♀♀駆け引き
あらら・・・一希さんたらあんなに気を落ちして・・・・・・。
少し励ましてあげよっかな。
「一希さん、この戦いは武道大会では無いのですから、個人の勝ち負けは問題ではないのですよ。この試合の目的は魔族の協力を得る事。どれだけ自分が戦いに勝っても試合に負けてしまえば負けなんです」
「・・・たしかにそうだ」
「それに、真の目的は魔王の勝負に勝つことではありません。魔族の協力を得て"ベルゾディア"を倒すことですから、誰か一人でも死んでしまっては意味がないのです」
「ベルゾディア?」
「あ・・・ウラクムモロスの本当の名前です、ベルゾディア」
「そうなんだ」
「ベルゾディアについてはこの戦いが終わって魔王に話をする時詳しくお話します」
「ですので、とにかく何があっても死ぬことは私が許しません!」
一希はミューの迫力に思わず息を飲んでいた。
「参考までにですが、一希さんはテレボ・ロアに勝てる確率はどのくらいのつもりでいますか?・・・いや勝てると言うよりかはいい勝負ができると言い替えた方が良いでしょうか」
「勝てない前提なのか・・・まあ、今の話の流れだと当然だな。戦えると言うだけなら50%ぐらいはあるんじゃないかな・・・。半ばギリギリまで食いついていて、最後本気出されて呆気なくやられてしまう・・・的な?」
ふぅ~
「全くわかってませんね。正直なところ、私は開戦直後に降参しても良いくらいだと思いますよ」
「そ、そんなにか!?」
「はい。まともに戦える確率は恐らく5%以下・・・。下手すると開戦直後に時間を飛んできて気がつけば自分の首が地面に転がってる・・・。ありえない話ではありません」
ミューの話を聞いていたレーティアもその通りだと思ったようだ。
寄ってきて声をかける。
「一希、ミューさんの言う通りだよ」
「お、おう・・・そうか・・・」
「だから絶対に死なないでね」
「なんか戦地に向かう兵士みたいだな・・・フラグが立つからその言い方はやめてくれ」
「フラグ?」
「あぁ。それを言うとその通りになるって言うジンクスみたいなものだ」
「そっか。ならコレ・・・」
そう言うと手首からブレスレットのような物を外し俺の手首につけた。
「これ、お守り。私のお気に入りだから絶対に返してね」
(知らぬこととはいえ、なぜこうまでフラグを立てようとするんだ・・・・・・マジで死ぬやつじゃないのかこれ・・・)
「お、おう、わかった。必ず返すよ」
(あー・・・フラグ立ったなこれ)
内心複雑な思いだったが必死で笑顔を作っていた。
「じゃぁ私も」
「ん?」
「一希が無事に生き残ったらご褒美にチューしてあげます!」
!!!
!!!
(なんなんだよ・・・次から次へとフラグのオンパレードか?そんなに俺を殺したいのか!?)
「ミューさんチューとかしなくても良いですよ、無理しないでください」
ミューは"かかった"と言わんばかりに内心ニヤッとした。
「あらら・・・そうですか。なら私の代わりにレーティアさんお願いしますね!ご・ほ・う・び♪」
「へ!?」
レーティアは突然のフリに動揺していた。
「え、あ・・・その・・・」
「オイオイ、何無茶ぶりしてるんだよ!?」
「えー、無茶ですか?レーティアさんのあの様子満更でもないと思いますけど」
レーティアは"ハイ"と言いだけだが言えないでモジモジしているのが丸わかりだった。
「・・・・・・ったく」
私は心の中でよっしゃ!と拳を握った。
「レーティア、生き残ったらご褒美期待してるよ!」
「ひぇっ・・・ハ、ハイ、分かりました。やった事無いですけどご褒美頑張ります」
ご褒美頑張りますってなんて乙女なんでしょ。
私は"やった事無いですけど"という言葉が耳に入ると、小さな悪魔が囁くような感覚を覚えた。
それと同時にレーティアの側へ行き耳元で何かを囁いた。
"チュー初めてなんですね、どうるすか分かりますか?"
レーティアもミューの耳元で囁いた。
"どうしていいかわからないです"
"一希さんのクビに両手を回して、口にチュ~~~ッとするんですよ"
"そんな、は恥ずかしいですよ"
"なら私が代わりにやりましょうか?"
"いえ、私がやります!"
明らかに嫉妬の想いがヒシヒシとしてます。
レーティアさん想いいは本物だと言う証拠ですね。
「オイオイ、そんなに目の前で堂々とヒソヒソ話するなよ・・・気になるわ」
「えへへ、ナイショです!」
「へいへい」
少しふてぶてしい返事はきっと照れ隠しのつもりなんでしょう。
「レーティア、なんか顔赤いぞ」
「やーーほっといてください!」
一希さん・・・なんて鈍感なんだろう・・・
(恐らく俺死ぬな。フラグがたちすぎてる)
はぁ~・・・
一希は大きなため息をついた。
レイナスがこっちにやってきた。
「みんなで何話してるんですかー?」
「ああ、俺が死なずに無事だったら、レーティアがチューのご褒美くれるんだと」
「な、な、な、なんでそんな事言うの!?」
レーティアは顔を真っ赤にしてその場を去るように走り出した。
「ええ!?そんなのずるい〜、私にも欲しいよー!」
レイナスはいレーティアの後を追いかけた。
「お前らは一体どういう関係なんだ?」
「仲が良いんですね」
「自分だけボッチで寂しいってか?」
「まあ、元から1人でしたからね。今更ですよ・・・」
そういえばレーティアさんとレイナスさんの様なお友達、もう何年もいないなぁ・・・
「ハイエルフってのも大変なんだな」
「まぁ、ハイエルフってだけで近寄り難い存在ではありますからね」
そんなに他愛もない楽しい時間がしばらく続いた。
「今夜は早めに寝ましょう。明日に備えて万全の状態を作らないといけませんし」
レーティアが切り出した。
「そうだな」
「私はレーティアと寝るー」
「ええ!?」
「ダメなの?
レイナスは少し悲しそうな顔をした
「ダメじゃないけど・・・」
「嫌なの?」
レイナスの目元は少しウルウルしていた。
「嫌でもないけど・・・」
「じゃあ何?」
「は、恥ずかしいよ」
「そんなの、慣れだって慣れ」
「んもぉ・・・」
レーティアは渋々承諾した。
許可を得たところでレイナスはレーティアの手を引っ張るように寝床へ向かった。
「ん?ミューは寝ないのか?」
「そうですね。少し一希さんにアドバイスしてからにしましょうか」
「アドバイス?」
「はい!アドバイスです」
ゴニョニョ・・・
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
「以上です。さぁ寝ますよ」
「ああ。ありがとう」
「・・・一緒にねます?」
「・・・寝ません。ミューは究極的に寝相が悪い・・・」
「・・・・・・」
「まぁ、どうしてもって言うなら考えてもいいけど・・・」
「どうしてもじゃないので結構です」
「えー!?なんか断った俺が断られたすげー嫌な感じなのはなぜ??」
「知りませんっ」
「・・・・・・」
私は一希をほって寝床に着いた。
夜が明け朝が来た。
「とうとうこの日が来たか・・・」
「なんですかその世界の終わりが来たみたいな言い方」
私はそう言うと一希の額にデコピンをかました。
「痛っ!いきなり何するんだよ」
「エルフに伝わる元気の出るおまじないですよ」
笑顔で答えた
「そんなことあるか!ただのデコピンじゃないか!」
「ほら、元気になったでしょ?」
「あっ・・・まぁ、ありがと」
「素直でよろしい」
一通り朝の支度が済んで出発の時が来た。
「城に向かいながら打ち合わせしましょう」
そう言ったのはレーティアだった。
私たちは荷物をもち城へ向かい歩き出した。
「戦う順番はどう決めるのか分かりませんが、戦う相手は昨日決めた通りでもんだいないですか?」
レーティアの質問に対しレイナスが答える。
「一希さんの相手、本当にテレボ・ロアでいいんですか?」
私とレーティアさんは同じ事を思っているようで似たような反応だった。
レーティアが口を開かないので私が答えることにした。
「そうですね、良いか悪いかと言うとレイナスさんの言う通り良くはないでしょう」
・・・・・・。
沈黙の間が続いた。
次に口を開いたのはレーティアだった。
「あくまで可能性の話になるのですが、カルバーニュさんとの戦いは100%魔法戦になります。魔法が使えない一希の勝機は0%です。しかしテレボ・ロアは異色な能力ながらも肉弾戦です。そう言う意味で勝てる可能性が無いに等しいですが、わずかでも無いわけでは無いです」
「いや最後、無い無い無い無い言われたらあるのかないのかわからんわ」
そんなにツッコミも気にとめず、私は追い打ちをかけるように話を続けた。
「レーティアさんがテレボ・ロアに当たれば倒すことは出来ると思います。ただ一希さんとレイナスのコンビでザルババゾルババのコンビを倒すことは限りなく0に近いです。組み合わせ的には近接戦闘と間接補助と同じなので相性は良いのでしょうけど格が違い過ぎます」
はぁ~~・・・
一希とレイナスは大きなため息をついた。
「つまり3勝1敗でこちらの勝ちってわけだな」
「そういう事です」
そう言いながら私は一希頭を撫でた。
「ハイエルフ様に頭を撫でて頂き身に余る光栄です」
「おやおや随分素直になったのねぇ」
そんな会話で進む中、一希は道中何やら不思議な行動を取っていた。
「一希さん何してるんです?」
「うるせーちょっとした作戦だよ作戦」
妙に気になるのでそっと覗き込んだ。
「それは・・・小石ですか?」
「ああ、そうだよ小石だ小石」
「そんのもの何に使うんです?」
「ほほー天下のハイエルフ様でもわからん事はあるんだな」
ムカッ・・・
ちょっと腹が立つけどここは落ち着いて・・・
「私にも予想できない事ならひょっとしてひょっとするかもですね」
そんなことを言っているうちに城に着いた。
歓迎とまでは行かないにしても、対等の立場として扱ってはくれているようだ。
魔族の中には人間を受け入れている訳では無いが、どんな戦いをするのか気になっている者もいるようだ。
城の中庭を抜けたところに練兵場だろうかとで広い場所に出た。
「ここは魔王軍の訓練場。どんなに暴れてもそうそう壊れることは無い。悔いなきよう持てる力を振り絞るが良い」
レーティアが前に出た。
「戦いの順番はどうやって決めるの?」
魔王は顎を触りながら考えている。
「何が提案はあるのか?」
「いえ、特には・・・」
魔族の1人が手を挙げた。
「なんだ何か良い案でもあるのか?」
「"くじ"で決めるのはいかがでしょうか?」
魔王は初めて耳にする"くじ"と言う言葉に首をひねった。
「"くじ"とはなんだ?」
私は1歩前へでてくじについて話した。
「くじとは当たり外れを書いた紙を箱の中に入れ、それを見ずに1人1つずつ取り出して行き"あたり"と書かれた紙を引いた者が勝者となる人間界に伝わる公平な物事を決める手立てのひとつです」
「ほう・・・つまりそのくじとやらでお互いの戦う順番を決めると言うことか」
「まずい、まずいぞ、戦う順番がくじになったら作戦が台無しじゃん・・・」
「やばいです!やばいです!」
レイナスと一希は動揺のあまりお互いの両手を握って震えていた。
レーティアも予想外の出来事に少し混乱している。
「くじ引きだと作戦通りの組み合わせになるのは難しいね・・・」
「レイナス魔法使いなんだろ?魔法で組み合わせなんとかできないのか?」
レイナスは胸ぐらをつかみ揺すりながら答えた
「そんなピンポイントで都合のいい魔法なんてあるわけないだろ!」
"一希さん?"
「ん?ミューか?」
"くじ引きの件は私が何とかします"
「そんなことが出来るのか?」
「おかしくなって独り言??」
レイナスが突っ込んだ
「そうか、いや、今ミューが頭の中に話しかけてきてるだ」
!!
「なんて!?」
以外にも反応したのはレーティアだった。
「なんかくじ引きのことは任せとけって」
"ただ、一希さんのスタート直後に降参と言う作戦は使えなくなりますけど・・・"
"元々そんな作戦を取るつもりねぇわ"
"なら安心です"
魔王は目を瞑ったまま少し考えていた。
「よし、そのくじ引きとやらで」
と言いかけた時、ミューが割って入った。
「お言葉ですが、ここはくじ引きではなくお互いの力量を吟味した上で組み合わせした方が盛り上がると思いますがいかがです?」
「ほう・・・盛り上がる・・・か」
「例えて言うならば、そちらのカルバーニュさんとこちらの一希が当たってしまった場合、一希は魔適正が乏しく戦いにすらならないでしょう。開戦直後にカルバーニュさんの攻撃魔法一撃の元瞬殺、そんな戦いになったとしても勝敗の方が大事だと言うのであればくじで決めるもよろしいかと思いますが、力の見定め、人間の本質を見抜くためと仰られていたので 近しい力量同士を戦わせた方がその力も測れると言うもの。と言ってもこちらは魔王軍の方々と比べ、並ぶとも言えない弱小者の挑戦者ですけど」
ふははははは!
「弱小者の挑戦者か。そうまで言われたらその条件飲まない訳には行かんな。ならばお主らに組み合わせの権利をくれてやろう。せいぜい楽しませてくれ」
私は心の中で"よっしゃっ"と拳を握った
一希もレイナスもレーティアも同じだった
「では準備にかからせていただきます」
そう言って一礼し控え室に向かった。
「ミューすごいじゃん!」
「私もドキドキしすぎて死ぬかと思ったよ」
レイナスもほっと息をついた。
「さすがハイエルフですね!」
「レーティアさんも、私の事もっと崇め奉ってもいいのよ!」
すかさず一希高速デコピンが飛んできた。
「調子に乗りすぎ!ビンチを救ってくれたのは確かだけどそれはそれ!」
「うぅぅぅ・・・」
イタイ・・・。
「まぁこれで戦う相手は予定通りだし、後は全力で頑張るだけだね!」
レーティアは気合いを入れた。
突然一希が手を挙げた。
「俺、先方でもいいかな?」
突然の申し出にみんなキョロキョロ顔を見合わせていた。
「いきなり先方がいいなんて、先方を買ってでる理由はなんで?」
レーティアの当たり前の反応
「そんなの負けるからに決まってるだろ。最後の戦いに情けない姿を晒したくねー」
「いや、私は最後の方がいいと思います」
私は反論に出た。
「なんでだよ!そんなに笑いものにしたいのかよ?」
「いえ逆ですよ」
「どういう事だ?」
レーティアも私の意見が気になるようで、さっきからじっと私の方を見ている・・・。
そんなじっと見られると恥ずかしいな・・・大したことではないのに・・・。
「どういう事なの?」
痺れを切らしたレーティアも聞いてきた。
「だって、先に3勝したら4戦目しなくていいですよね?」
「あっ・・・」
俺は意外な盲点に思わず声が出た
「確かに・・・」
レイナスも同様だ。
しかしレーティアは首を傾げていた。
「お父・・・魔王が言ってた"魔界の者全てを納得出させる強さを示せって"っ言うのは勝敗だけではなく個々の強さも含めてじゃないかな?3勝したから4人目は戦いなしとは行かないと思う」
・・・・・・。
「確かにそうだよな・・・少なくてもこの状況俺が作ったようなもんだしな」
一希はいい考えだと思っていたのが外れて落ち込んでいるのが丸わかりだ。
「そういう事なら、一希さんの言う通り一希さんに先方務めてもらいましよう。最後の最後であっさり負けて今までの勝ちはまぐれだの奇跡だの言われるのは癪ですからね。負けるなら最初に負けて"人間なんて大したことないな"というところから奇跡の逆転劇の方が凄みが増すというものです」
「俺は踏み台要素かよ・・・」
ププッ・・・
レイナスさん必死で笑いこらえてる!
「ならそれで行きましょう」
レーティアは一希のそばに言って耳元で何かを呟いた。
「・・・わ、わかった。頑張るよ」
一希さんが苦笑いしているところを見ると、少し無茶言われたのかな?
「作戦会議が、終わったところで戦場へ向かいますか!」
私はテンションをあげるため右手を大きくあげた。
「おーー!!」
みんなそれに合わせて右手をあげ拳を握っていた。
そうして訓練場へ向かうのだった。
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