第6話 その六

 総一は剣を撫でていた。

「なんてきれいなんだ」

「ちょっとやめてよ!」

 マリアは赤くなりながら総一を睨(ね)めつける。

「べつにいいだろ。へるもんじゃあるまいし」

「なんか……いやなの!」

 総一はマリアを無視して剣を舐める。

 ペロリ。

「へんたい!」

 剣がふっと消えた。

 ジュリアが豪を大きな瞳で見つめる。

「氣持ちはわからなくもないな」




 総一は自分がなぜ剣を舐めたのか自分でもわからなかった。勝手に舐めていた。何をしていたんだろう僕は。それよりも……

「あの……」

「まあ、心配するな、とりあえず俺たちの国まで連れて行く、そしたら追っ手もそうそうこれないだろう。後のことはおいおい考えようか」

 道なりに歩いて行く。

「なんで僕、生きてるんでしょうか」

「運が良かった、ただそれだけさ」

「あの剣は……」

「マリアの心だ。お前はマリアと契約をして力を得た。だから生きているんだ。マリアはお前の命の恩人だ」

「助けてくれて……ありがとうございました」

 マリアは総一を横目でチラと見るだけだった。

「これはある一族にしかない特別な力なんだが、力を与える代わりに死ぬまで契約者は主を守らなければならない」

「しぬまで……」

「悪くいえば、奴隷だな」

 マリアは総一の顔を見る。

 天使のような笑顔がそこにあった。

「よろしくね、あたしのどれいさん」

「どれいもわるくないかも……」

 総一は誰にも聞こえないくらいの声で言った。

「あたし、へんたいはいやよ」


 一行は黙々と歩く。

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