第49話 人生初のラブレター・リターンズ
「どうしよ、ねえセンパイこれどうしたらいいっすか!?」
「前回から学ばないね? まずは中身を読もうよ! どうすんの、昼休みに屋上って内容だったら同じ過ちを繰り返すよ?」
「あ、そうですね。すんません、ちょっと動揺が」
「ちなみに、そのラブレターはどうやってもらったの?」
「昼休みになって、教室出た時に手渡しされました」
「まあ、じゃあ猶予はある可能性は高いか。まあ、ほら。まずは中身読まないと」
「……、あ、これラブレターじゃないっすわ。すんません、早とちりでした」
「それ見てもいい?」
「はい、どうぞ」
「……? ……、うん、100%ラブレターだけど、これ」
「え、なんでですか。『俺とセンパイが付き合ってるって本当ですか?』って、そんな内容ですよ。ただの興味本位でしょ。違いますって返事しておきます」
「待て待て待て。キミが、言葉の裏をあまり読もうとしない、したくないってのは知ってるけど、これ思いっきり意図があるからね?」
「事実確認をされてるだけなのに、これをラブレターだなんて思うほど自惚れてはないっす」
「もうちょっとでいいから自己評価上げよ? もしくは危機管理能力を上げて? いい? この手紙を渡した子は『もし私とキミが付き合っていなかったら』という事実を知って、その次にどう行動すると思う?」
「え、別にそれで終わりですよね。それが知りたいだけしょ」
「違う、ちっがーう! 『噂は嘘だったら、キミは誰とも付き合ってない』つまり『告白して、恋人になりたい』って考えるかもしれないでしょ」
「そんな物好きいます? そもそも俺と付き合いたいなら普通のラブレターを出すでしょ」
「ラブレター女子の行動力、結構凄かったね……。あの子の行動は多分一番最適。てかあの前例があるから、今回はそう考えるのか……」
「ぶつぶつと何を言ってるんですか。とりあえず、次会った時には事実を伝えますね。相談に乗ってもらっておいてなんですが、意外と大したことない相談でした。手紙イコールラブレターって考えを止めようと思います」
「止めようと思う考えは、相手がキミに好意を持っていないと思い込むことだよ。説教と『頬ちゅっ』どっちがいい?」
「……説教で」
「じゃあ『頬ちゅっ』ね。で、キミはまた相手を傷つける行動をするの? 私が言ったのは確かに自惚れな発想かもしれないけど、それが事実だとしてキミは面と向かって告白された時、どう答えるの?」
「……。……、……」
「ほら、そうやって考える。『私と付き合ってません、誰ともお付き合いしてません』って言われて『では私とお付き合いしてください』と真剣に言われて、そんな反応するの?」
「あの――」
「うるさい『頬ちゅっ』以外は受け付けない。まだ、今は誰も傷ついてないから、それ以上は何もしないし、キミの勝手な罪悪感に私は何もしてあげない」
「すんません、甘えでした。でも、恋とか愛とかってなんなんですかね」
「自称恋愛マスターなのに?」
「よく考えたら、映画とか小説か、あれって誰が何でそう思うかきっちり表現されてます。だから汲み取れます。けど、現実はそんな事なくて」
「よく気づいた。恋愛だけじゃないよ。人の気持ち、人との交流はそういうものなの。複雑で、汲み取りづらくて、知らないうちに誰かを傷つけたり、自分が傷ついたり。それが現実だよ」
「……。理解はできても、多分自分にそれは無理っす。なんか、俺が友人が少ない理由、きっとそれなんですかね。そんなんじゃ、彼女だって作れるわけない。まあ今は自重中ですけど」
「キミが納得とか、それなりに人付きあいできるまでは私が隣にいるから大丈夫。前にも言ったよね、色々考えて反省して、彼女が欲しいと思うまではずっと隣にいるって」
「あれ? そんな大げさな話でしたっけ」
「そう、そういう大げさな話。多分、いや確証はないけど『相手の言動の裏を知る』頃にはきっともっと後悔するよ。でもそんな後悔してても、私はキミの隣にいるって、そんな話」
「……あざっす。センパイが居てくれて、きっと俺は幸せなんだと思います」
「ッッッッ!!」
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