第22話 その二十二
「ごめんなさい」
うつむいてしくしくと泣き始めた。
じろ吉は拍子抜けしてしまった。
物盗りかと思った人間が泣き出したのだ、無理もないことであろう。
「おい、泣くな。おめえ、一人か?親とかいねえのだか」
綾子はうなずいて、泣くばかりだ。
じろ吉は、綾子の様子がおかしいので、いぶかしく思う。
綾子から今までどんな暮らしをしてきたか、逃げてきた時のことを聞いた。
かわいそうに思えてきた。
「どれ、しばらくここにいるか?」
「いいの?」
じろ吉はうなずく。
とりあえず綾子の身をきれいにしてやった。体を洗うのに使った水は見たことがないほどに真っ黒だ。髪を短く切りそろえて、顔の産毛も剃る。
身を綺麗にした綾子はとても美しい少女だった。
じろ吉は一瞬、少女の美しさに目を奪われる。
(身につけている着物もいい物だし、どこかのお姫様だべか)
衣服は上等な物だったが、動きづらそうだし誰かに見られたらまずいと思い、むかし連れあいが着ていた服を着せてやることにする。
おとなしい子だったが、何も知らないためにじろ吉は大変だった。それでも楽しかった。連れあいが死んでから、一人でいたが誰かと一緒だと寂しくなかった。
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