第6話 センパイの本音

 センパイは美人

 センパイは冷たいようで友人にはとても優しい。

 センパイは勉強が得意。いっつも成績上位。

 センパイは運動が得意。3年なのに部活の助っ人を頼まれている。


 こういうと完璧超人に見える。

 けれど実際は――


「だる。ろくに練習もしてないのに試合前に助っ人って恥ずかしいと思わないの?」


 無気力……ではないか、言い分はごもっともだ。

 情には流されず、ノーと言える日本人だ。カッコいい。


「センパイこそ、試合出れば成績残せるのに、そんな助っ人で勝って恥ずかしいみたいな理由で断ってるんです?」


 センパイは痛くもないコブシを俺の脇腹に付けてきた。

 むしろセンパイの手のほうが痛いのか、耐えるような苦悶の声を上げている。


「興味ないんだよね。勝ち負けがあったらさ、勝つべきじゃん。でも全力でやって、それでも負けて。これが青春だーっての。それはきっと大事なことだと思うけどさ。助っ人っまで呼んで勝ちたいってのが気持ち悪い」


「センパイらしいっすね。めっちゃ捻くれてる」


「キミも同じでしょ? 才溢れてるのに、できないふりしてる。キミと私、どう違うの?」


「まず一つ、俺に才能はないっす。その二、責任を取りたくない。助っ人がいれば勝てるかもって理由でレギュラー外される奴がいる。そして期待に答えられず負けたら責任は助っ人を呼んだ奴になるし、俺は俺で、俺の所為でレギュラー外された奴から恨まれる。自分で言ってて、デメリットしかないのに助っ人やるクソ野郎を思うと胃がキリキリする」


「一つ目がシンプルなのに二つ目の理由がやけに具体的だね」


「俺の友人の話っすよ。誰にでも親切な奴なんだけど、二度と助っ人なんかやるかって、珍しく愚痴ってたんで」


「そして、その次は?」


「……センパイってスマホゲーってやったことあります?」


「え? いやまあ、多少は」


「フレンドシステムってあるでしょ? あれですよ。自分は弱くてもフレンドが凄く強ければゲームクリアしちゃう。そんなフレンド枠に俺はなりたくないし、それで勝って喜んでるチームメンバーは心の底からクズだなって思うんすよね」


 センパイは少し考えると、ふとやわらかい笑顔を浮かべた。


「キミの考えは理に適っているし、言われてしまうと正しい考えだね」


「むしろセンパイの言うように練習してねえ奴が、他人巻き込んで勝とうなんてずうずうしいんすよ」


「そう、だから今後ずっとキミの考えを見習い、絶対に断ることにしたよ」


「今年からうちの部活の成績がっつり落ちるっすね」


 実のところ、運動系も文化系もセンパイが参加して全般的に中堅程度の実力があることをウリにして受験生を釣っていた。

 来年から志望者激減だなあ。

 まあ俺には関係ないけど

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