第122話 安眠
「まず、確認させてください」
「いいけど?」
「ここ、俺の家、俺の部屋、俺のベッド」
「そうだね」
「なんでセンパイがいるの?」
「連絡しても電話かけて反応ないから」
「スマホ見てもいいっすか?」
「どうぞ?」
「……今11時かあ。ちょっと寝過ごしたっす。けど、けどね? いや最初のセンパイからの着信7時とか寝ててもおかしくなくね? てか5分置きにかけてくるの怖いわ!」
「これだけ鳴らしても返事ないんだから、キミに万が一があるかもって思うの、普通じゃない?」
「普通じゃないっす。せめて1時間……でもおかしいわ。普通がなんなのかわからなくなるっすけど、この場合はこっちから掛け直すなりなんなりが普通だと俺は主張したいっす」
「却下」
「ええ……。まあ、それでもさ、俺の家に来るのもおかしいし、そもそも、なんでベッドに潜りこんでるんす?」
「……寝顔が可愛かったから。なによ、文句あるんですか寝坊助」
「文句というか、いや常識的な話をさせてください。『なんで起きたら目の前にセンパイの顔が映るんですか』」
「キミが無防備に寝てて、つい。いつも物音立てるとすぐ起きちゃうでしょ?」
「確かに最近敷布団買い替えたんすよ? あと枕も。めっちゃ安眠するからついね?」
「だからなんとなくね? ベッドに潜り込んだわけ」
「で、その結果が?」
「凄いね! 横になったら力が抜けてそのまま、すやぁっと……」
「でしょ? なので最近寝過ぎる事が多くて。というか、今までずっと寝不足だったのかもしれません」
「私もそうかも。キミのベッドに潜り込んだら、急に眠気がね?」
「うん、だからって普通は人のベッドに潜り込まないっすよね? センパイの道徳観と倫理観どうなってるんすか?」
「……、秘密」
「いや初等教育からやりなおしてきてください。絶対どこかおかしいので」
「いやいや。可愛い可愛い後輩君が普段の仏頂面から想像もできないぐらいゆるっとした寝顔をしてるんだよ? しかもよだれまで流して。そしたら『どんだけ寝心地がいいんだろうか』って思うのは当然だと思うの。あとよだれ舐めたい」
「生まれ直して、きちんとした教育を受けてくださいね。あと最後は冗談でもきついんでやめてください」
「ふふ、生まれ直す時は一緒だからね」
「冷たい声で言わないでください。ヤンデレって知ってます?」
「人を好きになる事自体が病だと思うから、恋する連中はみんなヤンデレだと思う」
「うーん、極端! センパイってそういう意味だと正常ですよね。絶対に愛だ恋だってならなさそう」
「ふふっ、じゃあ試してみる?」
「ん? え、ちょっ」
「一緒のベッドでお互い抱き合ってて、何もないわけないよね?」
「うん、はい。だからいい加減離れてって意味で道徳とか倫理の話をしてるんすけど」
「その舌噛み切る」
「普通にホラーだわ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます