第109話 気分次第
「……、雨っすか」
「なんかじめっとしてるし寒いなあって思ったら、こんな天気だったんだね」
「とりあえず、朝食にします?」
「あ、こら。寝癖直して」
「センパイも浴衣、着崩れてます」
「朝から食べるには、ちょっとボリュームが……」
「昨日の食事もかなり量ありましたしね。俺も結構きついっす」
「チェックアウトが11時だし、こんな天気だし、ぎりぎりまでごろごろしてようか?」
「折角だし、朝風呂行ってきますね」
「ダメ、そしたら一緒にいられないじゃん!」
「……、どうせ昼飯までホテルのラウンジでごろごろするんすよ。別にちょっとぐらい」
「や」
「センパイなんか、いきなり精神年齢だだ下がってません?」
「私、桜」
「はあ。そうっすね? で、センパイ、ちょっと離れてもらえます? 浴衣越しの感触、やっぱ色々と……」
「私の名前、センパイじゃない。桜」
「……。桜さん、ちょっと離れてもらえますか」
「や」
「はあ……。『桜、ちょっと離してくれる?』」
「ぎゅってしてくれるならいいよ」
「前から? 後ろから?」
「もちろん前から。颯君の膝に乗ってね!」
「キスとかなしだからな」
「うん。その代わり、ずーっとぎゅってしてね」
「……めっちゃ恥かしいわ」
「桜、急に冷静になってんるだよ。ホテルのランチまで1時間、ラウンジで暇つぶしだからな」
「ンッッッ!! ダメ、それは、その、外じゃだめ! 私、センパイ!!」
「いやー、可愛かったっすねえ。センパイずっと俺の膝の上で――」
「これ以上煽るなら5分ぐらい喋らないから」
「ずっと俺の腰に手を回して胸元で気持ち良さそうにしてるんだもんなあ。甘えた猫みたいだったすよ」
「――」
「んっ」
「ンッッッッ!?」
「センパイ、耳が弱いんだから、顔逸らしちゃダメっすよ。噛みたい放題っすよ?」
「――――」
「しかしまあ、今日はこのままずっと雨っぽいっすね。昼の後も今日も泊まるならこのホテルのラウンジ使っていいらしいし、チェックインの15時までここで過ごしますか」
「――――――――」
「海と山の幸御膳、めっちゃ楽しみっすわ。昨日のうちに頼んでおい良かったすね。昨日、どこかで食べるかここで食べるか悩みましたけど、ホテルでランチが正解でした」
「……普通にじらすの、やめて?」
「まだ3分も経ってないっすけど。カップラーメン以下ですけど? センパイの『俺と喋らない』って覚悟、その程度っすか?」
「うっさい! ちょっとぐらい見栄張らせてよ、今更とか言わないで!?」
「そんな見栄でセンパイとお話できないの、嫌っすよ。あと、触れづらくなりますし」
「いっぱい話そ? たくさん触って? ごめん、見栄とかどうでもいいね。頭撫でて欲しい」
「喜んで。センパイ撫でるの大好きですから」
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