第29話 その二十九

鬨の声があがった。

 騒ぎを聞きつけて、城の廻りに住んでいる家臣たちが来たが、

「俺たちには総一様がついている!」

 という声を聞いて、何もせず道を通すばかりだった。

 門を丸太で突き破り、奥へ突き進んでいく。

「いくら総一様とはいえ、ここから先は通せませぬぞ」

 最深部にくるとさすがにただでは通してはもらえないらしい。

 武装した兵が黒山の人だかりになっている。

「我が名は総一、前城主の息子。十年前に殺された者たちの恨み、今宵をもって現城主に償ってもらう。邪魔立てする者は容赦せぬぞ!どけえええ」

 総一の氣合いと共に右手に持った剣から光の煙が立ちのぼってきた。

「うおおおおおおおお!」

一人の兵士が先頭にいた総一に斬りかかる。

「早まるでない!」

他の者が止めようとしても時、既に遅しである。

その者は一刀のもとに横腹から肩口で二つに分かれていた。

 赤い飛沫が総一の顔にまだらを作る。

「すまない」

「ば、化け物か……」

片手で鎧を着込んだ人間を真っ二つにしたのだ通常の人間の技ではない。

 それを皮切りに戦闘が始まった。

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