ZERO to HERO

イーグルの正体はお父さんの従兄弟のお兄さんのヒイロさんだった。

ヒイロさんはこの世から悪を滅ぼすためにと言っていたけど、人を傷つけていい理由にはならないはず。


「レッツ…ジャスティス…!」


イーグルはそう一言だけ呟くと足の鉤爪を使ってキックで襲いかかってきた。


「来るぞ、構えろ!変身!!」


お父さんはデオキシに変身してそれを迎え撃った。


「加勢するぞ、いいかい2人とも…変身!」


ナオトさんもエンシェントに変身してお父さんに加勢する、僕とツクヤはそれに続いた。


「よいっ…しょっと!うおお!!」


お父さんが僕に預けてくれたこの大剣、思いっきり振るっちゃおう…!


「…!」


イーグルは自身に向かってくるナオトさんに気がつくと、低く飛んで近づいて一回転しながら吹き飛ばした。


「ジャスティス・トルネード!」

「ぐっ…!」


とても強い風が吹いてナオトさんだけじゃなく、僕もツクヤも吹っ飛ばす…僕は剣の重みを使って踏ん張って耐えた。


「みんな大丈夫!?」

「ああ、なんとか…」


なんとか持ち堪えて体制を立て直した…よし、これで!


「おと…ケイスケ!一緒に挟み撃ちだよ!」

「了解!タイミング合わせようぜ!」


お父さんと声を掛け合い、僕が剣を振るってイーグルに重い一撃を叩き込む…それにお父さんがサーバルキックで合わせてくれた。


「ぐっ…」

「よし、効いてるぜ!」


手応えはある!

絶対に勝てるよね!


「続こう、ツクヤ!」

「ああ!」


ツクヤがイーグルの足元をナイフで払い、体制を崩させてからナオトさんが刀で攻撃した。


「ぬあっ…!!」


よろけた!…と喜んだのも一瞬、イーグルがまた低く飛んでツクヤとナオトさんの方に向かった。


「あぶない!」

「ジャスティス・キック…!」

「ぐわっ…!?」


ツクヤが吹っ飛ばされ、ナオトさんも吹っ飛ばされたツクヤにぶつかって地面に叩きつけられた。

叩きつけられ、2人が起き上がると…





『——!』





あれは…セルリアン!?

でもなんか変、いつも見る姿にヒトの首から下がくっついてるみたい…なんかヘンテコな動きしているし…!?


「セルリアンだと!?」

「これは…!」


ツクヤとナオトさんはその変なセルリアンに囲まれてこっちに戻って来れなくなっていた…


「ねぇ、あれは何?」

「あれは『人工セルリアン試作態』だな、研究施設から盗まれたものが増殖したものだ…たまにイビルズの周りに取り巻きみたいに現れるんだ」


じんこー…しさく…たい?

うーんちょっと呼びづらいかもしれない…?


「よくわからないけどセルリマンで!!」

「よしわかった!」


ナオトさんの大きな返事が聞こえた…

ということでセルリマンと呼ばれることになったアレに囲まれていたら2人は動けない…


「ここは俺たちに任せてくれ!」

「『セルリマン』が人やフレンズを襲わないように全部片付けるさ。」


助けに行きたいけどイーグルが自由に飛び回って僕たちを通さない、お父さんもイーグルに阻まれているところだった。


「お願いね!あれ?」


お父さんは?と思ったらもうすでにイーグルのところに走って行っていた、ネコ科の速さはすごいや…


いやいや、僕もこちらを任された身…遅れるわけにはいかないね!


「があああッ…バカ兄貴!!

アンタの過去は分かった、でもな!!」


ガキンッ!


従兄弟同士のパンチとパンチがぶつかり合った、僕はすかさずパンチの後の隙を見て剣を振る。


「アンタのやってる悪人を痛めつけるやり方には絶ッ対に共感できねぇ!」


熱の籠った説得はまだまだ続いた、イーグルはパンチを手で受け止めるとお父さんに反論を返した。


「だが君だってボクのような化け物を倒している、懲悪であることに何も変わりはない!!」


ガキンッ!


パンチと剣を押し返して僕たちにキックを浴びせる、僕は剣の重みを使って飛ばされないように持ち堪えた。


「…俺は確かにたくさんの怪物を倒してきた、でもそれは怪物にされた人たちを助けるためだ!」


ズバーーンッッ!


お父さんがジャンプでイーグルを蹴り落とした、それに合わせて剣を振るって重い一撃を与える!


「アンタが失望した善も、今のアンタの考えも…そして俺がやってきたことも全部は正義だ!

正義の形は同じじゃねぇ!だったら俺は俺の正義を信じるだけだッッ!!!」


その一言を叫ぶと一瞬静かさがこの場に広がった、そしてイーグルは立ち上がり答えた。


「ならボクにはボクの正義を信じる権利があるだろう?

だったら、キミたちの正義で…ボクの正義を撃ち破って見せろ!!」

「…!!兄ぃ…?…面白ェ!!やってやる!!」


「「うおおおおお!!!!」」


戦いの場に従兄弟2人の叫び声が響いた、思わず押されそうな勢いだ…おっと僕もぼーっとしてれないぞ!


「僕をお忘れなく!!」

「ぐっ!!?」

「ナイスだ、続くぜ!」


剣を使って体当たりをするとそれに続いてお父さんが回し蹴りを浴びせる、僕たちの攻撃はすごくタイミングが合っていた。


「ぐうううっ…!ボクは…負けない…!!」


攻撃を受けてもまだ立ち上がるイーグル、すぐさまこっちに向かってきた

それを迎え撃ったのは…







「ジャスティス・トルネード!!」






ハクトウワシさんだ!

空から僕たちを助けに来てくれたんだね!


「そこまでよ、私の力で人を苦しめるなんて許さないわ!」


そして…飛んできたハクトウワシさんに続いてもう1人、広場の向こうからやってきた。


「向こうのザコは全員片付けたわよ…」

「ありがとうエカル、相変わらずpowerfulね!」


この時代のエカルさんだ、君が呼んできてくれたのかな…!?


「ヨウ、待たせたな」

「増援のおかげで一体も残らず片付け完了さ、ありがたいね」


セルリマンはもう一体も見えない…これで安心だね!


「あのMonsterは貴方たちに任せるわね?」

「私の手で仕留められないのが残念だけど…まあ、せいぜい頑張りなさい…」

「ふふっそんなこと言って、ケイスケ達のことすごく心配してたじゃない?」

「だ、黙りなさい…!!」


ハクトウワシさんとエカルさんは仲のいい先輩と後輩って感じだ

そして2人が後を僕たちに任せて立ち去る中、お父さんとナオトさんが前に出た


「さて、俺も頑張らなきゃな!」

「ふ、そうだな…

そうだ、これを使ってくれ」


ナオトさんがお父さんに紫色のカプセルを手渡した、あれはもしかして…?


「おお、コブラカプセルじゃないか!よし!」


『コブラ!』


コブラカプセルがブレスにセットされ、ノリのいい音が流れ始めた

サーバルの時とはちょっと違う、なんか軽いノリって感じの音楽だ!


『ディディディD・N・A!

ディディディD・N・A!』


「見ててくれよ、俺の『正義』を…!」


『噛み付く奴ら!毒毒の牙だ!

そうさ聞きな俺の名はコブラ!』


ラップ…っていうのかな、そういう感じの歌詞に乗せて紫色の霧に包まれるとデオキシの姿が変わった


「アンタを縛っている枷から…俺が解き放ってやる!」


コブラニューマンは細い体をしていたけど、この姿は結構ゴツめな体に蛇の形の毒パイプがいくつも巻きついている…ちょっと悪役みたい?


「ここからは俺たちの仕事だ、怪物化を解き放てるのは俺たちしか居ない。」

「ああ、サポートを任せれるかい?」

「「もちろん!!」」


僕たちは前に出て2人を先導して歩み出た、僕が剣をブンッ!と振り回すとそれを受け止めたイーグルは両手が塞がった


「ぐっっ…何をする気だ…!」


そうして両手が塞がっているところを…


「当たれ!!!」


ツクヤがガンを連射させて畳み掛けた、そうするとイーグルは飛ぶ暇すらなくその場で膝をついた


「「交代!」」


僕たちが後ろに下がり、ナオトさんがまず斬り込む

自慢の刀を構えながら素早い動きで走る


「はあああ…閃ッッ!!!」


起きあがろうとするイーグルに流れるように刀を振り、そしてその後ろからお父さんの追い打ちの一撃が決まる


「出力…全開だ!!!」


コブラの毒攻撃と尻尾を使って周り一帯を払う攻撃をした、イーグルは毒をまともに食らいながら吹っ飛ばされた


「ああああ!!」

「よし!!」


僕とツクヤとナオトさんはさらに突っ込むために前に出ようとした

その時…


「ちょっと止まれ、3人とも…」


お父さんが僕たちを止めた

ナオトさんは驚いた声をあげた


「ケイ?どうしてだ、隙を与えたら逃げられてしまうよ」

「いや…逃げねぇよ、あいつなら…」


お父さんの言う通り、イーグルは逃げるどころか立ち上がりもせずに膝をついていた

毒のせい?いや…ちょっと違う…?

僕の中でイーグルのその振る舞いに何かを感じた


「ここは俺に終わりを預けてくれ、兄ぃもそれを望んでる…かは分からんが…」


そういうと腕のブレスとベルトを操作してパワーアップした状態になった

相変わらずイーグルの方に動きはなく、むしろ今の状況を受け入れているようにも見えた


「受け取れ!これが俺なりの…正義だ!」


『エヴォリューション・コブラ・フィニッシュ!!』

(ファーンファファファファーーン!!)


なんかイケてる音楽が流れてる時によく聞く音…たしか「レゲエホーン」?の音が高らかになるとお父さんは紫の煙を噴射しながらイーグルに向かって全力のパンチをくらわせた


「ぐあああああああああ!!!!」

(ドカーーーーン!!)


イーグルはヒーロー番組のお約束のように爆発し、羽を散らせながら元の『ヒイロさん』の姿に戻った


「っ!!兄ぃ!!」


お父さんは変身を解いて駆け寄って倒れかけていたヒイロさんを抱き抱えた


「…うっ…んん…ああ、ケーくん…?」


目を開け、顔を見つつニックネームで呼んだ


「ぼくは…ああ、確か…

ははっ…迷惑かけちゃったね…」

「ホントだよ…このバカ兄貴ッ…!!」


お父さんの目には涙が浮かんでいた

その顔は怒っているようにも安心しているようにも見えた


「ごめんよ、本当に…」


従兄弟の二人が話すその姿を見ていると僕の中でも何かが込み上げてくるのを感じた…

そして…


(キラン…!)


「何…?!」


胸の中に光が灯ったと思った瞬間、一瞬意識が崩れた

そして一つ、記憶を思い出すことになった 






———————————————

「こんにちは、ヨウくん」


「あっ!ヒイロおじさんだ!」


「またお土産を持ってきたよ、良かったら使ってくれ」


「わっ!カッコいい!」

————————————————



今回、いつものような長いものじゃなくほんの一欠片みたいなささやかな会話だった

でもそれで充分思い出した、この人は…


「ヒイロ…伯父さん…」

「会ったことあったんだな、ヨウ?」

「うん…」


ヒイロ伯父さんは小さい頃、僕にいろいろなヒーローのおもちゃを買って持ってきてくれた人だった

たしかヒーロー番組の監督だったような覚えがある…


僕とツクヤが顔を見合わせている間にヒイロ伯父さんはお父さんに助け起こされて立ち上がっていた

ナオトさんも側について手当をしている


「そうだ、こうしては居られない…」


ヒイロ伯父さんは真剣な顔立ちをしていた



が、ウルドがこちらに来る…」



ウルド…!?


「…って確か…!?」

ヴァンパイアバットチスイコウモリのカプセルを持っている容疑がかかっている奴だろう」


ツクヤは僕の言いたいことを読んでわかりやすくしてくれた


「コブラのあの人もアイツの影響を受けていた…」

「ああ、そう証言があったな…」

「ぼくもかつて、奴がパークに所属する前に相談しに行ったことがあった…」


もうその時からそのウルドって人の手の中だったってわけ…!?

緊張した空気があたりに漂った…そして…




(パチパチパチ…)




「いやはや、素晴らしい兄弟愛でしたね…」


その言葉と共に長身の外国人っぽい男の人が手を叩きながらゆっくりと歩いてきた、いかにもな怪しさを感じる…


「ウルド…お前…!!」


やっぱりこの人だったみたいだ、ヒイロ伯父さんは本気の怒りを示した顔をしている


「おや、私の導きから逸れてしまったのか」

「ふざけるな!!」


怒りを爆発させた声が響くと、ウルドに向かってヒイロ伯父さんが走って行った


「あああああっ!!」

「…甘いな。」

「なっっ!?」


その蹴りは簡単に受け止められ、ヒイロ伯父さんはこっちに投げ飛ばされた

さっきまで戦っていたということもあるかもしれない、だけどお父さん並みの武術の腕を持つあの人の攻撃をそう軽々と受け止めるなんて…!?


「舐めてもらっては困るよ、私の家は代々騎士ナイトの家系でね…たとえこの時代でも戦いのノウハウは学んでるのさ」


そして目の前に立つウルドに対して、お父さんはみんなを庇うように前に出た


「全ての元凶はてめぇか…よくも兄ぃを化け物になんかしてくれたな?」

「君は…そうか、あの人が話していた…。」


ウルドはお父さんのことを知っているような顔をしてそう言葉を返していた。


「あの人?何言ってんだ…」

「おや、君もよく知っている人じゃないかな?

丁度いい、早速ご対面と行こうじゃないか…」


ウルドはそういうと自分の後ろに向かって合図をした

するとそこに出てきたのは、あの時クレープを持った子とぶつかっていたお金持ちっぽいおじさん…確か社長さんだったっけ…


「本日のスペシャルゲスト、このパークのスポンサーにして九龍カンパニーの社長、九龍兆治くりゅう ちょうじ氏だ!」

「フッフフフ、紹介ご苦労…」

「…!!」


あの人に呼ばれて出てきたってことはあの社長も悪い人の仲間だったってこと…!?

じゃあこの人も僕たちの敵…?


「なぜスポンサーがここに?それにどうしてウルドと組んでいる?」


ナオトさんは驚いた顔をしている、そしてお父さんは…あの社長をかつてない顔で睨みつけていた


「何故って…Mr.九龍が出資してくれているからに決まっているだろう?」


…やっぱりあの人も敵なんだね?ならなおのこと気をつけないと…!

僕たちが警戒する姿勢に入る中、お父さんは変わらず社長に対し睨み続けていた


「それにしても京介、いつまでそんな顔をしているつもりだ?」



急に社長がお父さんの名前を呼んだ、どうして…?



「黙れよ、くそったれが…」



お父さんの返答に僕は少し驚いた、お父さんは軽い口調の時はすごくよくあるけどここまで尖った言い方をしている事なんて見たことがなかった。



「ケイ、どうしたんだ?彼と何か因縁でも?」



お父さんの親友とも言えるナオトさんもお父さんのことを心配していた、それほどに雰囲気から話し声まで何もかも違っていたから…



「…アイツをそうだとは言いたかねぇけど言っとくか。

九龍兆治、アイツは…」



腹を立てたトーンのお父さんは社長を指差して言った






「俺の実の父親だ…。」






〜次回に続く〜

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砂漠の太陽 エキネコ @Excitingsandcat

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