第21話 その二十一

いだった。

 地面を素足で踏んでいたため足が痛くなる。

 ので、なぜかコロリと乱れて置いてあった履き物を拝借する。

 また牢屋の中に入れられるのを恐れた綾子は城から遠く離れることにした。

人に見つかると必ず追いかけられていたため、城下町についても、人目を避けるようにして進んでいった。

 町を過ぎ、山道を進む。

 普通の女の子なら山道など嫌がるものだろう。

 だが綾子は、ずっと暗い部屋の中にいたため、何もかもが楽しかった。

 無知だから恐れるものだが、綾子には関係なかった。

 監禁されていた部屋に戻る方がよっぽど怖かったのだ。

踏む土が、脚に当たる草が、流れる音の聞こえる川が、そこいらにいる虫が、祝福してくれているように感じた。

 やっと出られたね。

 自由だよ。

 これからどうするの?

 頑張って。

 しばらくして疲れてくるとお腹が空いてきた。

 茅葺き屋根の家が一軒ぽつんと見える。

 入って食べ物を探すことにする。

 なんの躊躇もない。

 綾子は、人の家に勝手に入ってはいけないという考え方を持ち合わせていなかった。

 もちろん、物を盗むことも。

 そもそも盗むということがわからない。

玄関の敷居をまたぎ、すぐ台所だ。

 干した肉や芋があった。

 口の中に入れる。

 ふと人の氣配がして後ろを振り向くと、鍬を構えたおじいさんが鬼の形相で立っていた。

「なにもんだ、おめえ」

「ご飯食べてたの」

 



 じろ吉はじっと、家の中にいる人物を見ていた。

髪の長い、汚い少女がいる。

 臭い。

 綾子は風呂に何年も入っていないのである。

 なんてくせえ女子(おなご)だとじろ吉は思った。

「さっさとでてけ!!俺の家だど」

 綾子は怒鳴られて怯えだす。

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