♂♂ドワーフの意地

ふー、ワシも長いこと剣を打ってきたが、世界の運命を左右するほどの大業物を打つのは今回で最後かのぉ・・・


ワシはそんな事を考えながらエルフの森の向こうにある極寒の地"グレビール氷界"目指していた。

あそこは辺り一面氷の塊で出来ており、そこが陸なのか海面なのかすら分からない、まさに氷の世界だ。

なんの為にそこへ行くのかと言うと、そこにある氷山や氷塊の中には何千年も昔に滅んだ竜族の肉体の一部が未だ当時のまま残っていると言う。

その中でも、体は闇のように漆黒で、目は金色に輝く始祖竜の血を受け継いだ極血竜と呼ばれる竜族の素材採取が目的だ。

爪や牙、鱗などの硬い部分は勿論だが、中でも伝説の物質と呼ばれている"シェリウスの涙"これが今回の最大の目的だ。


シェリウスの涙とは、始祖竜を倒した伝説の勇者"シェリウス"の名前のから来ている物質で、その物質の正体というのは始祖竜がシェリウスとの戦いで流した涙である。

その涙はやや粘質な液体で絶える事無く金色に輝き続けているという事だ。

この涙が凄いのは、いかなる衝撃も相殺する"衝撃相殺耐性"である。

その涙で作られた剣"破竜ゲルニクス"

この名前がついたのは後々の事らしく、ゲルニクスと言う天才鍛治師が打った竜殺しの剣だ。


ある古の書にその一本の剣について記されている。

"金色の目を持つ漆黒の竜から流れ落ちる涙には衝撃を100%反抗する効果がある"

つまり外からの衝撃と同等の抵抗力が発生し、その衝撃を相殺すると言う絶対硬度を生む物質という訳だ。

破竜ゲルニクスは黒鉄鋼をベースにシェリウスの涙を混合させた物とある。

シェリウスの涙を混ぜると加工が非常にむつかしく、古の書には鉄以外での加工はむつかしく出来なかったと記されていた。

故に、剣の硬度は最強で折れることはなくとも経年劣化による腐食劣化からその姿は今に残っていない。


わしはそれを超える剣を打つつもりだ。

ベースの素材にはミスリルを使う。

ミスリルは素材の硬度としては現状で言えば中の上くらいである。

硬度だけで言えばオリハルコンや、アダマニムウなどさらに上行くものもあるが同じ金属である。

その点ミスリルはエルフの地で魔力が結晶化したもの。

鉱物に近い魔法鉱石である。

金属と違い腐食や経年劣化することが無い。

加えて魔力との親和性もよく魔力による付随効果も期待できる。

これを一希仕様に仕立て上げ"破竜ゲルニクス"を超える剣を作るつもりだ。


この過酷な土地で探し出すのは極めて困難だが、過酷であればこそ、それだけ手付かずの地でもあると言うことにもなる。

わしの捜し求める物はかならずある。

絶対に手に入れて見せる。

そう信じて命をかけた素材探しをするのだった。

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