第106話 箱根のご飯は美味しい
「センパイ……その、下着付けてますよね?」
「え? 下は履いてるけど、ブラは付けてないけね」
「んんーっ! じゃあせめてきちんと浴衣着てください。というか今から晩飯なんすからブラジャーはしてください。ちょっと緩んでて、色々と色んな意味でダメです!」
「そう? 気にすることでもなくない? この旅館おじいちゃんおばあちゃんばっかだし」
「それでも! いいから! 窮屈とか色々言い訳するんでしょうけど、俺の前以外ではそんなのダメっす。ダメダメっすから!!」
「おやー、嫉妬的な? 独占したがりなのかなー?」
「……目の前に、素敵な美人が居たら男はそれぐらいはします。あとセンパイはポンコツなんで、うっかり乳を曝け出さないか不安です」
「ほんと、いつも一言多い。でも、うん、キミ以外の男に私の体を見せたくないし、着替えてくるね」
「いえ、浴衣はそのままで」
「はい?」
「お互い、浴衣で温泉街のホテル内レストランで夕食って、凄くいいと思いません?」
「出たわ、このフィクション恋愛脳め。いいよ、プラ付けて、ちゃんと帯締めたらレストランに行こうね」
「……改めて確認ですけどこのホテル、一泊二食付き1人5000円って聞きましたけど、マジっすか?」
「正確には『私はパパの被扶養家族だから5000円。キミは10000円だけど、パパが半分出してくれたから実質5000円、かな」
「いや……色々突っ込みどころ満載ですけど、まず5000円も出されてる事に驚きと、仮にあんな広くて綺麗な和室と、広い温泉しかもサウナ、露天風呂もあって、一泊5000円? さらにこの豪華な料理なんなんすか?」
「所謂保養所だよ。パパの会社? 健康保険? が提供してるところ。普通は泊まれないところだよ。あ、ドリンクどうする?」
「じゃあ『箱根ビール』で」
「グラス2つお願いします」
「……ちょっと、え? マジっすか? 冗談ですよ?」
「らしいので、オレンジジュース2つください」
「限度があるでしょ。流石にお酒はダメですって。センパイの親御さんにも迷惑かかりますよ?」
「キミがこういう時ヘタレなの知ってるし。あと生真面目なのもね」
「俺が本当にそのまま注文させたらどうするんすか」
「どうせもう雰囲気に酔ってるし、あとは責任取ってね? としか」
「雰囲気でって、俺、そういうの――」
「嫌いでしょ? だからそういう意味では信頼してる。あと、多分だけど、私お酒飲んだら酷い事に成ると思うし。そんな私を抱いても、フィクション恋愛のキミは満足しないでしょ?」
「なんか色々言われたい放題ですけど、センパイを抱くなら……って何言わせんだ!」
「ほら、そういう所。雰囲気に酔ってる。私はまだシラフだから、いつでもおいで?」
「――、温泉旅行でホテルで、いやシチュエーションとしては最高じゃね」
「何ブツブツ言ってるの、追加の前菜が来たよ。あとジュースも。かんぱーい」
「……完敗」
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