第91話 やっぱり納得できない

「俺の親友を馬鹿にした……あれ、名前なんだっけ」


「どうでもいいでしょ、3on3で白黒はっきりさせよって話でしょ」


「あの、巻き込まないで?」


 センパイと純に連れられて、バスケ部部長と見知らぬ2人とバスケの3on3をする事になった。

 ええ……なんでそうなるの。


「颯、いつも通りでいい。いや、ストバスの時みたいでいい」


「おっけー、親友君。期待してるよ」


「いや全然わかってない……おおっと」


 純からパスを貰ったのでそのままスリーを打つ。

 うん、手に馴染んでる。

 

 すぱっとネットの音が鳴り、まず3点。


 次は相手のターン。

 バスケ部部長が俺がマークしている奴にパスをした。

 このままドリブル、ないしパスワークでもするかと思ったが、何故かそのままシュートを打った


「よいしょっと」


 高さもない。フェイントもない。技術もないただ投げるようなシュートを、純に届くように叩いた。

 純はそのボールを待ってましたとばかりに受け取り、ドリブルで中央から突っ込む――とみせかけ、相手を引き付けてセンパイにパスを出した。

 完全にフリー。このままシュート。

 と、シュートモーションで俺にパスを出す。

 万が一と思いゴール下にいた俺はそれを受け取りダンクを決める。


「それっ」


 バスケ部部長が再びシューターに即パスを回す。

 しかしシューターは予想外とも言える速攻パスを受けるのが精一杯だった。

 体制を崩しつつあるならば、シュート以外、ドリブル、パス等々が選択肢に入るだろう。

 なのに不恰好な体勢で無理矢理スリーを打つ。


 俺はこんな惨めなシュートは入らないとゴール下に駆け込む。

 だが既に俺より身長の高いゴリラ君がリバンウドに備えていた。


 俺が今からゴール下に行って、勝ち目あるか?


 なんて考えている間にもシュートがリングに弾き返される。

 長身の男はすぐさま跳躍した。


 ……え? 馬鹿なの?


 長身の男がボールに触れる前に、センパイの手がボールを軽く弾いた。

 当たり前だ。一番ボールに触りやすいタイミングにセンパイが時間を置いて飛んだのだから。

 そりゃあリバウンドでボールを掴めたら最高だろうけどさ。

 あのタイミングは素人丸出し。

 ボールの最高点と自分のジャンプの最高点が一致するタイミングなら、170cmちょいのセンパイが勝つに決まってる。


 弾かれたボールを、まるで予想していたかのように純が受け取り、そのまま俺にパスをする。


「やっちまえ」


 そんな言葉が聞こえた。


 相手3人は急いでゴール下に戻るが、俺は淡々とスリーポイントエリアに下がる。

 バスケ部部長だけが反応したが、お構いなくゴールにボールを放つ。

 あ、今一番いいシュートしてるわ、これ。




 このまま、ただ実力差だけでねじ伏せた。

 部長さんは最後まで頑張ってけど、残り2人は諦めて投げやりなプレイを続けてきた。

 それすらカバーしようと踏ん張る部長さんが、なんだか可哀想だって思えてきた。


 

 ゲームセット。

 純たちの圧倒的勝利。

 つかなんで俺とセンパイ巻き込まれてるんだっけ。


「ありがとう欅君。うちのチームが榊というエースに頼りきりなのがわかった」


「え? ああ、いや純がいなきゃ俺らだって勝てるかわからないっすよ?」


「あえてスリーをメインにする君に言われると、誇らしいね」


 あ、やっぱばれてた?

 

「ほら、お前ら。陰口言ってたの謝れよ」


「さーせん」

「すんませーん」


「てことで」


「てことで、部活にも入ってないし、身長と性別差あるのにボロ負けしたこいつら、当然今後練習試合も出れないし、ずっとモップ掛けでいいですよね?」


 あ、やば。ダークサイド純が出てきた。


「いやそこまでは……」


「まあ他の部員が戦力にならない考えてもいいですけど。学年とかで優遇なんてありえないですよね? だって、180cm後半の男子が170cmの女子にリバウンド負けるとかありえないでしょ? 記念に試合出たいお気楽部活ならはっきり言って下さいよ。俺辞めるだけなんで」


「いやでもお前ならポイントガードとして……」


「俺、不良のお友達なんでえ。勉強が大事で部活なんてどうでもいい連中と? 仲良くできないんで?」


「お前なんてこと――」


「うるせえよ。お得意のスポーツも勝てなくて、陰口で人を貶めてる連中なんか潰れろよ」


「あのね……ごめん名前知らないや。私の大切な人を悪く言われるの、ほんと我慢できないの。あんたが関係なくても、どうでもいいの。七不思議に一個追加してあげようか? 『正義の味方を貶める悪人』って。当然、悪人はあんた達だけど」




「えっと、その」


「いやー、久しぶりに颯とチームプレイできて楽しかったあ!」


「ほんとびっくり。サインとか無いのに、キミとバスケ部エース君の動きが完璧!!」


「いや、そうじゃなくてさ」


「うっさい。これはただの八つ当たり」

「この後……『ぎゅっ?』『ちゅっ?』それとも……。、まあそんな感じだから!」


「はあ、まったく」


 結果として、俺が不良っていう噂はなくなって、俺を馬鹿にすると怖い人が出てくるってなりましたとさ。

 悪化してんじゃねえか!

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