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序文
明け方に空白から這い出して、これを書く。
いくつかの断片があった。
それらは様々なシーンで異なる姿を見せ、俺はそれに半ば翻弄されるように思考の海へと漕ぎ出していく。
枝と幹の関係。
仮にそうたとえるのなら、俺という樹は実に枝葉がちぐはぐで、幹は一本筋が通っているように脆いだろう。
枝葉の養分は、ノスタルジックを好む。
時折去来するそれらに、俺はひとりごちる。
緑や、無機質な音の波、ほどよい孤独、嵐のあとの束の間の静寂。
そんな刹那の時間に、俺はすべてをみ、すべてを悟る。
今はまさにその時だ。
そして俺はそんな時間が嫌いじゃなかった。
時折、身の裡にあるものたちをどうすればいいのか、その対処に戸惑う。
論理性と抽象性の奇妙な同居。
それは混沌の度合いが極めて高く、年月を重ねて、その方法がいくらか円熟の兆しを見せてきたとはいえ、根本は、脳のマトリクス領域からはみ出たところを起点としているのだから、その出力はあまりにもおそまつだ。
だから俺は、いつもそれをやり過ごす。
そうやって日々を泳いでいく。
そんなある日、ふとした一瞬、俺は自室にて枝葉に蕾の胎動を感じ取る。
樹を見渡すと葉が青々と生い茂り、色つやもよく見える。
今なら…
そんな予感がした。
カフェインの過剰な摂取による興奮が、苦痛を伴うほどに脳幹をくすぐっている中、俺は動き出した。
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