第48話 今話題のあの人
「……、なあ。なんでこんな居心地が悪いんだよこの食堂」
「そりゃ颯と俺が一緒に昼食ってりゃ目立つでしょ」
「今までもわりと食堂で食ってたろ。なんか今日、違くね?」
1on1で俺が勝ったので約束通りスペシャルランチを奢ってもらうことになった。
しかし、なんか……色んな所からの視線が痛い。
「あの二人って例の……!」
「美男と美獣――ああ、ごちそうさま……」
「どっちが受けだと思う。私は背の高い方が受けだと思うの」
「ふふ、彼は橘って奴がいるにも関わらず彼女説を否定しているらしいな。つまり彼は同士か!」
折角の肉が美味くない。
味のしないガムを噛み続けている感覚だ。
あと最後、もう女子がそういう妄想するのはいいけど、ガチな同性愛者扱いしないで。全部誤解だから。
「気にしないほうがいいよ。一々気にしてたら、病むよ」
「おいちょっと怖いこと言うなよ。え、なんでだよ」
「有名になるって、そういうことだよ。まあ、先人の意見として言っておくよ」
「有名? え、俺が?」
「むしろ自覚ないの? うちの部長が宣伝までした1on1勝負で、派手に勝利した颯が有名にならないわけでしょ」
「えー、そんなまさか」
「事実、颯が居心地悪いって思ってるでしょ。注目されるってそういう事だよ」
「奢って貰った分じゃ足りない気がしてきたぞ。俺はそんな目立つような人間じゃなねえよ」
「お前まだそんな事言うの? 『警察犬』とか『チャンピオン』とか言われてて、目立ってないわけないでしょ。そこから更にだよ?」
「もう俺、お前となんかするの断るわ。去年の武術大会はお前の悪ふざけで出場したし。色々とほぼお前の所為だろ」
「ああ、すまんすまん。そうじゃなくて、その、うーん? 颯はもっと正当に評価されるべきかなって思ってさ」
「その結果、飯食うのも居心地が悪いってか」
「余計なお世話だけど、やっぱ橘先輩との噂がまだ色々強いんだよ。颯はめっちゃ良い奴だし、すげえ奴だし。けど、周りはそれをわかってないから『橘先輩は欅颯を彼氏扱いして男避けにしてる』って噂も、未だにあるんだよ」
「センパイが聞いたらブチ切れそうだな。俺を男避けにしてるって話を軽くしたらすげえ怒られた。侘びまでさせられた」
「てなわけで、橘先輩の彼氏でもおかしくないのが颯だと、そうアピールしたかったんだよね」
「いやほんとそれ余計なお世話だわ。『付き合ってるっていう嘘』に現実味帯びさせてどうすんのよ。センパイもだし俺もだし、本当の恋人できなくなるぞ?」
「……うん。ごめんな、俺の行動間違ってないや!」
「なんでだよ!!」
「てな事がありまして。あいつムカつきません?」
「グッジョブ、バスケ部エース君」
「え? なんで?」
「バスケ部エース君の最高なフォローと、あとキミの無自覚さの侘びを含めて、『膝ぎゅっ』を求める!」
「は? え?」
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