第12話 学食か購買かお弁当か

「キミっていつも学食だよね」


「今日みたいに屋上に呼ばれなければ大体は」


 購買で買ったカツサンドとから揚げ弁当を食いながら適当に答える。


「お弁当とかないの? 親御さん忙しい?」


「忙しいですね。まあ親父もお袋も仕事大好き人間だから仕方ないっすね」


「へえ、そうなんだ。毎日学食とか購買だとお小遣い辛くない?」


「何かとあればスペシャルランチ奢らせようとする奴の心配とは思えないっすね。晩飯も外食かコンビニとかスーパーの弁当なんで、毎日それなりに貰ってるんで大丈夫ですよ」


「ご両親そんなに忙しいんだ。寂しくないの?」


「センパイが絡んでくる前まで昼はボッチ飯が基本だったんで。家ではゆっくり食えるし、寂しいとか考えた事ないっすね」


「そっか。で、私とお昼一緒に食べるようになってどう変化あった?」


「今日は豚シャブ定食の気分だったのに、冷めてるししなっとした唐揚げ食わされてしんどいっす」


「今度お弁当作ってあげようか? 好きなおかず教えてよ」


「昼に持参弁当でいいなら、自分で作るんでいいです」


「ん? キミ、料理できるの?」


「まあ、普通に。さっきも言ったように親父もお袋も忙しいんで親の晩飯は俺が作ってます。だから弁当が必要ならちょっと多めに作って次の日の弁当にしますから」


「そっか、じゃあ私の分も作ってよ」


「なんで『作ってあげようか』から『作ってくれ』になるんすか。このポンコツ」


「ええーいいじゃん。弁当一つ作るのも二つ作るのも変わらないっていうでしょ?」


「変わるわ! 俺とセンパイで、まず食う量が違う。だから弁当箱が違う。んで、それぞれ盛り付けた時、カバンに閉まっても寄れないよう盛り付けするから『一つも二つも変わらない』じゃなくて『まったく違う弁当を二つ作る』わけっす。あとは自分のは自分好みで適当に作れば良いけど、センパイのはセンパイが喜びそうなように作らないといけない。わかる? オッケー?」


「じゃあ私はキミの分のお弁当作るから。キミは私のお弁当作ってよ」


「いいっすけど、わざと『箸忘れちゃった』は通用しませんよ。割り端5本ぐらい予備で持っていくんで」


「なぜ私の考えがわかったの!?」


「日ごろの言動。俺をからかう為なら何でもする人だって薄々気づいているんで」


「キミとお弁当交換して、あーんしあいたい」


「嘘じゃない彼氏作って、その人としてください」


「そっか、そうだよね。焦る必要ないか」


「センパイは美人ですから、さっさとこの噂を否定して彼氏作ってください。そして、そのお弁当交換ってのをしてください」


「そうじゃないけど、そうだね、うん」

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