第7話 その七
次の日も黙々と歩く。
総一の足はもう限界だった。
歩くだけでこんなに疲れるなんて。
大人の二人はまだしも自分と同じくらいのマリアも平氣な顔をしている。
すごいなあの子。感心した。
山道を進んできて、見晴らしの良いところで休息をとることにした。
黄色いタンポポが咲きほこり風に吹かれて頭を揺らしている。
みんなから少し離れたところに腰を下ろす。
景色が一望でき、春風が心地よかった。
自分のいた城が見える。
あの男が持っていた父上の首、投げつけられた爺やの首、母上、妹はもう命はないだろう。
もう肉親に会えないと思うと、寂しさと孤独感に包まれた。
父上、母上、綾子、爺や、会いたかった。会いたいのに会えない、心が締め付けられる。
当たり前にいた人たちの大切さ。
失ってからもっと大切にしたかったと思ってしまう。
時は戻ってくれない。
大男に殺されそうになった時をおもう。
あまりにも突然だったが今になって本当に生きてて良かったと思う。
あそこでおわっていたら……
死んだらどうなるのだろうか。
生きたい。
生きていたい。精一杯。
これからどうなっていくのか。
どうやって生きていけばいいのだろうか、あまりにも無知だ。
総一は悔しかった。
何もできない自分の無力さが嫌になった。
あの男が憎かった。
強くならなきゃいけない。
あいつに勝てるくらい。
感情がない交ぜになっていた。
「泣いてるの?」
マリアが横にいた。
「え?」
目のあたりを触ってみると確かに涙がでていた。
とめどなくあふれてくる。
止まらなかった。
その時マリアが顔を包み込むように総一を抱きしめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます