♂禁書庫
ミューステアは王宮の地下にある禁書庫に向かった。
ここには歴史の事実が記録されている。
公にできない事も記録として残してあるのだ。
この禁書庫、実は王の権限でも入る事は出来ない。
禁書庫は3つの魔力鍵で施錠されており、1つは人間の王が、1つはドワーフマスターが、1つはエルフの長が持っている。
それぞれの魔力で施錠されている為、単独では開ける事が出来ない仕組みだ。
王が禁書庫の閲覧許可を出したのは権限があるからではなく不正を黙認するという意味だった。
ハイエルフのミューステアは空間移動の魔法が使える。
この空間移動の魔法はミューステアだけの固有魔法でそれを知っているのは王とリョウマだけ。
なのでミューステアが魔法で禁書庫に入れるとは誰も思ってもいないのだ。
ミューステアはエリクサーを1本飲んだ。
このエリクサーと言うのがものすごく高い。
魔力即時全回復と言う神的な回復薬だ。
原材料と抽出技術が極めて高く抽出にかかる時間もとにかく長い。
それゆえ異常な価格で市場に現れる。
よぉし、魔力全回復"クロノスドアー"
ミューステアはシレーっと禁書庫に入った。
やっぱりこの魔法、魔力が全回復してても相当きついよぉ・・・。
意識こそあるがフラフラだ。
中に入ったのは2度目だけど中の書物を見て回るのは初めてかな。
禁書庫と言っても本以外の物もある。
前の時は王と勇者様の武器探しをしている時"伝説の剣デュランダルが禁書庫に眠ってるはずだ"とか言い出して中に忍び込んで確認したけどそれらしいものはなかった。
今回の目当ては真実の歴史。
それらしい本を目当てに当たりを見回す。
これは表に出せない物ばかりですね······。
"キメラの作成と育成記録"
"禁呪X""禁呪Y""禁呪Z"
"エルヴァニウムの生成記録"
エルヴァニウムの生成記録・・・・・・。
世の中には忌まわしい事がこんなにあるんですね······。
こんなものばかり読むから堕ちてしまうのです人間たちは・・・・・・。
と、物思いにふけってる場合じゃないですね。
さっさと歴史に関するものを探してしまいましょう
"聖魔大戦の記録"
このへんですね。
- 魔族 -
"魔族とは魔力で生み出された生物。一般的な生き物のような繁殖は出来ず、魔力でゼロから生み出す事で増えていく。基本的には自分以上の強さの魔族を作り出すことは出来ない。ただ、特別な条件を揃えれば強力な魔族を作り出すこともできるらしいが、その条件、方法は不明である。確認は出来ていないが中には繁殖能力を持つ魔族もいるとの噂もあるが確認された例はない。ただ、女魔族の存在は確認されている。人間の女と同じ存在であるかは不明である。
- 魔界 -
魔族は魔界と言う人間世界とは異なる世界に生きるものらしい。そこには未知の資源や技術、人間界にはない無限の可能性があると思われ、人間はなんとしても魔界を手に入れたいという思惑があった。捕縛した魔族を拷問にかけ情報を聞き出そうとするも、この魔族はたまたま人間界に迷い込んだだけのようで魔界に帰る方法などは分からなかった。更に拷問をつづけた。魔族は人間に扮する事ができるらしいと言う事を知る。見た目には全く区別がつかないようで、我々人間にはそれを見抜く事は出来ないようだ。つまりピンポイントで魔族を捕縛するのは難しいという事になる。そこで我々は1つ噂をまいた。人間は魔界を侵略し人間たちのものにすると・・・。瞬く間に噂は広がり魔王の耳に入ったようだ。魔族の方から魔界の門を開け人間界に現れたのだ。捕まえた魔族の話では魔界の門は物理的なものではなく魔族の魔力で開け閉めする、世界と世界を繋ぐパイプのような物らしく"ココが入口"と言う場所はないらし。そして我らは勇者をはじめとし、やってきた魔族を一掃する。捕まえたどの魔族からも魔界の扉を開く方法は得られなかった。この状況から推察されるのは魔界の扉を開けることが出来るのは魔王もしくはそれに相当するものだけではないかと言うことになった。魔王は女王に食われ、その女王も死んだ今、魔界への糸口は閉ざされてしまった。
なんて言うことかしら・・・・・・
仕掛けたのは我々人間の方だったなんて・・・・・・。
でも、これであらかた腑に落ちない点に納得が行く。
魔族が攻めてきたと言うにはあまりに不自然な戦い方だった。
しかも人間界に大きな被害はほとんどなかった。
被害といえば戦って死んだ人達くらいのものだった・・・。
とりあえず王に報告しないと。
その頃リョウマはせっせと何かを書いていた。
縦に横にとたくさん線を引いている。
そう、手作りの婚姻届だ。
ハッキリと覚えてないけどほぼ似た感じで出来上がった。
残念なのは自分の名前がかけない事だ・・・・・・。
文字はあえて日本語で書いてある。
これ見て何か思い出してくれたらいいんだけどな・・・。
とりあえず今できることはこんな事しかないか。
あとは魔法が使えないから、とにかく剣の鍛錬だな。
と、そうだ武器。
武器を買い換えないとこれじゃ次戦闘になったらさすがにやばいよな・・・。
ちょっと武器屋に行ってくるか。
いや、武器屋に行っても王宮の物とそんなに大差はない気がする。
・・・王様に相談してみよう・・・。
ミューステアは王の元へ報告に行っていた。
「ミューステアよ禁書庫はどうだったか?」
「はい、予想していた通り人間側が魔界欲しさに仕掛けた戦いだったようです」
ミューステアは木の板に向かって魔法を唱えた
"トーレス"
木の板に禁書庫で読んだ本の一部を写した。
「だーーミューステアよ、そんな危険なことをするのは止めてくれまいか」
「王が読んだら燃やします。ご安心下さい」
「ワシはその発想が恐ろしい・・・・・・」
「大丈夫ですよ!私ハイエルフですから!」
全くハイエルフはなんでもアリなのか・・・・・・
と、嘆いているとリョウマが現れた。
「王様、お願いが」
「リョウマさん!」
「ミュー戻ってたんだね。てっきりしばらく留守にするもんだと」
「そうですね、少し調べないといけないことが出来ましたので留守にはなりそうです」
「そうですか。お気をつけて!」
「リョウマ、ワシに何か用じゃなかったのか?」
「あ、王様、俺の武器がこんななので新しい武器が欲しいんです」
「兵舎にある物では不満か?」
「不満と言うよりか不安です・・・。先日少しオークと戦っただけでこれなんで・・・」
「で、ワシにどうしろと?」
「武器屋で買えるものは王宮の物とそんなに大差無いように思うので、ドワーフ族に武器を作って貰うことは出来ないものかと思いまして」
「そうじゃの、普通にお願いしても作っては貰えんだろうから、ワシが一筆書いておく。ドワーフ村のマスターに手紙を渡すが良い。直接会うことは出来んじゃろうから、まず鍛治工房におるマグタフと言う鍛治職人に会うがよい。マグタフにも紹介状を書いておくので渡すが良い」
「ありがとうございます」
「それなら私も近くまでご一緒します!」
「良いんですか?」
「はい!私の用事もドワーフ村の近くなので」
「じゃ明日の朝に出発します」
「分かった。手紙はそれまでに用意しておこう」
リョウマとミューはヘチマ村に帰ろうとしたら王が待ったをかけてきた。
「ミューステアよ木版を燃やしてから行ってくれ・・・・・・」
「あ・・・忘れてました」
「それはなんなんですか?」
・・・・・・。
「リョウマも知っておいた方が良いじゃろ。決して他言してはならんぞ!」
「は、はい・・・」
そうしてリョウマは禁書のコピーを読んだ。
「なんか歴史が歪められてますね・・・・・・」
「・・・・・・」
「まぁでも、済んだことは仕方ないですよ。今からどうするかじゃないですか?」
リョウマは、ヘラヘラしながら言った。
「お主は楽観的だの・・・・・・」
リョウマの前では王の威厳もくそもあったもんじゃない。
ミューステアは強い口調でこう言った。
「しかしこれはチャンスでもありますよ。人間は愚行を悔い改め過ちを正し新たな道を歩んでんでいける種族です。それに、ここに魔族と仲良くしたいって言う人がいるんですから」
ミューはリョウマに微笑んだ
「そうだの・・・なるようにしかならんか・・・。しかし魔族の方はそうはいかんだろうな・・・・・・」
「少なくてもレーティアと言う魔王の娘は人間に復習する気満々でしたからね」
ミューは困った顔で言った。
「とりあえず魔族が攻めて来た時の為に防備は完璧にしとかねばならんの」
「あーなんかもどかしい!手が届きそうの所にいるのにちっとも手が届かない」
「焦っても仕方ないですよ!」
「はい・・・」
「とりあえず出発の準備します」
「まてミューステア!木版を燃やしてから行ってくれ!」
「す、すいません。忘れてました」
"ブレイズ"
木版はボワッと燃え上がり消えてなくなった。
そうして2人はヘチマ村へ向かった。
「とりあえず村長に声掛けときましょうか?」
「そうですね」
2人は途中でお菓子を買い手土産にした。
「村長、明日ドワーフの村に向かう事になったから」
「そりゃまた急じゃの。なにかの任務かえ?」
「いや、武器を作ってもらおうと思って」
「ほう武器か。そうじゃ思い出した!武器と言えば先代勇者様から預かっておった物があるんじゃ」
そう言うと村長は奥の物置の方へ行ってゴソゴソ探している。
「あったあった!これじゃ」
それはとても高級そうな箱だった。
40cmくらいの長さだろうか?
ひょっとしたらすっげー短剣とかだったらどうしよう。
「いいか開けるぞ・・・・・・」
・・・・・・。
リョウマと村長は目が点になった。
「なんだこの四角いのは・・・・・・?」
ミューはその四角い物体をクルット1周見ていた。
「これはインゴット・・・ですね」
「インゴットって?」
「いわば材料の為の金属の塊ですね。なんの金属でしょうか?」
「村長が軽々持ってくるくらいなんで重くは無さそうだな」
村長は椅子に腰かけながら目をつぶって思い出そうとしてる様だ
「・・・あかん。忘れてもうた」
リョウマはその金属の重さを知りたくて手に取った。
その瞬間リョウマは恐ろしいほどの重圧を感じ、まともに呼吸が出来なくなっていた。
ハァハァハァハァ・・・・・・
「リョウマさん?どうしました?」
「なんかこれに触れた瞬間意識が潰されそうなくらいの窮屈な感じになって、それでいて意識が遠のくような感じが・・・・・」
ミューもその金属を手にした。
その瞬間リョウマと同じ感覚になる。
「村長、これ本当に勇者の様からの預かりものなんですか?とても危険な香りがしますよこれ・・・・・・」
「何とかニウムだったかの?」
「!!!」
「もしかしてエルヴァニウムですか?」
「おお!確かそんな感じじゃった!」
「本当ですか?」
突然ミューステアの雰囲気が変わった。
怖い、とても怖い。
ミューステアから感じる威圧感はまるで殺気そのものだった。
恐怖に潰されて死んでしまいそうだ・・・。
「ミュー!一体どうしたんだ!?」
「はっ・・・」
ミューステアは我を取り戻した。
「す、すいません・・・私とした事が・・・・・・」
「その、インゴットだっけか?それが何かあるのか?」
「エルヴァニウム・・・・・・それはエルフの生命力と魔力を結晶化させた物なんです」
「なんだって!?」
「今この世界で1番硬いとされている金属はミスリルです。ただ存在数が少ないためミスリル製の武器は希少です。ちなみに先代勇者様の剣はミスリル出できてます」
「ミスリルを超える金属"アダマニウム"しかしこれは伝説の金属。実際存在数しません。少なくても人間界には・・・・・・」
「魔界にはあるのか?」
「分かりませんが、魔界になら存在するかもと言う可能性と想いが、魔界制圧を目論んだ理由の一つにあったのかも知れません」
「そのミスリルの硬さの秘密は魔力にあるのです。ミスリルは銀と魔力が融合し生まれた新たな物質なんです。どう言う原理なのかは全く謎で未だ人工的に生成する事が出来ません」
「しかしミスリルは、エルフの生息地にしか存在しない事からエルフの魔力と関係があるのでは無いかと言う仮説が生まれたのです」
「そこで人間は秘密裏にエルフの魔力を搾取し実験を重ねたと言う残酷な裏の歴史があります」
「その実験の中で偶然に生まれたのが"エルヴァニウム"金属と言う触媒を介さず、魔力と生命力のみが結晶化された物・・・・・・。当然それにより、そのエルフは命を落とし、実験していた人間も死にました。それも跡形もなく蒸発し消えてなくなったのです。エルフの強大な魔力と生命力を、ただの人間に扱えるわけが無いのですよ」
「その事も禁書庫の記録にあったんですか?」
「その禁書庫にある"エルヴァニウム生成記録"は私書いたものです」
「!!!!」
「???」
リョウマはあまりの事実に驚きを隠せないでいるが、村長は何を言ってるのかさっぱりわかってない様だった。
「村長とにかく明日は朝早いので今日は先に失礼します」
「おお、そうか」
「私も失礼します」
「気をつけてな」
2人はそうして港のそばの宿に向かった。
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