第5話 その五
先ほど心臓を喰ろうたはずの子が生き返っている。
ジンは驚愕した。
「いったい何をした」
男はジンの問いかけに応えずに斬りかかってくる。
くそ。
身体能力だけならまず負けるということはないのだが、男の持っている剣が普通ではなかった。
なんなんだあの剣は?
向こうの剣とぶつかり合った我が刀は折れて使い物にならなくされてしまっていた。
この俺が防戦一方だと?そんなことがあり得るのか?
いや、男の剣を構えた姿はまるで芸術かと思えるほどの領域に足している。氣合いもまるで鬼が目の前にいるのかと錯覚するほどだ、仮に剣が通常の代物でも身は危うかったかもしれない。
月の光に照らされた男はどれほどの死線をくぐり抜けてきた強者(もさ)なのだろうか、もはや美しいと表現してもよかった。
身の危険を感じる。
これは引かなければなるまい。
「これで終わらせる」
一声言い放つと、男の剣の輝きが増した。
なにかまずい氣がする。
男は上段に構えを移す。
剣がとどく距離ではなっかたが、お互い微動もしなかった。
相手の空気を探り合う。
自分の浅い呼吸音しか聞こえない。
その時、突風が吹いた。
男の髪が乱れ流れる、桜の花びらが逆巻く。
ジンは力の限り避ける。
横を見ると地面が裂けていた。
頬を一筋の汗がつたう。
一目散に逃げた。
豪の持っていた剣がふっと消えた。
「さ、帰ろうか。長居は無用だ」
「どうするの、あの子」
「連れて行くしかないだろ」
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