第90話 怒ってもいいよね
「私、怒ってます」
「あ、はい」
「生返事禁止、スルー禁止!!」
「えっと怒ってる!って言うのに俺の腕にいつも通りしがみ付いてるの、なんか違くないっす?」
「それはそれ! これはこれ!!」
「ああーそうっすか。んで、何がどうしたんすか?」
「キミが不良って言われてる事!」
「……概ね事実じゃないっすか?」
「ほっとんど事実と反している。誰だ! そんな嘘流すの!?」
「まあ俺が喧嘩してる場面を見た人じゃないっすか? やる時はほとんど一方的ですしね」
「私は悔しいし悲しいの。だってキミはいつだって助けるために行動するすっごい子なんだよ? それを一部分切り抜いて、喧嘩してるから不良なんて言われるの、ほんっとムカつくの!!」
「じゃあ、今後は――」
「喧嘩するなって話じゃない。むしろして。キミが喧嘩をする場合は前にも常々言っていたように、誰かを助ける為だって。だから、見て見ぬ振りはやめて」
「いやでもうちの学校は喧嘩とは無縁の勉学至上主義でしょ。喧嘩一回でもすれば、まあそう思われても仕方ないっていうか」
「だから! もう! ほんっと! うんざりなの! もうなんなのよ!! いじめられっ子はずっといじめられてろって? いじめっ子は痛い目見なくてもいいの!? おかしくない!!??」
「センパイ落ち着いて。飴ちゃん食べる? 龍角散だけど」
「いっぱい叫んだあとに貰う! 喉に良いからね! って、そうじゃなくて!」
「俺、別に不良扱いでもいいっすよ? 何度か話しましたかと思いますが、俺の友人に不良って言われてる奴そこそこいます。じゃあ不良だからって何とも思いませんよ。友人は友人、友人が不良。それだけでしょ」
「でもさ、不良はなんていうか」
「センパイこそ不良の定義を考え直してください。俺からすればいじめっ子こそ不良です。でもセンパイはいじめっ子イコール不良って考えた事あります?」
「……ない」
「じゃあいじめっ子に暴力振るう奴が世間的にどう思われます? いじめっ子はただちょっと過度なスキンシップいずれは自殺に追い込む陰湿な行動に対して、真正面から殴りかかるのを世間は不良ってなります」
「ちがっ、全然違う!」
「ニュースとかネットの情報だと、結局いじめっこ、いじめられっ子、不良、そんな単語でしかないんです。だから、俺は別に気にしてません」
「それはあくまで世間的なって話で、学校内じゃ全然違うでしょ? キミが不良だから悪い奴って何も知らない奴が陰口叩いてるの! 私は耐えられないの!!」
「俺はセンパイに『格好悪い事はするな』って励ましてもらいました。だから、『格好良いこと』『誰かを助ける事』をしたいと思ってます。今は暴力しかないけど、でもそれで1人でも助けて、格好悪い事やってる連中を更正させればと思ってます」
「ばか……。ばかじゃないの……」
「俺、見栄っ張りなんですよ。だから、格好よくなりたいんです」
「もう、十分格好良いっての」
「そう思ってくれるなら、ご褒美ください」
「……どうぞ」
「んっ。……『シュレディンガーの口付け』です」
「普通にキスじゃん……。ほんと、ほんと、もう……! 龍角散の味が凄いする……」
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