第11話 その十一

 今日はお母さんと出かけてくるからといって、お父さんとお母さんは家を後にした。

 家の掃除をしていたら男の人が訪ねてきたのである。

「薬はいりませんか」

 見るだけ見ようと思って返事をした時。

 背負っていた箱の中から短刀を取りだして動くなと脅された。

 腕を後ろ手に捕まれて首筋に短刀を突きつけられる。




 おかしな様子に氣づいた。

 ジークとの稽古をやめて、家の方に行ってみると男がマリアを捕まえていた。

 怒りに我を忘れそうになるのを必死で押さえつける。

「マリアを離せ」

 総一は怒鳴っていた。

「何が目的だ」

「お前だよ王子様」

「私か」

 ジークが答える。

「違う。黒髪の方だ」

 自分のせいでマリアが危険な目に遭うなんて嫌になる。

「抵抗はしない。マリアを離してくれ」

 男の要求通りジークに手首を縛られる。

 俺はマリアのかわりに捕まった。

「おれを殺すのか」

 男はああと答えて、俺の後頭部を短刀の柄でおもいっきり叩く。

 意識が途絶えた。




 総一を殴りつけた瞬間の隙を狙ってマリアは下から突き上げるように男の顎に蹴りを入れた。

ひらりとスカートが踊り、すっと伸びた脚が現われて消えた。

 間髪入れずにジークが走りながら男を殴って五メートル離れた木に男はぶつかる。

 マリアは吹っ飛ばされてジークの背中にぶつかった。折り重なって地面に倒れこむ。

「痛ったあ」

ぶつけた所をおさえながら、後ろを振り向くと総一が担ぎ上げられて運ばれていくのが見える。

 総一を狙っている人間はもう一人いたのだ。

 マリアは起き上がった。

「ジーク!追いかけよう」

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