第78話 初めての香水
「この前の誕生日会でさ、奏から貰った香水つけてみたんだけど、どうかな」
「正直に言います、若干辛い。ただでさえ甘い匂いのセンパイが更に甘いっす。なんだろ、多分バニラっぽい感じ……?」
「辛いって言われるのはショック。まあバニラっぽいって思うのは間違いじゃないかな。貰ったの『アナスイのスイドリーム』だし」
「センパイって普段香水付けてないっすよね。付けすぎじゃないっすか?」
「ワンプッシュで手首と耳裏にしか付けてないし。今日、奏に言って確認してもらったけど全然気にならないって言われたし」
「別に俺の鼻が凄く良い訳でもないっすけど……。あー、多分普段のセンパイの匂いに慣れてて違和感ってのかな」
「じゃあ、香水つけた部分嗅いでみる?」
「一応、念のため――」
「って、えっ!? 普通手首にしない? ちょっ耳裏……!!」
「凄く甘いっすね。あ、でもいつもと違うって思ってただけで、結構いいかもっす。センパイの普段のミルクみたいな甘さとバニラが混ざって凄く甘いようで、けどとても似合ってるかもです」
「そ、そう? そう言ってくれると嬉しいけど、あの、この体勢はちょっと恥かしいんだけど! さりげなく抱きしめないで!?」
「いや、なんか頭がぼーっとするっていうか、もっとセンパイの匂いとか感触を感じていたいっていうか」
「いいけど!? 別に!? いつも!? わりと!? してもらってる事だし!?」
「すんません、今日のは『俺がしたい』って思ったからです。ほんと、なんていうか、俺の我侭なんすけど」
「そっか、そっか! いいよ、まあいつもしてる事だしね! 強いて言うなら頭撫でてくれると嬉しいかな!!」
「いいすんか、センパイの髪綺麗だし、撫でるの大好きっす」
「ンッッッ!!」
「香水、やばいっすね。なんだろ、なんでこんな気分になるんだろ。あのもっと我侭言っていいっすか?」
「受けて立つ! 次は何がしたいの!?」
「いや、その、ほんと我侭なんすけど。『もうその香水、学校に付けてこないでください』」
「……やっぱり嫌だった?」
「ううん、好きっす。だから、こんな匂い毎回されたら俺がおかしくなりそう。あと、他の奴にこんなセンパイの良い匂いを嗅がせたくない」
「じゃあ、二人で遊びに行く時は?」
「ギリ、セーフ。でも、できれば映画デート的な、二人っきりの時のほうがいいっす。外で他の奴に嗅いで欲しくないっす」
「もう、それほんと我侭じゃん。せっかくプレゼントでもらったのに、使う機会まったく無いし」
「そう……ですね。だから我侭っす。別に気にしなくても良いんで――」
「私、この香水結構気に入ってるの。親友からのプレゼントだしね。だから、日頃持ち歩く事にした。容器も可愛いし。だからこうやってキミと放課後会う前に付ける。あとは休みの日にキミと会うときは付ける。どう?」
「ありがとうございます」
「ンッッッッッッ! こら、急に『耳噛み』しないの!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます