第2話
今日からあかりはこの神社の娘になる。ただそれだけの事がこの神社を大きく変える。私はあかりを成長させなければならない。密かに受けた主様からの命を果たすために。
「おきつねさまー!どこー!」
あかりに呼ばれて姿をあらわす。
「もう、おきつねさま!きょうからおせわになりますってあぶらあげもってきたのに!」
あかりの怒った顔…可愛い…。
「あかり。私たち神使…神様の使いはそうそう人前に姿を出すものではないのだ。わかるか?宮司とその嫁に私は普段見えん。あかりはまだ子供で、主様からの寵愛を受けているから見えるのだ。」
「んー。おきつねさま、ちょうあいってなに?」
「神様から紐をもらっただろう?」
「ん!かわいいあかいおひも!かみをゆうのにつかってるよ!いつももっていないといけないっていわれたから!」
「ああ、それはいい。とても可愛い。それが証だ。誰でももらえるわけじゃない。神様が特別大事にしたい人間に与えるモノだ。神様があかりのことをとても大好きだということだよ。」
なんとか伝わったようであかりが嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねている。
「わたしもかみさまだーいすき!あ!おきつねさまももちろんだいすき!そうだ!あぶらあげ!こっちこっち!はい!」
「ちょ。あかり…流石にこれは…多すぎないか…。よく持ってこれたな…」
そこには店が開けるのでは…というほど大量の油揚げ。
「それに私は…いや、うん、ありがとう。あかり。」
私はいなり寿司がいいと言いかけたところであかりが少ししゅんとしてしまった。
「あかり。宮司の嫁にこの油揚げを持って行っていなり寿司作ってと頼んでおいで。みんなで食べよう。私一人でいただくには多すぎる。」
「おばちゃんに?いなりずし?たべたことない!たのんでくる!」
なんとあかりはいなり寿司を食べたことがないという。あんなに美味しいのに…。特に宮司の嫁のいなり寿司は絶品だ。そういえば彼女もこの神社に嫁ぐ時、油揚げを持ってきたな…大量に。だがあれはいろんな店から買ってきていた。どのお味がお好きですかなどと言っていたな。あれも可愛かったがあれはわたしのことが見えないし、宮司の嫁だ。今の私にとってはあかりの方が可愛い。まだ闇を知らない純粋なあかりが。
ぱたぱたとあかりが戻ってきた。ニカっと笑い嬉しそうに話す。
「おばちゃんにたのんできた!あした出してくれるって!だからきょうはふつうのでがまんしてね?」
可愛すぎて死にそう。あかりは毎日持ってくる気なのだろうか。どう考えても可愛いがすぎる。
「あかり、今日はなにをするんだ?」
「きょうはね、たんけんする!」
「ほう、ここを知るのはいいことだ。だが気を付けろ。森の中には入ってはいけない。悪いものがいるかもしれないからな。私との約束だ。」
「わかった!」
あかりは神社の中を探検し始めた。
森の中には神使になれなかったものや人を化かすのが好きなものがいる。大人になれば見破ることもできなくはないがあかりはまだ子どもだ。近づかないのが1番良い。
「ふう。今日は寝よう。」
朝からあかりと話すために力を消耗しすぎた。少し寝て回復しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます