第60話 好きと言う気持ちと愛おしい気持ち

 ほんと颯君は、からかって面白い。

 でっかい図体してて、目つきもちょっと鋭くて怖い感じなのに、私の冗談を面白いリアクションで返してくれる。

 時々素っ気無いけど。そこもまた可愛い。


 いつだったかな。初めて触れたの。

 手だったかな、色々飛ばして額とか頬とかのキスだったかな。


 嬉しかった、本当に嬉しかったの。


 ただ可愛いと思っていた颯君が、私の事を大切に思ってくれていると自覚した時、もうこれ無理だと思ったの。


 だって、初恋かもって思った相手に優しくされて、大事にされてるなって自信も出来て。

 じゃあ、もう無理でしょ。恋に落ちるって、こういう事を言うんだなって。

 

 私は颯君が好き。

 大切にして欲しい。

 大事にしたい。


 まだ頬までだけど颯君にキスしてもらった、嬉しい。

 凄くドキドキする。


 颯君の大きな手を握ると、凄く安心する。

 とても幸せ。

 

 颯君に膝の上に乗せられてぎゅっと抱きしめられた時、気を失うかと思った。

 こんな幸福感ってこの世にあるのかって。

 

 颯君に頭を撫でられた。

 全身の力が抜けるような感覚なのに、優しく撫でられるたびに体が勝手に震えてしまった。


 耳を噛まれた。

 死ぬかと思った。

 背筋がぞくぞくして、体が熱くなって。

 つい颯君を抱きしめちゃったけど、けど颯君も優しく抱きしめ返してくれて。


 颯君の逞しい腕に抱きついた。

 あんまり好きじゃない自分の胸を押し付けるように。

 颯君は凄く鬱陶しそうにしてたけど、けど振りほどかなかった。

 女性の胸、少なくても私は大きいほうだけど、それを押し付けられて興味なさそうな颯君が好き。

 ああ、こんな男性って現実に存在するのかって。


 流石に度が過ぎたのか、お互い自重しようと約束をした。

 うん、無理。

 颯君に抱きつきたい。颯君にキスして欲しい。頭を撫でて欲しい。耳も噛んで欲しい。抱きしめて欲しい。

 

 それ以上の事もして欲しい。

 本当の意味で愛して欲しい。

 

 もう覚悟は出来てるし、私の胸も直接触って欲しい。

 キスも頬だけじゃなくて唇にして欲しい。

 そのまま舌と舌を絡めたい。

 そして抱いて欲しい。

 その先に何がどうなるかなんて全然わからないけど、颯君ならきっと優しくしてくれる。

 私の事を真剣に大事にしてくれて、嬉しい気持ちにしてくれる。

 

 けど、その私の我侭を颯君にはぶつけない。

 

 こんな私の本心を急にぶちまけられたら、颯君はきっと困惑する。

 そして頭の回転がいい颯君は、きっと今まで私がしてきた事、させてた事の意味に気づくはず。


 好きだから、好きになって欲しいんじゃない。

 好きだから、愛して欲しい。

 だから彼がちょっとでも傷つく事はしたくない。


 ――私は、颯君の彼女になりたい。

 だから、颯君。

 早く私を愛して?

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