第19話 意外と俺には友人がいなかった。
「俺はもちっとしたら部活だけど、お前は?」
「センパイに呼ばれてた。えっと、今日はゲーセンだったはず」
「なあ、こういうのもなんだが橘先輩以外と遊ぶつもりないの?」
「んなわけあるか。相手が誘ってこないうちに、センパイが俺を誘うからそうなってるだけだ」
「ああ、先約ルールね」
俺のルール。最初に誘った人を優先。
当然誘って了承得たらもちろん優先。
センパイはすぐ俺を誘う。
俺もセンパイを誘う。
他の友人はそうじゃない。
つまりそういうこと。
「ちなみに今月、橘先輩以外に誘われた回数は?」
「黙秘」
「はいはいゼロね。察しろ? お前、誘いづらいんだってさ」
「なぜだ、俺は普通の」
「普通は『警察犬』なんて言われない。真実はともかく、噂のせいでお前ちょっと怖がられているからな」
「おう、マジか。こんな草食系男子なのに?」
「どこがだ。180cm越えのガタイ恵まれた奴が何言うんだよ」
「ゾウだってキリンだって、カバさんだって」
「ちょっと童謡風にいうのやめろ。まあそれが真実だ。橘先輩以外と仲良くしたいなら――」
「俺は俺のポリシーを信じる。他の奴が本当に俺と遊びたいなら、センパイより誘ってくる」
「ああ、はいはい。一応その話みんなにしておくよ。実際? 橘先輩より本気でお前を誘う奴いると思えないけど?」
「失礼な。俺はいつだってウェルカムだぞ」
「で、結局私とこうやって喫茶店にいるんだ」
「普段から呼び出されるんだ。別に今更」
「で、どうよ。ちょっとでも心がすっきりした後の高校生活は」
「……実はあんまりどうでもいいかなって」
「へえ、して心は」
「あ、俺あんま好かれてないなって自覚が生まれたけど、今までの高校生活を振り返ってなるほどねって」
「ネガティブなのかポジティブなのか」
治安のいい学校付近のゲーセンでUFOキャッチャーで適当に無駄金を使い、辛うじてブサ可愛い狸のぬいぐるみをゲットした。
センパイは満足したのか、大き目のぬいぐるみを抱きしめながらゲーセンを後にした。
そして今はセンパイ行きつけの喫茶店でお互い一息ついているところだった。
「センパイいるし、まあもういいかなって。センパイはいつも俺を誘う暇人だし、俺も暇人だし。お互い暇人だなあって」
「引っぱたくよ? 違うそうじゃない! キミは彼女欲しいって思ってるんでしょ? なんで私の誘いを気軽に受けるの!?」
「お互いの約束事はお互いしか知りません。俺が断ろうが受けようが、周りにはなんにも影響がないです。では、センパイが俺を誘ってくれた事に対し断ったとしても『まるで意味のない無駄な反発』です」
「けど、実際に遊びに行ったら、ゲーセンで遊んで喫茶店でお茶して、もうこれ彼氏彼女の関係じゃない?」
「かもしれませんね。けど俺は否定しますよ。『お前らの物差しで計るな』って」
「……ねえ、なんでそんなんなの? 不器用だとか捻くれているとか、そういうのと違うよね」
「……? よくわからんすけど、なんか俺もセンパイと遊びたいなあって思ったから誘われただけなのに、一気によくわからんことをわっと言われても」
「はあ、まあ、うん。キミが平常運行で何よりだよ」
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