第31話 センパイの受験事情
「今更っすけど、センパイって受験生ですよね。わりと暇そうにしてますけど、勉強は大丈夫なんすか」
「ん? あれ、言ってなかったっけ。推薦取ったの」
「おめでとうございます? いや前話した時、『やりたい事が出来る場所をきちんと探してる』って言ってませんでした?」
「したね。もちろん妥協はしてないよ。たまたまここだって所を第一志望にして学校に提出したら、たまたま推薦の話がきたの」
「まじすか。それは本当におめでとうございます」
「……、え、それだけ?」
「ケーキでも奢りましょうか?」
「いやいや、どこの大学行くとか、どこの学部とか、興味ないの?」
「あまりないっすね」
「ひどい。卒業して大学に進学したらさ、もうこうやって一緒に居られないんだよ?」
「どの口が言う。どうせ卒業したっていつもの様に喫茶店だのなんだのって呼び出す気でしょ」
「あっ、バレた?」
「本当にセンパイが、自分の進路を俺に伝えたかったらすぐにでも言うでしょ。今このタイミングの時点でもう」
「ふふっ、まあ、言われてみればそっか」
「でも俺が受験の時期は控えてくださいよ。センパイの所為で志望校落ちたら一生恨みますから」
「それはそれでいいかも」
「なして!? てかどんだけ俺を貶めたいの!?」
「なんであれ、私の事を思ってくれるんでしょ。学校とか進路とか変わって、なんとなくで忘れられるより全然マシ」
「ほんと、そんな理由で進路変えられたらたまったもんじゃない。しかもわざわざセンパイを恨むとか。週一ぐらいにしてくださいよ、ほんと」
「……同じ学校ならともかく、大学生と高校生って間柄にしては会う頻度高いね」
「そうっすか? そもそもセンパイと俺は一つ歳が違うし、ほぼ毎日顔を合わす今も十分珍しいですよ。それに比べたら全然」
「ああ、確かにそうかも」
「んじゃ、行きましょうか。センパイの進路決定祝いに」
「うん、でもさ。その前に一個だけ聞きたい事があるんだけど」
「なんすか急に。答えられる事なら」
「もし、私の進学先を教えたら……。いえ、違うか。私と同じ大学に来てってお願いしたら、どう思う」
「俺の希望進路と同じで、どこにするか迷ったら、一応考慮します」
「ほんとだね? 嘘じゃないね?」
「嘘は言わないっすけど、急にほんとどうしました」
「実はこの前見せてもらった模試で、キミが第一志望にしてた大学が私の進学先」
「マジっすか、凄いっすね! 滅茶苦茶レベル高い所じゃないですか」
「希望の学部は他の学部より結構難易度低かったんだ。キミの希望してた学部は一番倍率が高かったら、ちょっと違うけどね」
「んじゃ俺も進路このままにします。なんとなくですけど、模試で自信付いたし、このまま狙ってみようかなって思ってたんですけど、決心が付きました。ありがとうございます」
「どういたしまして? あれ?」
「どうしたんす、きょとんとして」
「ううん、なんでもないよ! あれ? 話がうまく行きすぎじゃない?」
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