第25話 その二十五

「ハア、ハア」

綾子は走っていた。

 男が追いかけてくるのだ。

 前の経験から男が自分を犯そうとしているのを感じ取って逃げている。

 林を抜けると、男の人にぶつかって受け止められた。

 肩を掴んでいる人にむかって、とっさに言葉が出てきた。

「助けて」

 男の人は自分を見つめて、美しいと言った。

 林から追いかけてきた男が出てくる。

それを見た綾子は男の人の服を握りしめる。

 こちらの方を見て、男はすぐにまた林の中に消えてしまった。

 黄金色の髪の人はもう大丈夫だよと言ってくれた。










 

 綾子から養(やしな)い親(おや)が死んだこと、男に追いかけられていたことをジークたちは聞く。

 ただしその前のことを綾子はしゃべらなかった。

 今この国はどこも荒れていて、安全な場所はそうそうない、しばらく自分たちと一緒にいないかとジークは提案した。

 綾子はほかに行くところがなかったので、二つ返事で承諾する。

 自分がいた城に向かっていることも知らずに。

道中、ジークは綾子のことを氣に入ってくれたらしく、よく氣にかけてくれた。他の人たちもみんな、いい人たちで綾子はすぐに好きになった。


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