第61話 不器用なんで出来ない事のほうが多い
「くそがっ、またガターかよ! ボウリングくっそ難しいのな!!」
「誘っておいてごめん。キミがここまで苦手だとは思ってなかったよ……」
「人生初っすからね! ボール転がすだけって思ってたんすけど、なんで隣のレーンにボールが吹っ飛ぶんすかね」
「それはキミが思いっきり投げてるからでしょ。砲丸投げじゃないんだからさ」
「センパイ、正直に言いますね。金出してまでやりたい遊びじゃないっす!」
「うん、だからごめんって。支払いは私が出すからさ」
「そうじゃないっす。なんでお金出してまでこんな遊びしたいって思うのかわからんだけっす。誘ったセンパイはお金払ってでもボウリングがしたいって思ってるんですよね?」
「えー。まあ、カラオケと一緒っていうか、お金払って遊ぶとなんか大人っぽいっていうか。うーん、ちょっと違うかなあ。ごめん、私も付き合いでボウリングに誘われるぐらいだから正直なんとも言えないよ」
「ボール一個あればみんな遊べるサッカーとかを見習って欲しいですね。なんだよ、わざわざ靴までお金払って借りて、結局ようわからんくてレーンに足突っ込んで転んだし。もう散々すわ」
「ほんとごめんって。キミならなんでも卒なくこなすって勝手に思ってたんだよ」
「俺、何事も練習しないとなんもできないっすよ。センパイと違って、努力で誤魔化す方なんで」
「格闘技とかバスケとか、体育の授業も成績いいんでしょ? だから体動かす事ならなんでもできるかなって」
「俺、高校入るまでバスケのドリブルできませんでした。フリースローも百本打って百本外しました。練習に練習を重ねて、やっとってのが俺です。恵まれてるのは身長だけです」
「一年ちょいでバスケ部エース並になるものなの……?」
「めっちゃ練習しました。親友から借りたバスケボールをずっと触ってました。あいつが誘ってこなくてもコートで練習してました」
「じゃあボウリングも練習すればもしかして?」
「練習の度にお金出すんす? その金あるなら美味いもの食うわ。ほんと理解できねえ。ダーツとかもそうっす。なんか矢っぽいのを投げるの、金払ってまでやる程何が楽しいのか」
「でもバスケは練習したんだ」
「タダっすからね。ボールは借りれたし、コートも空いてれば使い放題だし、靴もスニーカーでもいいし。んで。自信がつくと、ボールとかバッシュとか欲しくなって、気づいたら、まあ上手いほう?になってただけっす」
「なんとなくだけど、キミが興味を持つ基準がわかって気がする。……後で誰もいない所でキスしていい?」
「おい唐突過ぎて意味わからんすけど?」
「キミの事、一つ知ったご褒美」
「断ったら?」
「今この場で思いっきり抱き締めてキスする」
「やめて、最近なんかセンパイと一緒に遊んでる所を見られてるらしいんで、ほんと洒落にならないっす!」
「じゃあ、ほら。わかるでしょ」
「……。ほんと、一瞬だけっすよ」
「いいよ。お願い」
他の誰にも気づかれないように、センパイの頬にキスをした。
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