第80話 春眠暁を覚えず
「すんません。今日は昼寝させてもらいます」
「どうしたの? 夜更かし? 具合が悪いの?」
「夜更かしっすね。読んでた小説が意外とボリュームあって、読みきる頃にはいつも寝る時間より二時間ぐらい後でした」
「そ。膝貸そうか?」
「いえ、センパイの細い足だときっと痺れると思うんで、屋上で適当に寝てます」
「遠慮しなくていいの。はい、おいで」
「……眠り辛い」
「それはどういう意味かな? 私の足に不満でも?」
「それもあります。やっぱセンパイの足が細くて、体を預けるのが不安になります。あと……いい匂いがするんで目が冴えます」
「目が冴えたなら、昼寝しなくていいよね。まあ、眠れなくても横になってるだけですっきりするかもよ?」
「そうっすね。お言葉に甘えて……」
「って、結局すぐ寝ちゃって。……うん、やっぱ男の子だね、ちょっと重いや。でも、悪くないかな。寝息も聞こえないぐらい静か。よほど眠かったんだね」
「おはようございます……」
「昼休みはまだあるけど、大丈夫?」
「びっくりするぐらい一気に意識が飛びました。んで、今は頭もすっきりしてます」
「それはよかった。お昼ご飯、寝起きで食べられる?」
「大丈夫っす。って、センパイも昼食べてないじゃないっすか」
「君に膝貸してたからね」
「すんません」
「謝る事じゃないよ。食べようと思えば食べられたんだけど、ね?」
「……寝ている俺に何しました?」
「なにも?」
「正直にお願いします」
「ずっと頭撫でてた。ちょっと癖っ毛だけど、毛並みの良い大型犬を撫でてる気分だった」
「膝貸してもらっておいてなんですけど、そういうの、やめてください」
「嫌だった? 頭撫でるの、いつもしてるからいいかなって。本当に嫌だったらごめんなさい」
「折角センパイに撫でてもらってるのに、俺は寝てて気づかないとか、損した気分です」
「そっち!? じゃあ、ほら、今から撫でてあげるからさ」
「……センパイに撫でてもらうの気持ちよくて嬉しいっす」
「それは撫で甲斐があるね。キミ、うなじ付近を撫でられるの好きでしょ?」
「よくわかりましたね。センパイの手って凄く柔らかいから、ふわっとして気持ちいいんすよね」
「わかる。キミも大きい手のわりに柔らかいから、どこ撫でてもらっても凄く気持ちいいんだよね」
「ねえ、センパイ」
「ん、おいで」
「センパイ撫でるの好きっす。あと、こうやってお互い抱きしめあうのも」
「私も。もうちょっと強くしても大丈夫だよ?」
「センパイの細い体を強く抱きしめるの、ちょっと怖いんすよね」
「痛い時は痛いっていうから。だから、もっとキミがしたいようにして」
「お言葉に甘えて」
「って、本気出さないで!? 痛いって!!」
「まあ、こうなるから安易に誘わないでください」
「侘び」
「んっ。誘ってきたセンパイにも非はありますから、『頬ちゅっ』で勘弁してください」
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