♀♀引き継がれるエルフの想い

ウラクムモロスの情報集めとは言ったものの全く当てがない。

エルフの里にある書物の類はほぼ頭に入っていますし・・・。

とりあえずドワーフ村の書庫でも読み漁ってみるか。

そう考え2週間ほどかけてドワーフ村の書庫を周り、関連しそうな書物を探したがそれと思わしき物はなかった。

むしろ鍛治や武具生成、金属加工に関するものばかり・・・。

まさに脳筋種族らしいと言うのか、絶対的なプライドで極達の域に達していると言うのか微妙なところですけど、その分野の書物しかない。


人間の国にある書物も大抵把握してますがウラクムモロスに繋がりそうなものは無かったはず。


少しでも手がかりになりそうなところは無いか考えてみた。

・・・・・・。

・・・・・・。


!!!


そうか、あるわけが無いんだ。

ウラクムモロスの確信に迫った者は存在ごと消されてしまうから、情報その物が残らないんだ・・・。

早くも壁にぶつかり落胆した。


こっちで情報集めてから、魔界に行く予定でしたが完全に的外れですね。

一希達に情報集めするといった手前"何も手がかりはありませんでした"と言う訳にもいかないですし。

と言うか魔界に行ったところで状況は同じか。

早くもウラクムモロスに関する情報を得ることは出来ないと言う状況的結論がでた。


とは言え、情報・知識こそが最大の武器と考えるエルフにとっては情報なしで戦いに挑むと言うのは、裸で戦争に向かうことに等しい。


あまり気は乗らないですけど、里の大賢者様を訪ねて見るか・・・。

渋々里に向かうこと5日。

里に着いた。


はぁ~久しぶりに帰ってきた~。

この爽やかな魔力に包まれる感じ癒される~。

やはりエルフの里はいい所ですね。

里の入口で癒しの空気を堪能していると、突如後ろからおしりを撫でられた。


ひぇっ!

突然の事に驚き振り返るとそこにいたのは目的の大賢者だった。

「そんなとこで何をしとるんかね?」

はぁ~・・・

私は自然と大きなため息をついた。


「久しぶりに会うと言うのに初手で私のおしりに挨拶なさるとは、そろそろ大賢者と言うよりもド変態の方で名前がしれてるんじゃないですか?」

「ふぉっふぉっふぉ、相変わらず手厳しいのぉ」

二人は軽くジャブを入れあったところで、お互いの腹が読めた。


「嫌じゃ」

「魔族の姫の鱗と言ったら?」

「ムムム・・・・・・」

ミューはニヤついているが、賢者のじいさんはかなり迷っているようだ。

「爪もプラスしましょうか?」

ぷはぁ~

「負けたわい」


大賢者ともなれば未知の物への欲求は抑えきれないもの。

魔族の姫の鱗なんか欲しいと思っても手に入れることは出来ない代物。

そこに爪まで付くとなればもう・・・・・・我慢出来きないのは必然。

後で、レーティアに事情を説明して分けてもらわないと・・・。


「で?」

「"レグジュポット""命草""龍神"」

単語だけを並べた。

「ウラクムモロス・・・いやベルゾディアか・・・」


!?

「ベルゾディア?」

「それがやつの本当の名じゃ。と言うよりウラクムモロスと言うのは、大昔やつの名前の分からないドワーフたちが勝手につけた呼び名じゃて。龍神は名前を知られるのを嫌がるので名は伏せておるもんなんじゃ」

「なぜ名前を知られるのを嫌がるんです?」

ふぉっーっふぉふぉ

「お前もまだまだケツが青いのぉ」

「・・・もっと言い方があるでしょう。年頃の女の子に向かって言う言葉ですか?」

「青くないのか?ならワシが直接見て確認してやろうか?」

「氷漬けにして差し上げましょうか?」

「ほぉ、面白い氷の魔法を極め、氷の神と言われたワシに氷の魔法で挑むのか?」

「あなたを倒せないようではベルゾディアってのを倒すこともできないでしょう?」

ミューは魔力を高め始めた

「ば、馬鹿者!こんな所でワシとお主が本気でぶつかったらエルフの里は一瞬で氷の彫刻になるわ」

それでもミューは魔力を高め続けている

「わかった、わかったから、わしが悪かった」

ふぅ~

ミューはそれを聞くと魔力を解いた。

「全く、冗談が通じんと所は相変わらずじゃのぉ」

賢者の爺さんはおしりをポリぽかきながらため息をついていた。


「で、なんで名前を知られるのが嫌なんです?」

「・・・・・・呪いじゃよ」

「呪い?」

「呪いという物は相手の強さに関係なく履行できる。この意味がわかるか?」

「それが唯一の弱点と言うわけですか」

「結論を急ぐところを見ると、やはりお前のケツはまだまだ青いわ」

くぅ・・・返す言葉がない。


「唯一の弱点と言うのは半分だけ正解じゃな。と言うのも呪いにはそれに見合うだけの贄が必要になる」

・・・・・・。

大賢者様は左目と左耳、左手と左足がない。

ないと言っても義手義足はついている。


なるほど。

私は概ね大賢者様の言わんとしてる事が予想出来た。

「賢者様は呪いでベルゾディアから逃れられた訳ですね。だからこうしてベルゾディアの事を知っている・・・ですね」

ふぉっふぉっふぉっ

「さすがエルフの頂点に立つだけのことはあるの」


数分沈黙が続いた。


「ワシはのベルゾディアとの戦いで奴のとんでもない力を知った・・・。運命を食べると言うあってはならん力じゃ」


「運命を食べる、確かに命草とか呼んでる運命の糸を食べていると言ってました」

「うむ。やつはそれをエネルギーとして生きている」

「そんな危険な存在をなぜ世界は放置しているんですか?」

「簡単じゃよ。それを知ったものから殺され食われておるんじゃ。そうして関わった存在を消すことで、やつに関する一切の手がかりが存在しなくなる」


・・・何て恐ろしいことが・・・。

「では大賢者様はどうやって?」


「わしは呪いの悪魔に"やつが運命を喰う事が出来なくなる"と言う呪いを願った。対価になるものを求められ、ワシの命を申し出たが、運命を刈り取る力とは人の域を超えた神のような力、ワシの命では釣り合わんらしく契約出来なんだ」

ミューは息を飲んで聞いていた。


「次に考えたのはワシが生きて帰れる方法。やつから逃れることが出来れば倒す機会も生まれると考えた。ワシは悪魔に"わしの運命を食うことができない"そういう呪いを願った。すると悪魔はこう言った」

「お前の命と引き換えなら聞いてやれんでもないが結果お前は死ぬ事になるが良いのか?」

「そこでわしは考えた

ミューは強い口調で言った

「イヤイヤ、そこ考える所じゃないですよ、死んだら意味ないじゃなですか!」

「それは違う。わしが死んでもやつに関する情報は残るんじゃよ」


!!!

確かにそうなれば誰かがそれを知りベルゾディアを倒すキッカケになる。

しかしそれがいつの事になるのやら、はたまた、誰かが倒そうと動いてくれるのか・・・


「そして最終的に出た結論は"奴がワシの事を一切忘れる"そういう呪いを願った。そうしたら悪魔は聞いてきた」

「何を差し出す?」

「ワシの半分持っていけ。その言葉に悪魔は答えた」

「契約だ。命約は果たされり」

「その言葉と共にベルゾディアはワシの事を一切忘れワシの前からいなくなった。しかしそれと同時にある違和感に気がついた。ワシの左半分が無くなっていたんじゃ。ワシはてっきり命の半分を持っていかれると思ったんじゃが、やつは体の半分を持って行きおった」

・・・・・・。

ミューは何も言えずただただ黙っていた。


「その時ワシはなぜ体を持って行ったのか?命ならばこんな不自由な体にならず、生あるうちに事をなせるのにと思っていた」


「しかし現実はこのさまじゃ。誰一人としてベルゾディアの事を信じる者はなく耳も貸さず、結果討伐の機会さえ起こせなかった・・・。しかし、今わしは心から思う。あの時持っていかれたのが命でなくて良かった。おかげで愛弟子のお前にこの真実を伝えることが出来た。あの時持っていかれたのが命ならば今この場にわしはおらんじゃろう」


それを聞かされたミューは、この忌まわしい事実を、何百年も誰にも信じてもらうことが出来ず、孤独を抱えながら生き続け、受けてきただろう果てのない苦痛に悲しみを感じると同時に、それを成し遂げなければならないと言う熱い想いが湧き上がっていた。


「これも運命なんでしょう。私も異世界からの来訪者に巻き込まれ、ウラクムモロス・・・いや、ベルゾディアを倒さなくてはならないと言う波の流れに乗ってしまっているのですから」


「そうか・・・お主も既に奴に巻き込まれておったか・・・。ならば今日この瞬間の再会も必然という訳じゃな。ならばわしの取っておきをくれてやる!しばらくワシに付き合うが良い」


「・・・それは新しい口説き文句ですか?」

「何バカなことを言っとるんじゃ!!」

「そう思われるのは大賢者様が築き上げてきた人徳というものでしょう」

「ぐぬぬぬ・・・返す言葉がないわい」


ミューは姿勢をただし深深と頭を下げた。

「ご指導のほどよろしくお願い致します」


「全く、今の余計な一言がなければ美人で可愛い純粋なハイエルフなのに、余計な一言で価値は半分くそエルフじゃ」

「お褒めに預かり光栄ですわ」


・・・・・・。

「ほんとその憎たらしい所は、お主のトレードマークか?」


・・・・・・。

「言葉か理解できないなら理解できるまで殴って差し上げましょうか?」


ぶははははっ


二人は大笑いしながら大賢者の住む森の外れに向かっていった。



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