第85話 七不思議

「うちの学校にも七不思議的なものがあるらしいよ」


「へえ、初耳です。俺の周りではそんな噂的なのあまり聞きませんね」


「キミの場合、いやなんでもない」


「友達少ないだけですかね、はいはい。んで、どんなのがあるんす?」


「実際は7つもないらしくて、私が聞いたのは『トイレの花子さん』と――」


「ちょっと待ってベタ通りして化石、古文? なんだろ、1週回って流行?」


「キミにそうも言わせるほどにあれなのかな」


「多分、俺のお袋とかが学生の頃流行ってたレベルかと」


「ちなみに内容は『放課後、誰もいないはずの学校の女子トイレで泣き声がする』」


「微妙に違うというか、シンプルというか」


「『その泣き声のする戸をノックすると、助けて、と返ってくる』」


「ちょっとホラーっぽい」


「『すると、ノックした女子生徒は戸を蹴り破り、泣いてる女子生徒を抱きしめた』」


「ん?」


「『泣いてる女子生徒は校内でイジメにあっていた子でした。正義感の強い戸を蹴破った女子生徒はイジメの根本解決の為に奮闘し、行く行くは生徒会長となり学校内のイジメ問題は解決されました』」


「ごめんちょっと何言ってるのか全然わからないっす」


「これ以後『辛い目に合って1人ではどうしようもない時、放課後トイレで泣くと正義の味方が助けてくれる』という噂が消える事はありませんでした」


「なんかちょっと良い話っぽくなってないっす? 不思議要素どこ?」


「そうねえ。私にはあまり実感ないから憶測だけど。辛い時に誰か助けてくれるって結構楽観的な考えでしょ? なのにトイレで泣いていれば誰か助けてくれるって、不思議じゃない?」


「そこまでは思ってねえよ! 助けて欲しいわけじゃなくて、ただ泣き場所欲しいだけだろ。ちょっとは人の気持ちを考えて?」


「えー……キミにそう言われるのすっごくムカつくんだけど。まあ、そんな噂もあってイジメ的なのはなくなって、しかも虐待された子とかも結構救われてたらしいよ」


「噂って、やっぱ影響力あるんすねえ」


「まあ実際、私がここに入学してきてその正義の味方的なのは……学内ではなかったけどね。治安がいいってことかな」


「噂で牽制ねえ。まあ、それで平穏ならそれはそれで」


「……ちなみに、この七不思議が派生してるんだよね」


「七不思議に派生? いや7つないから穴埋め?」


「似たような話で『うちの学校付近に不良は居ない。何故なら正義の味方がいつも監視してるから』って、そんな感じ」


「その『生徒会長になった人』が今でも目を光らせてるってことっすか」


「そう解釈する人もいれば、そうじゃないと思ってる人もいる」


「そもそも不良の定義ってなんすかね。俺の中学の友人にも、一般的には不良って言われてる奴もいますけど、害はないし良い奴も居ますよ」


「人に迷惑をかける人イコール不良と定義しますか。例えば喧嘩、しつこいナンパ、あとはイジメとか、そういうの。ゴミのポイ捨てとか公共機関でのマナー違反も含めよう。あとは法律違反、未成年の飲酒喫煙などなど」


「うちの学校は名門校っすよ? そんな事する奴います?」


「逆に聞くけど、もしそんな事してるのが周囲にいたら? 例えばタバコとか」


「え? 蹴りますけど」


「他人、見知らぬ誰かでも?」


「蹴りますけど。嗜好品に口出すわけではないですが、せめて嗜む事が正当な立場にならなければ許されません」


「……ほんと、この子は七不思議を『2つ』も増やして」

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