第15話 極・自称硬派君の華麗なる休日
「すげえっしょ? この二人の心理描写、きっと表現するなら小説のほうがいいかもっすけど。あえて映像だけ、ナレーションなし、演技のみ。なのに伝わるお互いの思いが思うように伝わらない感じ!!」
「ああ、うん。面白いね」
「俺、こう見えて恋愛映画大好きなんすよ。結局センパイは見たい映画決めてくれないから俺のオススメを選んでるんですけど、退屈ですか?」
昼飯食った後に、お菓子と飲み物をシアタールームに持ち込んだ。
しかしセンパイは俺がすすめた映画を見ながら、けれどちょっと上の空で、見たい映画も言ってくれないし反応も薄い。
ぼそっと「私より女子力高いとかありなの?」とか言ってたけど、きっとお袋の話だろう。
それはそれ、これはこれ。
休みは映画、これ絶対だから。
センパイが退屈でも、俺が楽しければいいんで。
ていうか勝手に俺の家に上がりこんだのセンパイだし、気にする必要ないわな。
「面白いよ。うん、凄く面白い。キミの言う様にシナリオはもちろん、それを演技で鑑賞者に伝えられるって凄いと思う」
「でしょでしょ!? 次は俺の一番……、あ、いやすんません、俺の好みでしか作品選んでなかったっす。センパイは何に見たいんすか?」
「映画館より快適な所で古今東西の名作見れる時点で『なんでもいい』みたいな事言いそう。でもそれはダメだよね。キミの恋愛感はなんとなーくわかったし、最近流行のアメコミが見たい」
「グロいの大丈夫っすか? 中には血がぶしゃーってしたり色々えぐいのあるんで」
「普段の口調より、なんか小学生みたいな感じのキミ見てて面白いけど、本当に映画好きなんだね。まあ、多少は大丈夫だよ」
「じゃあデップを」
「見た事あるしかなりグロいし却下」
「じゃあ最近、日本で公開されてる系にあやかってダークナイトを」
「見る! 映画館では見れなかったんで後からスマホで見たけど、ジョーカーかっこいいよね! えっ、それをこんなシアタールームで見れるの!? 最高じゃん!!」
「字幕と翻訳、どっちがいいです?」
「どっちも!!」
「いやそれぞれ2時間ぐらいかかりますよ? 馬鹿なの?」
「まだ15時だけど?」
「まあセンパイがそういうなら、ダークナイト見て今日はお開きですかね?」
「ん? それでも19時ぐらいでしょ? 私、ちゃんとお泊りできるよう着替えとか色々持ってきているし」
「俺、センパイの事を結構貶してるど、改めて言いますね。馬鹿か!!」
「んー? ご両親がご自宅に居るのに、若気の至りみたいなので私を襲っちゃう?」
「知らんぞ。親父はともかく、お袋に絡まれてまともにいられると思うなよ」
ていうか、きっと親父も俺も巻き込まれる。
「じゃ、どんどんと映画見ていこう!!」
「すんません、流石に俺はダークナイトを一日で二回も見たくないんで。どっちかにして他のにしてくれません?」
「えー、しょうがないなー。翻訳か字幕かはキミに決めさせてあげるから、私は私で見たいもの言って良い?」
「交渉下手糞か。てかなんでもいいって言ってませんでした? まあ俺のほうがむしろ喜んでって話しっすわ。で、何見たいんすか」
「ときかけ」
「えっと……今契約してるとこだと見れますね。けど、意外というか、なんで? いや断りはしないですけど」
「なんていうか、昔に見てなんとなく面白いって思っただけだけど、金ローとかで時々やるでしょ? 今の見ると年齢は主人公と同じぐらいになってて、なんとなく主人公の理解できる半分、理解できない半分って感じ。テレビで見るとカットされてるし、ちゃんと見たら印象違うのかなって」
「なるほど。確かにテレビ放映だと魅力削られるクソ編集しますからね」
ダークナイトを字幕で見て、ジョーカーの迫真の演技を見て二人で涙しつつ興奮する。
そしてその後センパイが見たいと言う「時をかける少女」をみた。
「やばいっすね」
「すごい」
「これって恋愛作品なのか……? けど確か小説原作じゃないけど、けど実際の「時をかける少女」をモチーフにしてるらしいっす。実はあのおばさんが」
「そういうのは良いの! 恋する乙女、いえ恋される乙女ってのがきちんと描写されてる。仲良くしてたからって、好きだのなんだのって、そうじゃないって場面がリアルで好き」
「普通、仲良しの男子二人に好かれるとか……。いやセンパイならあるのか。そういう意味だとリアリティってのがあるんですかね」
「まあ未来から来たからってだけで、片方選ぶとかしないけどね。好きだけど未来戻るわってされたら、『私ってその程度なんだ』ってなるでしょ」
「じゃあ、なんで。未来戻るあたりでリアルもへったくれも」
「男の気持ちってのかな。こう、だから好き!ってのを異性目線で描写されず、だからこの女のもどかしさってのが好き。大好き」
「大体男達はタイムリープする度他の女作ってますけどね」
「ああ、それはウザい。そこもなんかわかるっていうか、男って好意持たれたら好きな子捨てられるんだって。男子のリアルさあるよね」
「えっ、バカにしないでください。彼女欲しいとかそういう、とりあえず相手が居ればいいみたいな奴と、本気で好きな人いる奴とがいたら、あんな展開にならないっす。あれは結局、恋愛ごっこのシーソーゲームしてるフィクションです」
「じゃあ、キミは好きでもない女子から告白されたらどうするのさ」
「彼女欲しいんで、まずお友達から。あ、その際はセンパイに噂を否定するように土下座でもなんでもするからよろしくお願いします」
「ふーん、そう。そっか。なら絶対にしてやらない。キミにはキミが言う人にはなって欲しくないなあ」
「俺の彼女になりたければ私を倒していけ、みたいな魔王ポジションすか。ほんとセンパイは俺の事邪魔したがりますよね。センパイが相手ならどんな女子だって逃げますよ。センパイより美人な人、他にいます?」
「ンッッ!! それは、その私がどうこういう話じゃないかな!」
「女子がどうかはわからないっすけど、俺の親友がめっちゃモテるイケメンなんすけど、最近の断り文句が『お前は颯より魅力的か!?』っていうらしいす。大体女子が負けますわ。いつかアイツぶん殴りたいと思いますが」
「それは私も耳にした事がある。私も時々告白されるけど『私と後輩君の噂、知ってる?』って返してるよ」
「おい被害を広めるな」
「まあ私から言えるとしたら、映画だけじゃなくて現実の女心理解できたほうがいいよって事かな」
「何を。恋愛映画をくまなく見ているのでむしろ恋愛マスターだと自負してますが」
「ばーか。もう、本当にどうしようもない。でも、まあ私は…・・・損してないからいいかな」
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