第26話 その二十六

 総一は、綾子の名前が自分の妹と一緒だと思ったがすぐに氣にならなくなった。

 綾子は料理を教わっているようだ。

 手の指を伸ばして野菜を切っていたのを直されている。

 猫の手にするのと言われているようだ。

 綾子は小さく猫の手、猫の手と独語していた。

 料理ができた。綾子だけで作ったという物があった。

 餃子だ。

 よく作っているらしい。皮は美しくととのっていてパリッとしている。噛んだら肉汁が口の中に広がる。

 うまい。

 綾子はみんなに褒められて嬉しそうにしていた。









 

 エヴァは林の中に立っていた。綾子が一人で歌っているのを聞いているのだ。

 とても上手だった。

 透明感がありよく通る歌声。

 森の動物たちや木々も、この歌声を聞いているようだ。

 林の中でうっとりと聞いていると、小鳥の群れがパッと地面から木に飛び移った。

 お兄様が来て、綾子の隣に座る。

 しばらく歌った後、綾子はお兄様を押し倒して、唇を吸い始めた。

 しかも股の間に手を伸ばしている。

 じろ吉に仕込まれていたのだ。

 エヴァはその光景を林の影からそっと覗いている。


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