緋色の秋と毒裁者

〜〜〜〜〜〜ツクヤ視点〜〜〜〜〜〜〜


ハタチのころのケイスケおじさんと出会った俺たちは今、怪物がいるというエリアに向かっているところだ。


俺たちが乗った車は関係者専用の地下通路を通っている。

普段道路を走っている時には出さないようなスピードを出して走っていた。


「こ…こんなに飛ばして危なくないのか?」

「ああ、今ここの通路の使用許可が降りてるのは俺のこの車と…『アイツ』のバイクだけだからな。」

「アイツ、とは?」

「ふふっ、決まってんだろ?おっと…噂をすればだ。」


ケイスケおじさんがそう言うと、後ろから追ってくるようにエンジンの音が聞こえてきた。


『ブロロロローッ!!!』


そのエンジン音はバイクのもの、そしてそれに乗るのは…


「ほらな?」


俺の父さん、この時代では医者を目指す者である神楽ナオトその人だった。

ヘルメットを被ってよく見えないが、とても真剣な眼差しをしているように見えた。


すると…


「もしもし、聞こえるか?」

「おう、どうしたんだ?」


車のスピーカーから父さんの声がした、どうやらヘルメットのマイクから無線で喋っているようだった。

走行音などが聞こえないのでかなりの高性能と見た。


「これより向かうのはサンカイチホーの地下に作られた巨大ショッピングモール、オデッセイだ。」

「あー、最近ちゃんと整備がされてようやくまともに買い物できるようになったってとこか?」

「ああ、そこにコブラの目撃情報があった。様子のおかしなスタッフや観光客がいるという話もある。

本部からの指示で既に閉鎖してあるようだ。」



父さんは連絡を済ますと、スタッフカーの座席を見るなり驚いた声色でおじさんに言った。


「…っ!!ケイ、その子たちを連れて行くのか!?」

「ああ。」

「失礼だが気は確かなのか!?この戦いにその子たちを巻き込むなんて…」


父さんは早口でおじさんに説教するようなトーンで話している、俺たち二人を心配してのことだろう…


しばらくすると、ヨウが会話に割り込んでいっていた。


「心配しなくていいよ!」

「わっ…ヨウ君か、いいかい?私たちは遊びに行くわけじゃないんだよ?」

「ヨウの言う通りだ、心配すんなよ?

この子ら二人は俺の厳し〜いテストに合格したんだからな?」


おじさんもヨウが喋った後に続けて言った、父さんはしばらく黙って、ハンドルを握ったまま片手で考える素振りをした。


「…そうか…うん、わかった。

2人とも、パークの平和を守るため力を貸してくれ。」

「「もちろん!」」


この時代の父さんから見れば俺たちも普通のヒトと変わらなくて、危険な目にあわせたくないと思う気持ちはよくわかる。


「心配すんなって、2人ともかなりスジがいい。」

「…ケイが言うのなら間違いないだろう、わかった。」


昔の姿とはいえ、俺にとっては師匠のような存在であるおじさんにそこまでお墨付きをもらうとなんだか照れくさい。


「あともう一つ言わなければいけないことがある。」

「なんだ?大事なことか?」

「現地に本土から派遣された警護員がいるみたいだ、同行させるように言われている。」


警護員…か、やはり危険なところに赴くにあたっては必要…なのか?

ヒーローである2人にそれが必要であるのか、今の俺には判断が難しかった。


「ねえねえ!2人とも充分強いし、大丈夫なんじゃないの?」

「パーク本部の考えてることはわかんねーな?」

「まあ、そう言うな。」


…よくわかっていないのはみんな同じなようであった。

会話を終えるとスタッフカーとバイクは並走し、さらにスピードを上げていった。


〜10分後〜


あれからそれなりに時間は過ぎただろう、すると地下通路の道路の途中にターンテーブル型の道路があった。

スタッフカーとバイクはそこで止まり縦一列に並ぶと道路の一部丸いところが90度回転した。


「わっ!?なにこれ!ツクヤ、すごいよ!」

「まるで秘密基地だな…。」


秘密基地さながらの仕掛けにヨウは大興奮、そして俺も…わくわくしないかと言われたら嘘になる。やはり俺も男子だ。

ターンテーブルが回転し終わると今度はゲートが開き、その先の道路が登り坂のように持ち上がった。


「安全確認よし、そっちは?」

「ああ、大丈夫だ。行こう。」


スタッフカーとバイクはその坂を勢いよく登っていくと外の世界へと戻ってきた。

どうやらここはバイパスらしい。


「さて、オデッセイの駐車スペースまで行こう。」

「ん?ナオ、そんなんあったか?」

「整備された時に駐車スペースも作られたんだよ、ショッピングモールに車を停める場所がなきゃ不便だろう。」

「あーそうか。今更だけどそもそもこのパークの規模がおかしいんだよなぁ、もはや一つの県だろこれは。」


2人の言う通りたしかに超巨大動物園と謳われるだけはある、動物園ではありえないだろう施設がいくつもある。


〜2分後〜

「よし、到着だな…さて、警護員とやらは…」


オデッセイの駐車場に到着すると、俺たちが乗ってきたスタッフカーと全く同じ形のものがもう一台目線の向こうに停まっているのが見えた。


「アレだね!行こ!」

「おう、ヨウ早ぇって」


2人が足早にスタッフカーに駆け寄るとスタッフカーの運転席から男性が降りてきた。


「こんにちは、君たちがオデッセイに突入する人たち?」

「こんにちは!」


ヨウは警護員の男性に元気に挨拶をした。

2人に追いついた父さんが彼の横に立った。


「みんな、この人が今日ボディガードをしてくれる秋星緋彩あきぼしひいろさんだ。」

「ぼくの力は微力ではあるだろうが君たちの役に立てるよう頑張るよ、よろしく。」


緋彩さんは礼儀正しく挨拶をした。

おじさんとヨウは…ん?


「あきぼし…ひいろ…?」

「えっ、えっ!それって…」


…?

どうしたんだ2人とも?何か引っかかる事でも?


「なあアンタ…緋彩ぃか…?」

「その呼び方は…まさか?」

「ああ、俺だよ…暁ケイスケだよ!」

「やっぱり!ケーくんなのか!?」


兄ぃ…!?兄?いや苗字が違うじゃないか…

いや、それは別におかしな事じゃないが…


「そうか、あの時ツクヤ寝てたもんね?

あの緋彩さんって人はツクヤの従兄弟で…お兄さんみたいなものなんだって!」


そ、そうだったのか…


「懐かしいなぁ、よくヒーローの話を語らったっけ…俺、あれからもずっと修行してたんだよ!」

「ああケーくん、こんなに大きくなって…それにこんな友達ができたんだね?ぼくは嬉しいよ。

いつもケーくんがお世話になってます…。」

「あっ、いやこちらこそ…ケイには何度も助けられてるんだ。」


いつも俺たちを先頭で引っ張ってくれたケイスケおじさんが初めて見せたのような姿、とても新鮮だった。


「…さてケイ、秋星さん…感動の再会をしているところ悪いがここは敵のアジトの真前だ。」

「おっといけない…ついケーくんに会えたのが嬉しくて。」

「改めてよろしくな、兄ぃ!」


感動の再会から、一気にハンドルを切るように切り替えた表情に変わる2人…気の引き締まり方も従兄弟というよりもはや兄弟のようなレベルで揃っていた。


〜突入〜


「…周囲警戒しろよ、やけに空気が気持ち悪い。」

「いかにも悪モノが出てきそうな気配だね。」


おじさんは周囲を見渡しジーンショックを構えている。

オデッセイの中は薄暗く、何故だか荒れていた。

これも怪物が現れたせいなのだろうか?

俺が感じた違和感はそれだけではなかった。


「何かにおう、鼻につく不快な臭いだ。」


なんのとも言えない不快な臭いをうっすらと感じた、俺の中のオオカミ遺伝子がそう感じさせたのだろうか?


「臭い?みんな、なんか感じるか?」

「風が重苦しい、それ以外は感じないかな。」

「僕は…うん、なんか変な臭いするね?」

「全く感じないのは私だけか…君、鼻が効くな?まるであの人みたいだ。」


あの人…母さんだろうか。

やはり2人とも血のつながりに気が付かなくても感じるものがあるようだ。


「いや…人より敏感なだけだ。」

「先を急ごう?」



違和感を抱きつつ、俺たち5人はオデッセイの下を目指して降りていった。


〜さらに地下へ〜

「どれくらい下があるんだろう?」

「地下5階までだ、がんばれ!」

「周囲はぼくが見ておくよ、でも気をつけて。」


俺が生まれた頃にはもうとっくの昔話になっていたがオデッセイはまともな運営もできないくらいおかしな構造だったという。

今のオデッセイはまともに通れるが、昔は入ったら戻れないというレベルの迷宮だったとか。


「今のところ変なものは無いが…」

「待って!」


ヨウが声を張り上げる、俺たち4人はその声でピタッと足を止める。


「どうした?」

「何か…何か聞こえる、こっちに向かってきてる…?」


フェネックの遺伝子を受け継いだヨウの耳には何かが聞こえたようだ、ヨウは誰よりも厳しい警戒の体制に入った。


そしてその音の主とは…


『ゔ…うゔー…』『ぐおぉおお…』

「わっ!?ゾ、ゾンビ!?」

「ゾンビ…?いや、匂い自体は普通の人間だ…」


俺のオオカミの遺伝子由来の嗅覚はオデッセイの奥からやってくる音の主は人間であると言っている。

しかしその動きは映画やゲームに出てくるゾンビそのものであった。


「なんなんだコイツら!?」

「…毒に侵された人々だろう、要するにゾンビ人間だな。メンツは観光客やスタッフも関係なしのようだ。」


見たところ10人くらいはいるようだ、人間なのに人間じゃない、とても不気味だ。

ヨウと俺はそれぞれおじさんから貰った大剣とナイフを構えたが、父さんとおじさんはスッとそれを静止した。


「相手はただの人間だ、武器を使うわけにはいかない。」

「ま、ここは俺に任せろ?」

「ぼくも一緒に戦おう、ケーくん…」

「兄ぃ…よし、久しぶりに組み手といくか!」


おじさんと緋彩さんは前に出てゾンビ人間の前に立ち塞がり、気さくな表情、優しい表情からキッと表情を変えた。


「…さて、準備運動だ。」

「肩慣らしと行こうか。」


おじさんは変身せずに武術家のような構えを取ると、ゾンビ人間たちに向かって走り出した。

緋彩さんは左右反対の構えを取って、おじさんと一緒に走り出した。


「はっ!」

『ぎっ…』

「せいっ!!」

『ぐえっ…』


おじさんと緋彩さんはゾンビ人間の群れを次々と薙ぎ倒し、ゾンビ人間たちはオデッセイの床に倒れていった。


「お前らで最後か?いいぜ。」

「君たちも少し眠って貰おうか。」

『があああ!!』『ぐおおお…!!』


最後に残ったゾンビ人間2人は目をカッと見開いた顔でおじさん達に向かって突撃していった。

だが…


「はっ、10年早ぇんだよ!」

「出直しておいで。」

『ぎがっ…ご…げ…』『ぐが…ぎ…』


2人に真正面から突撃して勝てるわけもなく、最後のゾンビ人間には2人同時に腹パンをお見舞いしとうとう全てのゾンビ人間を倒してしまった。


「だ…大丈夫なの…?これ…」


ヨウは倒れてしまった人たちを見て心配そうな顔をした。

それは俺も気になる事だった。


「大丈夫だ、じーちゃん直伝の格闘術でちょっと気絶してもらっただけだ。」

「ぼく達は格闘家である祖父の孫兼門下生なんだ。暁家の伝統だね。」

「あっ、そうだったね!すごいや!」


ヨウは知っていたようだが俺はおじさんの実家が格闘家の家柄であることを今知った、そりゃ緋彩さんが警護員として派遣されるわけだ。


「さてこの伸びてる奴らはなんとかしないとな?ケイ!」

「ああ、今救護を要請したところだ。」


父さんはおじさんが戦っている間、通信機を使って本部の人たちと話をしたようだ。


「閉鎖されてるんだろう?入れるのか?」

「秋星さんや私たちと同じさ、緊急の仕事だからね。

…この人たちは救護班や医師に任せて先に進もう。」


父さんは俺の質問に答え、不安そうな顔のヨウを宥めるように付き添って奥に進んだ。

おじさんと俺はほかにゾンビ人間にされてしまった人がいないかと周囲を警戒しながら一緒に奥に進んだ。


〜5階の廊下〜


「この先にはイベントステージがある、もしかしたら目標はそこに潜伏しているのかもしれない。」

「油断しないで行こう、ぼくが付いてる。」


父さんと緋彩さんがライトで照らしながら暗い道を行く。

ヨウは少し怯えた顔をしておじさんにくっついていた。


「怖いのか?」

「…あの人たちも普通にご飯を食べて、普通に誰かに挨拶して、普通に何か楽しい事をしてた人たちなのに…と思って…怖いというか…好き勝手に使われてかわいそうだなって…」


彼らにも彼らの人生がある筈なのにああやって使い捨ての駒にされている事に悲しみを感じていたようだ。


「だからこそ俺らが助けんだ、だろ?」

「…うん!!

あっ…!?」


おじさんの言葉に元気付けられたヨウは、また何かを感じて身構えた。

…かく言う俺も匂いによってそれを感じていた。


『『グオオオオオオッッッ!!!』』


またゾンビ人間だ、しかもさっきよりかなり多い。

俺たち全員は再び構えた。すると…


「みんなはこの先に行かなきゃいけない、そうでしょう?

ここはぼくに預けてもらえないか?」


緋彩さんがゾンビ人間の前に立ちはだかった。

しかし俺は、こういう事を言う人は大体負けてしまうジンクスがあるのを思い出した。


「ダメだ、危険だぞ!もし緋彩さんまでゾンビ人間になったら…」

「いや、その心配はない。」


父さんは機械を取り出しながら俺をなだめる様に言った。


「奴らを解析した結果、ウイルスの類は検出されなかった。あくまで『ゾンビっぽい人間』だからな。」


…そういうものだろうか。


「兄ぃだってヌルい鍛え方はしてない、だろ?」

「ああ、暁家に伝わる武術の全てを使ってこの場を収めるよ。

じゃ、健闘を祈るよ?」


緋彩さんは静かに微笑んで、ゾンビ人間の群れの中に走って行った。

俺たちはそれを背にオデッセイの奥地を目指した。







その時、ゾンビ人間でも不快な匂いでもない何かの匂いを一瞬感じたが、俺にはそれを気にする余地はなかった。













〜ツクヤたちは広いスペースに出た〜



「ん?ここ、やけにだだっ広いなぁ。」

「ここがイベントステージのようだな、オープン後に新設されたとか…」


イベントステージ…何か楽しいことのための場所。

だが今のこの景色には楽しさの欠片すらも感じられない。

それに…


「入った時に感じた妙な匂いがする…。」


薬とも違う、何か不快な匂い。

俺たちはその正体を探ろうと周囲を見渡した。

すると奥から足音が聞こえてくるのを感じた。


「誰だ?」


奥からやってきた足音の主が足を止めるとここら一体の明かりが一斉についた。

そこにはパークスタッフの制服を着崩したような服装の男が立っていた。


「おい、何者だお前は?ゾンビ野郎とは違うようだが。」

「敵…なのかな…?」


おじさんが警戒しつつその男を睨みつけた。

ヨウは武器の大剣を背負いつついつでも手に取れる姿勢を取った。

そして父さんは…


「ま…まさか…何故ここに…?」


驚きを隠せない顔でその男を見ていた、その様子に気がついたおじさんが話しかける。


「なんだ、知り合いか?」

「ああ、前に話した私の学生時代の親友だ…コウダ、幸田文義コウダ フミヨシだ…」


コウダ…父さんがおじさんの家で夕食を一緒に食べた時に話していた中学、高校時代の親友の名だった。

緋色さんに続き今度は父さんの関係者か…偶然なのだろうか?


父さんに名前を呼ばれると、そのコウダ…氏?がずっと黙っていた口を開いた。


「久しぶりだなぁカグラ?」

「ああ、久しぶり…元気にしてたか?」


父さんがその質問をするとコウダ氏はかなり怒った目にかわり怒鳴った。


「くっっっそ最悪だよ、ふざけやがって馬鹿が!!!!」

「な、なぜそんなに怒るんだ、というか何故こんなところに…プロのイラストレーターになるという夢は…」


父さんはその剣幕に驚いて言葉を詰まらせつつ話を進めていた。

ヨウは少し怯えた様子でおじさんのそばまで後退りしている。


「あの人なんであんなにキレてるの…?」

「大方の予想はついた、聞いてな。」


おじさんはヨウの頭をぽんぽんとしつつ、父さんたちを指差した。


「夢を目指して専門の学校に行ったが才能なしと言われ大失敗、虚無の就職活動を乗り越えてこのパークに就職するも好きなこととは程遠い毎日にウンザリ!!

おまけに絵師程度に絵を投稿してみればなんの苦労もしてねぇ輩があーだのこーだの!!!」

「やっぱりな…お辛いもんだ。」


コウダ氏は撒き散らすように早口で色々とまくし立てた後、ニヤリとほくそ笑んだ。


「だが…そんな毎日も既に過去のもの。」

「どういうことだ?」


コウダ氏は着崩したスタッフ制服の上着を脱ぐと、腕に巻き付けられた機械を見せつけた。


「我らがウルド様はオレにこの力を授けてくれた!!」

「「!!!」」


おじさんと父さんはその言葉やその機械の見た目にとても驚いた顔をした。


「ウルド…とはヴァンパイアバットの容疑があるメンタルカウンセラーだな?」

「ああ、あの胡散くせーオッサンか?」

「…えっと、誰だっけ??」


ウルド・アルカロック、覚えていなかったヨウに説明するならば父さんが怪しんでいたメンタルカウンセラーの男、と言うだろう。


「それもそうだがその機械…俺のゲノムブレスにそっくりじゃねぇか。」

「あれは…!」


おじさんの言う通り、コウダ氏が付けている機械はよく観察するとおじさんがつけているゲノムブレスに何も塗装していないような見た目をしていた。


「知ってんのか?」

「プロト・ゲノムブレス…デオキシシステムの試作型の装置だ、当然全て廃棄したはずだが…」


父さんが言うには彼が付けている機械はデオキシのシステムが完成する前に作られた試作型、世に出ることはあり得ないという事だそう。


「ウルド氏はメンタルカウンセラー、それもパークスタッフの為の…だぞ?

どういうことかわかるか?」

「はっ、マインドコントロールかよ?」

「まさか研究チームの中に内通者が?」


心を理解し寄り添うためにあるはずの己の技を利用して心を支配したということだろう、心の健康を救うメンタルカウンセラーとして到底許される事ではないだろう。


「相談に来たスタッフのうち、オレみたいに素質のある者は彼の仲間に加われるのさ!

そうして我らが同胞になった研究員が回収、修理してプレゼントしてくれたわけさ!」


コウダ氏はかなり高揚した様子で誇らしげに語り、ポケットからカプセルを取り出した。


「あれは…!やっぱコブラのゲノムカプセルはお前が持ってたんだな?」

「ククク…お喋りはこれくらいにして…始めようじゃないか!!」


ゲノムカプセルをプロト・ゲノムブレスに入れると、狂った高笑いをあげて腕を天に掲げた。


「アハハハハハハッッッ!!!!超…進化ァァア!!!!」


その声と同時に彼の体は鱗状に変化し、爬虫類そのもののような姿の細身の怪人へと姿を変えた。

しかしその姿はバットイビルズと比べると歪んだ姿をしながらもどこかデオキシに似た姿をしていた。


「カカカカ!!!」

「コブライビルズ…だな?」

「惜しいな?オレはイビルズなどという下等な存在とは違う!」


コブラの化け物と化したコウダ氏は尻尾をバシンバシンと叩きつけ高らかに名乗った。


「オレは!進化した人類、『ニューマン』だ!

さあて、毒の沼に沈めてヤル!!!」

「やらせっかよ!ナオ!」

「ああ!」


おじさんと父さんは2人並び立ち、それぞれベルトを装着したり出現させたりした。


「あれが父さんのベルト…」


仮面フレンズエンシェント、ヨウから聞いたがこの目でその姿を見るのは初めてだ。

俺が生まれた頃にはヒーローは引退していたのだろう。


父さんは和風ロックな曲に合わせて軽やかなダンスを踊り、おじさんは獣のような爪を立てたファイティングポーズの後にベルトのスイッチを押した。


「「変身!!」」


おじさんはお馴染みデオキシに、父さんは龍の兜と鎧をつけた討魔士のような姿のヒーロー、仮面フレンズエンシェントに変身した。


「古きをたずね、新しきを知る…その身で学ぶがいい!」

「俺の進化を見せてやる!」




〜次回に続く〜

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