第124話 だる

「だるい」

「だるい」


「どうでもいいですけど、『だるい』って方言らしいっすよ。確か群馬」


「ほんとどうでもいい情報。推薦取れてるし、出席日数ちょっとぐらい誤魔化してくれないかな。もう卒業まで無駄に登校したくない」


「成績だけじゃなくて生活態度が真面目だからこそ学校が推薦してくれるんすよ。そんな我儘通る訳ないでしょ」


「わかってるよ? でもさ? なんで一か月以上会ってないクラスメイトに近況報告しないといけないの? 『夏休みどうだった?』とか聞かれても『うーん、普通』って作り笑いしながら返すの苦行」


「えー……、ただの社交辞令に対応できないとか、センパイの将来が不安なんすけど」


「キミこそ、なんで始業式がだるいのさ。バスケ部エース君ぐらいしか友人いないでしょ?」


「単に起きたい時間に起きれないのと、登校がだるいからです」


「私より酷い理由だね。社交辞令云々で馬鹿にされた私って一体」


「そもそもっすよ。午前に始業式やって、そのまま午後に帰宅って。いや午後に始業式やれって思いません? 久しぶりに早朝に起きてめっちゃだるいっすわ」


「どっちも変わらないけど? 私、夏休みもずっと6時には起きてるし」


「……は? え? 休みの無駄遣い?」


「むしろ有意義と言ってほしいのだけれど。生活リズムを崩さないのは健康に良いの


「あえて不健康な行動ができることが贅沢なんですよ。ああ、勿体ない。てかだから朝から意味ない連絡来てたんすね」


「後でキスしてね。意味ないって、コラ」


「断ってもどうせ来るくせに『今日家に行くね』みたいな連絡を朝に貰って、スマホの振動で起こされる身になってください」


「逆に聞くけど、連絡なしでキミの家に行ったらどう思うの?」


「別に。連絡があろうがなかろうが、出迎えるだけなんで」


「その、私だって一応女の子だし? 見られたくないものを自分の部屋から隠すとか? そういうのないの?」


「ほぼ毎日うちに来ておいて気にするわけないでしょ。てか俺の家にセンパイに見られて困るものは……、親父のプライベートな部分ぐらい?」


「私も流石にキミのお父様のプライベートは興味ないね。てか、キミってほんとそういうの興味ないの?」


「そういうの、とは?」


「なんというか、その、えっちなの関連」


「正直に言えば、ないわけないっすね。でも、とはいえ毎日のようにセンパイがうちに来るので抜かりはないというか」


「つまり、私が帰ったあと何かしらで抜いたけど、抜かりはないと」


「センパイの頬って、ほんと艶やかですね。叩いた感触が柔らかい」


「ビンタして褒めるの、サイコパス!?」


「反対の頬は叩かないで『頬ちゅっ』するんで、安心してください」


「往復ビンタされるような事だった!?」


「センパイから下ネタされると、なんかムカつくんすよね」


「それってセンスないってこと? いや普段下ネタ言うことないからそりゃそうだけどさ」


「特に理由はないっすね。ただ、ムカつくだけっす」


「えー……、理不尽。私に清廉潔白を求めてる?」


「いやもうセンパイは桃色ピンク脳って思ってるんで大丈夫です」


「大丈夫の要素ないね? むしろ貶されてるね? なのにさっきの発言で頬叩かれたの? なんで?」


「……なんですっかね?」


「いや……、えー……?」


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