第40話 無邪気な善意は、無意識に

「センパイ、今週末空いてます?」


「ん? 空いてるよ」


「じゃあ、俺とみなとみらいに遊びに行きません?」


「おやおや? デートのお誘い?」


「そう思ってもらっていいっす」


「貴様誰だ、偽者か!?」


「いや本人っす。前にも同じようなやり取りしましたよね。立場逆ですが」


「んで、私から誘わない限り休日に遊びになんて行かないキミが? 何の用事?」


「いやだからデートっす。プランはまだ考えてないっすけど、オッケーもらったらちゃんと考えます」


「貴様誰だ!?」


「いやもうその流れいいんで」


「どうしたのよ。ラブレター女子とのデートの予行練習?」


「俺をさらにクズ扱いするの止めてください。あの子はただの友達だし、最近他の男とそろそろくっつきそうなんで大丈夫です」


「……あの子、清純そうなのに意外と手が早いのね」


「言い方。紹介したの俺だし。中学時代の友人っす。新しい恋をしたほうがいいんじゃないかって思って、それとなく連絡先教えたら結構いい感じっぽいんで」


「ちなみに、キミの言ういい感じってどういう事を指してる?」


「友人から『毎日連絡してる、ライン1通ぐらいだけどちゃんと返事貰えてる』と自慢されました」


「ダメだこりゃ」


「なんでですか。興味なかったら無視するでしょ」


「まあそりゃね。けどそれで『いい感じ』とか『くっつきそう』ってどうよ。私とキミだって毎日一回ぐらい連絡してるよね」


「主に呼び出しですけどね、ちょっと意味が違うんじゃないですかね」


「まあ、それはそれとして。で、結局なんでデートしたいの」


「最近のセンパイ、ちょっと元気ないからっす。気分転換にどうかなって」


「……。別に、元気だし」


「センパイって割と愚痴はすぐ言うほうですけど、俺にも黙ってるって事は本当に言いたくない嫌な事があったんですよね。俺に解決出来る事でもなさそうですけど、ちょっとぐらいセンパイの力になりたいって思ってます。俺とのデートぐらいじゃ、ダメっすか? いやすんません、よく考えたら俺とデート――」


「はあ、もう。完敗。負けた負けた。なんかもう、考えるの止めた! いいよ、みなとみらいでデートね!!」


「前に江ノ島行ったとき、潮風大丈夫そうだったんで、赤レンガ倉庫とか山下公園に行きましょうか。もしよければちょっと遠くなりますけど中華街でランチでもいいっすね」


「うん、楽しみにしてる。はーっ。もう、今から週末が楽しみだよ!!」


「時間さえよければ、ディナーもどうです? あっ、もちろんデートってことなんで支払いは俺が出しますけど」


「別にそこは気にしなくていいけど。私の家は東神奈川だし、横浜付近ならちょっと遅くなっても大丈夫だよ」


「んじゃ、俺好みになるかもですが予約も入れときますね」


「……。キミさ、本当に彼女いたことないんだよね」


「え? はい。もちろん」


「もちろんの意味がわからないけど。まあ前の鎌倉の時もだけどさ、デートの段取り取るの上手くない? なんなの?」


「いや俺の中ではデートって今回が初めてですけど。デートってこうなのかなあってのは映画の知識ですね」


「フィクション恋愛脳が現実で本気出すと、破壊力凄いね」

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