第43話 承・食い意地は、時に奇跡を起こす
「なあ颯、今日か明日の放課後空いてるか?」
「ん? 両方とも空いてるぞ。どうした、遊びに行くか?」
「おっと珍しい。じゃあ今日放課後、俺とバスケな。1on1な!」
「バスケ? あれ、てかお前部活じゃねえの?」
「部活だが、許可は取ってある。場所は体育館な」
「は? どういうことだよ」
「俺、お前に球技大会で負けそうになった。俺、部内でちょっと当たりが強い。だから、部員の前で『上手い奴と勝負した』って証明したい」
「なぜか美男美女は追い込まれると軽くカタコトになるのなんでだ。まあ、いいけどさ。俺が適当に流して負けるとか考えなかったわけ?」
「お前に限ってそれはないだろー、ははは」
「いや軽く笑って流すな。ちょっとは人を疑え」
「まあ折角だからお前が本気になるような約束をしてやる。『お前が勝ったらスペシャルランチ奢ったる』」
「っしゃあ、昼休みには体あっためておくからな!!」
「キミ、なんで屋上で準備体操してんのさ」
「あ、センパイ。奇遇っすね。ちょっとわけあって」
「不審者か」
「そう思われるかもしれないと思ったから人がいない屋上にきたんすけどね」
「まあ、続けてどうぞ。私はお昼食べてるから」
「言われなくとも」
「あっ、ところで今日の放課後は――」
「先約ありなんで、明日にしてください」
「その準備運動と関係があるのかな?」
「親友とバスケでガチの1on1をします。俺が勝ったらスペシャルランチ奢ってくれるんで。負けても俺に損はないという破格の条件」
「一応ツッコミいれておこう。勝てる見込みは?」
「半々まではいかなくてもそれに近しいぐらいは」
「へえ、キミにしては自信満々だね」
「いやあいつ1on1はわりと大したことないんすよね。球技大会で当たってみて、そこはあんま変わってないなって」
「ん? え? キミの親友はバスケ部のエースだよね?」
「前も言いましたが、あいつはチームプレーに特化してるんす。つか普通バスケはチームプレーですし。逆に俺は1on1が得意」
「じゃあ、応援に行ってもいい?」
「じゃあの意味がわからないけど、俺の断り必要ないでしょ。どうせ勝手に来るくせに」
「微妙にむかつく。キミが負けたら――」
「あー。きーきーたーくーなーいー」
「さらにむかっとした。ジュース奢ってって言うとしただけなのに。もうこれは『膝ぎゅっ』案件だね」
「ちゃんと聞いておけば良かった……!」
「てことで、俺も俺で負けられない事情ができた」
「よくわかないけど、本気でやってくれるなら部員全員に頭下げた甲斐があったよ」
「そこまでしたんかい! どおりで妙に視線が向けられて――待て、バスケ部こんなに人多かったか? てか女子もいねえか?」
「それは……すまん。部長が悪乗りして『バスケ部エースVS武術チャンピオン』みたいな感じで宣伝してた。ギャラリーは結構多いと思う」
「まあ、いいけどさ。二人で行ってたコートよりマシだろ」
「確かに。一応ルール確認な。十点先取。オフェンスは点を取られた側。スタートはオフェンスがディフェンスにパスしてそれを返した時。他は通常のバスケ通り」
「昔のままだな。問題ない」
「最初のオフェンスは、お前でいいよ」
「アンフェアだ。バスケ部だから俺に先行を譲ったって言われたら、この場の意味がない」
「……オッケー。いつも通りコイントスで」
「裏」
「裏」
「いやそこは譲れよ」
「フェアのほうがいいんだろ? お前が裏って言った時『実際に裏だったのがほぼ100%』なの忘れてないからな。普段表って言うくせに」
「……表」
「裏」
「で、誰が投げるんだよ。コートと違ってギャラリーが率先してレフェリーしてくれるわけじゃねえぞ」
「部長! コイントスお願いしまーす!」
「部長パシるんかい!」
「いや今回の審判が部長なんで」
バスケ部部長が投げた五百円硬貨はそのまま掌に落ちた。
五百円硬貨は桐紋が上を向いていた。
「あざーっす」
「くっ、そもそも颯のコイントスの勝率70%だった……」
「よし、それじゃあ」
「そうだな」
「着替えて準備運動するか!」
「着替えて準備運動するか!」
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