第108話 おはよ

「おはよ、まだ6時ぐらいだし二度寝してもいいよ?」


「俺の頬を突きながら言う人の台詞ですか。安眠妨害ですよ」


「どっちが? 私の事ぎゅっと抱きしめてて、抱き枕代わりにしてるキミが言うの?」


「……痛かったですか?」


「ん、悪くなかった。起きた時、なんか凄く幸せな気持ちになってたよ」


「俺も、起きてすぐセンパイの顔見れて嬉しいっす。このままでも?」


「朝食は7時からだしね。1時間ぐらい、このままだらだらしてもいいかもね?」


「じゃあ、お言葉に甘えて――」


「ンッ。はぁ……、いきなりキスはちょっと驚き」


「旅行の時だけ、っすから。ちょっとぐらいハメ外しても」


「『好き』」


「ええ、俺も『好き』です」


「雰囲気って大事だねー」


「ですね。……撫でてもいいですか?」


「どこを? 胸? 太もも?」


「えっと、普通に頭ですけど……」


「雰囲気に流れたり酔ったりしている風なのに、ガードが固いよね」


「むしろ逆です。ちょっとでもガード崩すと即死にます」


「そんなに私の体、魅力的?」


「嘘偽りなく言うなら、センパイはとても魅力的です。一般的な男性論ではなくて、あくまで俺から見たら、ですが」


「ふふっ、満点な回答。ご褒美に、キスしてあげる」


「センパイはそう言って、どうせ頬とか――ッ!?」


「ちゅっ……、んっ、体は男らしいっていうのかな、がっちりしてるのに、唇はとても柔らかいよね。好き、つい……舐めたくなる」


「んはっ、ちょっと、センパイ? 朝からいきなり、んんっ!」


「ちゅはっ……。いきなり? 朝から? 関係ないよね。この状況で、キスだけのほうがおかしいよね?」


「……」


「キミだって、私を抱きしめる手を離さないし。いいでしょ? 『折角の旅行なんだし』」


「センパイ……。もっと、甘えてもいいですか?」


「ん、おいで。じゃないともっと私からするからね」


「俺も、センパイの唇好きっす。すげえ、甘いんです。ずっとずっと触れていたい」


「もちろん私もだよ。でもこれは『旅行だから』ね」


「うん、わかってます。だからこそ、もっとセンパイと触れ合いたい」


「言ってることと、実際の行動が逆なのがキミらしい。いいじゃない、勢いでもっと色々なところ触っても」


「俺、今十分満たされてます。だからかもしれません。もっと、っていう気持ちが全然ないです。ずっとセンパイを抱きしめてキスして、それだけで俺の人生は幸福だって胸を張れます」


「誘っておいてなんだけど、キミならって思ってたけどね。でも、そう言ってくれるなら凄く嬉しい。私、キミに凄く大事にしてもらってるって思える」


「こんな事言ったら、もっと許されないと思うんですけど……。言わせてください。『愛してます』」


「ん、私も『愛してるよ』 雰囲気って怖いね? ますます頻繁に『旅行』したくなってきたよ」

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