第69話 続・懐事情はそれぞれ
「センパイもバイトしてないっすよね。興味ない感じっすか?」
「家の方針ってのかな。『社会に出たら女性も仕事をする事になる場合が多い世の中だから、学生のうちに労働する必要はない』って」
「ごもっともな考えな気がする。いや言われてみれば学生じゃなくなったら働きますもんね」
「家事手伝いでもいいけど。もしくは専業主婦」
「まあ人の考え方はそれぞれですけど」
「ちょっと! 冗談! 働く事にはね、興味はあるんだ。でもバイトではなあって感じもあるんだよね」
「俺の場合は親を言い包めればお小遣い貰えますし、そもそも俺自身物欲があまりないからいいんですけど、センパイはその辺大丈夫なんす?」
「そりゃあバイト禁止って親が決めたんだもの。その分、私が不自由しない額のお小遣いをいただいております」
「……それってただ娘に甘いだけじゃないっすか?」
「あっ、気づいた? 結局そこなんだよね。ただの過保護。学生でできるバイトなんてさ、接客業がメインじゃない? イメージ的に。そういう所で働かせたくないんでしょ」
「わりと容易にセンパイがバイトした先の波乱が見える。センパイ目当ての客とかすげえ出てきそう」
「それは大げさ、褒めすぎ、うちの親か! まあ、キミみたいな考えを父もしちゃってね。それで禁止。その分、結構多く貰ってる。ほぼほぼ貯金してて、いつか家に返すけど」
「いくらぐらいか聞いても?」
「うーん、少ないと10万。ゴールデンウィークとか夏休みとか、そういう連休がある月はその倍ぐらいかな」
「えー、引くわー」
「でしょ? だから使いきれるわけもないし、貯金して返すつもり」
「いや額もですけど、10万を『結構多く』と表現するセンパイも怖いっすわー」
「うーん、やっぱちょっと金銭感覚おかしいかな。友達にも時々言われるんだよね」
「毎月10万手元に入れば、そりゃおかしくなるわ! センパイ、ちょっとでいいから考えてみましょ? バイトの時給がざっくり1000円として、10万稼ぐのに何時間働く必要がありますか? 学生に可能ですか?」
「――おお、確かに」
「んで、実際は毎月どのくらい使ってるんですか?」
「んー、多くて5万。友達と旅行する旅費とその時の為の服とか水着とか買ったりすると、それぐらい行くかも」
「そういうのなければ?」
「まあ大体2万とか3万ぐらいかな。ほとんどキミとご飯したりお茶したりするぐらいしかお金使わないんだよね。美容院には毎月行ってるけど、カットだけだからそんなしないし。気に入った服見つけたらプラス1万ってところかな」
「金銭感覚おかしいようで、わりと普通っぽいのが不思議」
「という事もあって、まあ自分でバイトして稼いだお金で過ごすって経験も必要かなって思ってさ。流石に大学生になって禁止って事はないでしょ」
「いや……、むしろ大学に行くんだからもっと学問に励めとか言われそうっす」
「……えー、それはさすがに。せめて成人したら、ねえ?」
「わからんすけど、それはセンパイのご両親に相談してください」
「一緒にお願いして?」
「なんで関係のない俺が!? おかしいだろ!!」
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