星は黙したまま命を燃やす

「お兄さんって…どういうこと…?」

「まあ…その辺は今から説明するよ〜」


フェネックから出た『お兄さん』という言葉に、正直理解が追いつかなくなっていた…

でも…ちょっと落ち着いたから聞いてみるよ…。


「じゃ、いいかな?」

「う、うんっ…」


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「フレンズになったばかりのわたしは1人だった。

乾いた砂漠であてもなくウロウロしていたんだ。


ふと自分の腕を見ると、リボンが巻かれているのに気がついた。

何かの目印かな?と思って外さないでいたんだよねー。


それから?何日か経ったある日、洞窟みたいな場所に建物を見つけた。

なんだか見覚えがある建物だから、何も考えないままに中に入っていったんだ。

中に入ると、奥の方に誰かいたんだよね。わたしはその誰かに話しかけてみたよ…。」


『お前は…?

…そのリボン、なるほど…あいつか…』


「髪やヒゲをだいぶのばしたヒトが奥にいたんだ。

わたしたちは歳は取らないからよくわからないけど、歳を取ったヒトという感じだったね…。


その人はケイスケと名乗った。

そして、困った時は自分を頼れと言っていたよ。

ケイスケはかなり良くしてくれたし、わたしも彼を頼ることにしていたよ。」


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「け…ケイスケって…お父さん…!?」

「やー、お父さんってことはやっぱりキミはお兄さんだね。」


余計にわからないよー!

もっと話を聞かせてもらわなくちゃ…



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「わたしはまずリボンのことについて訊いた。」


『それか?それについて話そうと思うと…アレから見てもらわなきゃならなくなるな…』


「ケイスケが連れてきたのは、よくわからない道具や機械がいっぱいある部屋だったんだ。」


『こっちだ』


「わたしは部屋の中心にあった大きな機械のところまで呼ばれて、その機械を覗き込んだ。

そこに眠っていたのがキミだね。

わたしは、誰?と訊いた。」


『あぁ…なんて言うか…

お前のー…父親違いの兄ってところか?

名前はヨウって言うんだ。』


「わたしも動物から姿を変えて生まれたフレンズの1人、それだけに親がどうとか言われてもいまいちピンと来なかった。」


『うーん…説明すると、俺には嫁さんがいてそれがフェネックのフレンズなんだ。

そして俺と嫁さんの間に生まれた子がこのヨウだ。


だが…嫁さんはフレンズとしての生涯を終えて、動物としてのフェネックに戻ってしまった…。

ヨウもその時に…。』


「その話をするときのケイスケはすごく悲しそうだった。」


『そのあと、俺はしばらく動物に戻った嫁さんの世話をしていた。

まあ、俺のことなんて覚えてないと思うが…

そして、どこから来たか野生のフェネックのオスを連れてきて…いつしか子供までいたな。


俺は生まれた子供たちの事も見守ってやることにした…野生に過干渉しない程度にな。


だが…一年後くらいか、天敵の野生動物に1匹を残して食われてしまった…

俺はまた守れなかった、そうやってずっと自分を責め続けた…。』


「わたしは動物に戻ったあなたのお母さんが産んだ子供の最後の生き残り…と言うことだね。

カンタンに言うと…。


ケイスケは小さかったわたしにリボンを巻いてくれたみたい。

それでずっと世話をしてくれていたと…。


…わたしはその後も何度もケイスケの拠点になってる研究施設に行ったよ。

ケイスケったら、食事が思いっきりサバイバルだったからわたしは心配してジャパリまんを毎日3回届けに行ったんだよ。」


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「ふふふっ、どっちがお世話してるのかわからないねそれ…」

「でしょー?全く困ったものだったよー…。」


僕とフェネックが話をしていると…


「ん?」


『———!!!』


遊園地の乗り物の影からセルリアンが現れた。

しかもそれは水辺で戦った翼のヒーローフェザーマンの姿をしていた。


「なんでこんな所に!?

まさかドットの…!?」

「今大事な話をしてるとこなんだけど…なっと」ゴッ


『——!?』


フェネックは一切動揺する様子もないまま、セルリアンを軽くチョップして怯ませた。

そして…


「お呼びじゃないんだよねー…っと」ゲシッ


セルリアンの頭に目掛けてキックをお見舞いして、セルリアンをパッカーン!!と倒した。

あの動き、僕が回し蹴りする時と同じだ…


「ま…これもケイスケ直伝なんだよね…

ちょっと周りの安全だけ確かめてから話をしようか。」


僕たちは周りを確認して、安全だと分かったら話の続きを始めた。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「えーっと?どこから話したっけなー…

まあいっか、それでわたしはケイスケとは世話されながら世話してるような関係でいたんだよね。


じゃんぐるちほーに遊びに行ったりオアシス探しに出かけたり、ケイスケのごしんじゅつ?を教えて貰ったりもしたし…ケイスケが作ったわたしの[家族]のお墓にお参り?に行ったこともあったなぁ。


あと、ケイスケはわたしとお嫁さんを分けるためにわたしのことを[フェネ子]って呼んでたよー

[フェネック(嫁)の子供だからフェネ子]だって…。



ケイスケはよくわからない機械を大事そうに持ってたけど、歳がどうのこうので全然使わなかったんだよね…あの時までは。


おー、あの時ってどの時か気になるよね?

これを話す頃には話もラスト近いねぇ。


出会ってから数年は経っただろうある日…あの場所に大きなセルリアンが現れた。」


『フェネ子、安全な所に隠れてろ…。』


「ケイスケはわたしを逃すと、そのよくわからない機械を使おうとした。

だけどその機械を動かそうとすると、ケイスケは苦しみだしてその機械も弾き飛ばされるように地面に転がったよ…。」


『だったら…変身なしだろうと守ってやる…!

俺を…舐めるんじゃねぇ!!』


「ケイスケはそのまま、セルリアンに向かって行って…わたしは見てられなくてケイスケに教えられたキックでセルリアンを弱らせて2人で一緒に倒したよ…。

でも、ケイスケは機械からの痛みのせいか日に日に弱っていっていた…。」


『ゲホッ…俺のことはいいから、お前は自由に生きろ…』


「わたしはケイスケを看病した…だけど、ケイスケが元気になることはなかった。

そんな時、ケイスケは1人の時にヨウ…君が入った機械の前にいて、君に話しかけるように喋っていたよ。」


『ヨウ…これはお前には話してなかったな…

俺の親父おやじは最低最悪の男で、俺はそいつが大嫌いだった…

だから…俺は自分に子供ができたら、子供にヒーローみたいな親父になるんだって決めていた……。


ヨウ…俺は…

ヒーローになれてたか…?』


「喋ってたことはわたしでは理解できない場所の話のような気がしたけど…何か自分を責めてるような声だった気がするね…。


それから何日か経って、ケイスケは完全に寝たきりになっていた…もう先は長くなかった。」


『フェネ子…ありがとう…

お前がそばにいてくれたから…ここまで生きてこれた…』


「わたしはその日の分のジャパリまんを置いて…ずっとケイスケの近くに座り込んでいた…。

そしてその日の夜、ケイスケはいつものように眠りについて…二度と目を開けなかった。


わたしは二度と動かないケイスケを埋めて、埋めた場所に木材の瓦礫を立てて彼がやっていたように[お墓]を作った。

そしてそのお墓にリボンを巻いて、いつ来てもわかるようにしたよ…。


さて、話はここまでだねー…。」


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「なるほどね…」

「聞いてくれてありがとね〜…」


フェネックは一通り話終わると、懐かしそうにしていた。


「わたしには親というものはわからなかったけど…きっとああいうものなんだと思ったよー…。」


僕たち2人でしんみりとした気分でいると、ツクヤとアライさんがやってきた。


「おお、ここにいたのかヨウ…

カレーできてるぞ、食べに行こう!」

「ツクヤはすごいのだ、かばんさんみたいに料理ができるのだ!

一緒に食べるのだフェネック!」


僕はツクヤに連れられて、フェネックはアライさんに連れられてカレーを食べに行った。


「来たよ!」

「ちょうど良いですね!今できました!」

「悪いな、かばんさん…せっかくの主役なのに手伝ってもらって…。」

「いえいえ、料理は大好きなので!」


かばんさんがカレーとごはんを沢山のお皿に盛りつけてた。

そしてそのお皿をフレンズさんたちが一つずつ取っていってる。


「もっと盛るのです、かばん。」

「えーっと…まだ盛ってない分があるので、余ったらまた取りに来てください!」

「ぐぬぬ…その辺のまとめ方も腕を上げましたね?」


僕もかばんさんからカレーをもらって、みんなと食べようかな!


「ヨウ、戻ってましたか。」

「あっ!今スナネコとお互いの冒険の話してたとこだよ!」


お、スナネコとサーバルさんだ

ネコちゃん同士だから仲良いのかな?


「一緒に食べましょう?」

「ヨウもかばんちゃんの話聞く?」

「お〜聞きたい!」


僕はスナネコと一緒にサーバルさんとカレーを食べた。

そのあと、一緒に旅をしたことや出会ったときの話をいっぱい聞いた!


かばんさんは、エカルさんやミーアさんみたいに初めて会うフレンズさんからいろいろと質問攻めに合ってたからり後から食べに来たよ。


一方ツクヤはアライさんから質問攻めにあってた、そしてツチノコはトキさんたちと話をしていたみたい。

ドットが悪さをしてるときに心配してた友達というのはあの2人のことだったみたい。





〜おかえりパーティ終了後〜


パーティが終わってフレンズさんたちはそれぞれの縄張りに解散、かばんさんたちは図書館の地下室を拠点にするみたい!


元ツクヤの研究室兼拠点だったけど、道具は引っ越すときに持ってきたから大丈夫!


これからよろしくね、みんな!


〜自宅〜

「そういえばヨウって…誰かに似てると思ったんですけど、サーバルですね〜…」

「えっそう?」

「髪の毛黄色いし、ドジっ子だし?」

「ドジっ子は余計だよ〜っ…あはははっ!!」


それじゃあまた明日、おやすみ〜…


〜・〜・〜・〜・〜ツクヤ視点〜・〜・〜・〜・〜


〜翌日〜


「おっ、白衣似合ってるね?」

「ああこれか、これを着てると集中できるんだ。」


この白衣は15歳の誕生日に父さんから貰ったもので、父さんは四分の三成人記念って言ってたっけな…


俺は白衣を羽織って、自宅の一室に設けた診療スペースに向かった。

診療所といっても俺はまだ本物の医者ではないし、悪くいえば『お医者さんごっこ』に過ぎないかもしれない。


だけど困っているフレンズたちの力になれれば…俺は嬉しいと思う。


「フレンズってすっごい健康体なイメージだけど…来るのかなぁ?」

「まあそう言うな?いつ来ても良いようにはしておこうか。」


しばらく奥の部屋で医学本を読んでいると、診療所側のドアがコンコンと鳴った。

ナミちーが受付(仮)と助手を兼任してくれている。


「えっと…こんにちは。」


ナミちーに案内されてやってきたのは、何度か縁のあるPPPのファン…そして今はボディーガードのエカルだった。


「おお、昨日ぶりだな…今日はどうしたんだ?」

「えっと…実は相談があって…」




〜次回へ続く〜

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