンからフレンズを護ったり,強くなりたがっているフレンズを指導したり,時に空のレースに参加もするエリート達だ.

3人とも輝く特技を持っており,フレンズ達の間ではヒーローとされ,ファンも多い.


お互いの事を知った後,オオタカが口を開く.


「さあ残雪.特訓を始めましょう! 今日は高速機動中の…」

「いや,待ってくれ,その前に頼みが有る」


残雪はオオタカを止め、マヘリの方に目を向ける。


「少しいきなりなんだが,マヘリにキャプテンと手合わせさせて貰えんだろうか」


オオタカは虚を突かれた顔で、残雪の連れてきた新参を見る。

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